2008/8/3  0:00

ヒットメーカー阿久悠物語(’08)  日本

一昨夜放映、一部オンタイム一部録画で見た、1年前他界した阿久悠氏の作詞家人生を追った、金子修介脚本監督のドラマ。余り本人自身を深く、というよりも、関わってきた当時の芸能界の裏側を描く再現ドラマ風、だった。

就職した小さな広告代理店から、TV局に出入りするうち放送作家となり、作詞を頼まれるようになった経緯、やはりTVの世界と縁深い人だったと改めて。GS全盛期、有名作詞家には敬遠されていた「モップス」の曲の詞を、翌朝までにで書くよう頼まれ、開き直って「朝まで待てない」という作品を書いた、というユニークなくだりも。少し登場の鈴木ヒロミツ役はパパイヤ鈴木なのだった。

渡辺プロと日本テレビの関係悪化、所属タレントの出演がなくなり、TV局自体でスターを作ろう!と、懐かしいオーディション番組「スター誕生」企画、の革命的な意気、熱気は少し見もの、その題名がジュディ・ガーランド版映画からだったと。合格者のスカウト、デビュー経緯を全部視聴者に見せる”ガラス張り”構成を発案したのが阿久氏、審査員の一人として辛辣なコメントぶりもあったけれど、やはりこの番組との縁深さが。

「スタ誕」のことは、仄かな記憶、念願の天才少女森昌子の登場、先日「オーロラ・・」に出ていた桜田淳子が、予選会場で黄色いシャツに白い帽子姿で、既に放っていたオーラ、の映像、この2人の番組での記憶はないけれど、山口百恵が、牧葉ユミの「回転木馬」を歌ったのは、何処かインパクトで覚えがあり、当時の音源を聞いてやはり、メランコリックな曲調が寂しげな風貌に似合った絶妙の選曲、と。

今回懐かしいスター本人の映像+俳優での再現交えて、だったけれど、どうも俳優自身が歌ったり、本人音源の口パクの場面は、仕方ないかもしれないけれど、違和感が多かった。花の中3トリオで、一番抵抗少なかったのは、森昌子役の平塚あみ。当時のタワシのようなショートカットは、ジャネット・リンからヒント、とか、初代スターを成功させようと学業との両立を懸念する母を説得、宿題も見るので、とか、スタッフの専心ぶりが伺えたり。実際の3人が無邪気に互いのマネをしているシーン等も。

たまたま昨夜見かけた「ミューズの晩餐」に、24才にして昭和歌謡に精通している半田健人というシンガーが出て、阿久悠氏の事も色々話していて、「何かが流行りだしたため薄れていきつつあるものに、スポットを当てる妙技」、のような旨話していたけれど、森昌子のデビュー曲「せんせい」とかも、やや時代錯誤的な師弟の純愛、というテーマが当時の素朴なキャラクターにフィット、だったのだった。

阿久悠氏役は風貌は似ている訳ではないけれど田辺誠一が飄々と演じ、都倉俊一役が、内田朝陽だったけれど、どちらかと言えばTVプロデューサー役だった及川光博の方が都倉氏のムードがあるような、とも。登場時に手掛けたヒット曲として流れた中山千夏の「あなたの心に」は、微かな覚えだったけれど、改めて聞いて牧歌的珠玉曲、と。山口百恵役の星野真里は、独特なクールさや色香は、他に誰が、というと難しいけれどどうもしっくりこなかった。

阿久氏が山口百恵に提供曲がなかったのは、「スタ誕」で批評の時、君は演技で出来るとして妹役だ、というようなコメントが因縁、というくだりもあったけれど、当初「暗めの淳子」と言われながらも、宇崎+阿木コンビ作品で独自の魅力を放ち始めた彼女に対して、阿久氏が徹底して人工的な演出で、と押したのがピンク・レディー、という当時の対比も改めて。

阿久氏は少年時代から映画好きだったようで、映画館で「カサブランカ」「紳士は金髪がお好き」、偶然か、後に書くヒット曲と同名の「また逢う日まで」('50)等見ているシーンや、自分の映画ノートの「ピンクの豹」、それに登場するクルーゾー警部の記事+傍らにあったドクターペッパー、という飲み物で「ペッパー警部」を発想というシーンがあり、

王選手のホームランシーンで「サウスポー」、ロッキード事件の記事で「ウォンテッド」を発想、等の幅広いアンテナぶり、もあったけれど、ピンク・レディーについてはハリウッド映画の登場人物をプロデュースするような感覚だった、というのが当時の華やかな勢いの背景としては面白かった。

昭和の終わりと共に、歌謡曲が色褪せ、Jポップでは歌詞の役割が減り、小説の方に向かった、という経緯。この人の著作は、折あればと思いつつ、未読だった。今の曲には時代の景色がない、アーティストが意味のない英語をまぶした詞を書くから、プロの作詞家が育たず、時代を歌で捉えられなくなった、

自分は空中に散らばっていた言葉をかき集めただけで、歌謡曲は時代を食って妖怪になって、純粋に面白かった、等のモノローグ。冒頭と終盤、本人は映らなかったけれど病室で、もっと今の時代を表わす言葉を書きたい、とペンに手を伸ばすシーン。

ラストの「スタ誕」会場での少年期との自分との対面等、やや余分な気がしたり、流れがざっと表層的な感もしたり、ドラマ、というより再現フィルム風、ではあったけれど、去っていったこの人の残した歌詞という形の言葉、それによって輝いた数々の歌手達、というのが、やはり何だかノスタルジー、折に追悼歌番組はあるようだけれど、やや異色な番組だった。

訃報と言えば、今日新聞に大きく赤塚不二夫氏の記事、阿久氏と同年代、やはり時代を彩った一人、マイベストは再放送だったかアニメで馴染んだ「ひみつのアッコちゃん」、ご冥福を祈ります。(http://www.ntv.co.jp/akuyu/阿久悠氏プレミアム10 ありがとう阿久悠さんhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080802

クリックすると元のサイズで表示します



2008/8/4  21:16

投稿者:Autumn

なぎささん、コメント有難うございます。番組名検索で拝見してTBお送りしました。

色々自分の懐かしさもあって書いたのですが、今は阿久氏のような作詞家が息づく時代ではなくなった、と思えば寂しい気もしますが、改めて独特の存在感+昭和ノスタルジー、を思った番組でした。

2008/8/4  21:12

投稿者:Autumn

Yamatoさん、コメント有難うございます。ご覧だったですか、「ピンポンパン・・」で人々が道で踊るシーンもありましたけれど、改めて本当にワクがなく、幅広い作風ですね。厳密に忠実じゃない所もあるかもしれないですが今回、映画、スポーツ、事件等、その元になるアンテナの広さ、も思いました。詞と風貌のギャップは、私は小椋桂氏、が重なる感覚だったり。野球も本当にお好きだったんですね、映画化の小説「瀬戸内少年野球団」があったり、スポニチに「甲子園の詩」を連載していて、前に少しだけ読んだのでしたが、好きとはいえ毎日観戦して詩を書き続ける精力や感性の懐、等とも思いました。

2008/8/4  8:51

投稿者:なぎさ
http://nagisanodate.jugem.jp/

はじめまして。
こちらのレビューをTBしていただいた管理人です。

とても詳しくそして分かりやすく書かれたレビューですね!

ほんと、再現ドラマ風の作り方でしたね。
今は懐かしい時代になってしまったあの頃を思い起こさせてくれたドラマでもありました。

2008/8/4  0:26

投稿者:いい加減なYamato
http://diary.jp.aol.com/fzr9gkhqgqfg/

こんにちは。
私はこの番組を全部みたわけではないのですが・・・。
阿久悠さんがなくなったとき、阿久悠さんが作詞なさった曲が紹介さ
れていましたが、私が子供の時に聴いていた曲のほとんどが阿久悠さ
んの作詞で驚きました。今回、この番組をみて、“ピンポンパン”の曲
迄もがそうだったのかと驚きました・・・。
子供の時、テレビで阿久悠さんをみたとき、聴く曲の歌詞とこの方の
顔とのギャップに子供心に驚いたものです。
そして、今回、この番組をみて、言葉を書き留めてあったり、事件を
スクラップしてあったり・・・。言葉のマジシャンも常日頃の努力の
積み重ねがなければ時代を映し出す言葉は産まれてこないのだなと改
めて勉強になりました。
それと、阿久悠さんは、確か高校野球ファンで、全試合をみてるとき
いた事があります・・・。そして今、高校野球の季節ですね。天国で
も観戦されているかも知れませんね。

コメントを書く


名前
メールアドレス
URL
コメント本文(1000文字まで)


RSS1.0