2008/10/12  20:45

未来への覚悟  仕事

先週初め、職場の同僚の様子が非常によろしくなかった。出勤時から、極端に疲れた態度を見せ、なかなか仕事にかからない。そのくせ、自分の担当の仕事を他人に譲らないのだ。

私の職場は飲食店。仕事が遅れた場合、迷惑を被るのは客である。彼らの催促を、私はわかっている、と言う態度を示しながら、ただ同僚が済ませるのを見守るより無い。自分に出来ない仕事なら仕方ないが、さっきまでしていたことを、彼女の出現により出来なくなったといって、それを客にどうやって納得させられるだろうか。

普段から感情の起伏が激しい人ではあるが、その日はあまりにも酷かった。他の同僚たちの大人な対応により、何とか事を起こさずやり過ごしたものの、最近自分の体調や感情も管理しきれず、持て余している私にとっては、困った状況だった。


しかし数日後、彼女の不調の理由がわかった。

彼女は未婚にして一児の母である。子供の父親はそう遠くないところに住んでいて、学校が無い水曜、土曜日と長期休暇の間は、子供の面倒を見ていた。しかし、最近は息子を預かることも減り、新しい恋人との間に娘が生まれた彼は、なんと彼女にその娘を預かってくれと頼んできたのだ。

ずいぶん勝手な話である。勿論断ったが、憎まれ口を吐かれた。息子は父親も、母親違いの妹も大好きで、どうしてもっと頻繁に会えないのかと尋ねてくる。そして、父親が同じ家で暮らしていないことを悲しんでいる。

働かなければ子供も養えない。しかし家事や子育ても、一人でこなさなければならない。近所に住む両親も、殆ど離縁状態だ。疲れると、苛々して、つい、子供にもつらく当たってしまう。子供は、自分が愛されていると自覚していないだろう。

そんな色々なことが、全部一緒にやってきて、追い詰められてしまったらしい。もう、どうして良いのかわからないのだ。


正直なところ、私には何も出来ない。ただ、黙って聴くのみである。何の慰めの言葉も、励ましの言葉もかけられない。彼女の助けになるようなことを言えるような、偉い生き方なんてしていないのだ。多分、彼女だって、それを望んでいるわけではない。ただ、自分の中から吐き出したかっただけだろう。

翌日、彼女は随分機嫌が良かった。話したことで少しでもすっきりしたのならいいのだが、事態が解決したわけではない。こんなとき、何も言わずただ彼女を抱きしめてあげられる人が、傍に居たらいいのにな、と思った。苦しみを打ち明ける相手が、私だったというのが、そもそも彼女が孤独であることの証明のようなものだ。職場の同僚の中で、気軽に話せて、言葉が通じそう、という程度の間柄である。


厳しい見方をすれば、彼女が片親の無い子供を持つと決断をした時点から、こういう事態は予想されるべきであり、それも乗り越える覚悟を持って生きているのなら、こんな風に行き詰まることはないのかも知れない。けれど、人はそんなに強くばかりもいられない。助けを求めることも、時には必要なのだ。

普段、不平不満ばかりこぼしている自分に、聞き手が居ることは、感謝すべきであると感じた、今回の出来事だった。
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