2008/7/7  18:03

本番  

昨日は本番だった。

前日の土曜は、家族で町に買い物に出たりしていた。現実逃避だ。
本番当日は、発声練習などしつつも、せっせとトイレなどを磨いていた。
精神的に余裕のある本番ではないので、もう風水頼りである。
これも一種の現実逃避だが、おかげで、家のあちこちはピカピカである。

会場が屋外なので、雨が降った場合翌日に延期になる予定だった。
昨日は朝から曇り空だったので、もしかしたら中止かも、と落ち着かなかった。
中止の場合、昼過ぎのメールする、ということだったので、
何度も確認したが結局中止の知らせは来ていなかった。

集合場所まで夫に車で送ってもらった。この演目は、年末市内で再演するので、
夫はその時に聞きに来るわ、と言って、昨日は家で留守番していてもらった。
姑が翌朝私達より一足早く旅行に出発するので、子守をしてもらうと深夜過ぎまで
私達が戻らないことになるし、うちの子供が聞きに来るのは今のところ無謀だ。

さて、その集合場所から、合唱団とオケはバスに乗って会場に行く予定だったが、
待てど暮らせどバスが来ない。結局、いつまでもそこで待っていても、
バスが来ないらしいことがわかり、それぞれ車に分乗して会場に向かった。
段取りが悪いことである。

市内から抜けると曇り空が切れて、素晴らしい晴天だった。
海の近くの別荘地の中で、庭みたいなところに仮設ステージと
仮設の客席を組み立てた会場だった。
会場で最終確認稽古があった。私は屋外で歌うのは初めてだ。
恐らく、高校時代の校庭で校歌を歌うとか、それ以来だ。全然内容が違うが。

音響は悪くないという話だったが、あまり歌っていて気持ち良い音響とは言い難かった。
夕方はイマイチでも、夜になると不思議と音響はマシになる、という話だった。

地面は芝生だった。私は白いドレスを持って来ていたが、大後悔した。
幸い地面は乾いていたが、ぬかるんでいたらドレスはドロドロになるだろう。
しかも白である。

確認稽古中から、どんどん冷えてきた。私はバーゲンでおニューのワンピースなど
大量に買い込んだのに、そんなものは一切着れないくらい寒かった。
しっかりジーンズを履き、Tシャツとサマーセーターを重ね着していたがまだ寒く、
結局帰りは冷えると思って持っていたコートを着ていた。

本番は肩紐のドレスに、薄いストールを持ってきているだけで、本当に後悔した。
単純に、7月の本番だし寒いわけがない、と思っていたが、昨日は特別寒かった。
風もあったし曇っていた。冬教会で歌うのよりは暖かい、というくらいだ。
吐く息が白くなるほどではなかったが、本番が近づくにつれますます寒くなった。

夏休みに入り、解説つきコンサートだったし屋外だったし、
既に会場にはたくさんの子供が来ていた。
関係者は無料で家族を連れてきて良いということだった。
うちも夫に子連れで来てもらっても良かったなと思ったが、
やはりうちの子供たちが、最後まで静かに演奏を聴くとは思えない…。

オケのチェリストの子供達は、いつも演奏会に来ているので、
よく楽屋などで話したりしている。昨日もその子たちが来ていた。
その子は私の顔を知っていて、私が自分の確認がもう済んで
暇そうにしているのを見てやってきて「ぬいぐるみを投げて遊んでいたら、
木の上に乗っかっちゃって取れない」と言うので、
いろいろ苦心して木を揺すってみたり、ジャンプしてみたりして頑張ったが、取れない。

もう何年も、木の上に乗っかってしまった玩具を落とすという作業は、
しょっちゅううちの子にも頼まれることなので、慣れてはいるが、
本番前に私は一体何をやっているんだ、と思って笑えた。

誰か会場の人に頼もう、と言っていたが、皆忙しくてそれどころではなかった。
あちこちうろうろしていると、控え室で長い棒を発見、目出度くぬいぐるみ救出に成功。
長い棒で屋根の上に乗ってしまった息子の玩具をとった話は、2週間前も日記に書いた。
私はこういう仕事をする星回りなのだ。本番前でさえこんなことを頼まれる。
そして長い棒を持つと、ブリュンヒルデになった気分になり、単純に高揚する(アホ)。

ぬいぐるみ救出の後食券をもらい、演奏会場の脇にある芝生でバーベキューピクニックだ。
これはなかなか良い感じだった。演奏者だけでなく演奏会を聞く人たちも一体になって
行列を作った。前菜に牡蠣が食べられるらしかったが、私とメゾのソリストが
一番長いメインディッシュの列に並んでいると、私達の前にいたおっさんたちが、
牡蠣をもう食べたかと聞くので、まだだ、というと、あんた達の場所はとっておくから、
牡蠣をもらっておいで、と言ってくれたので、堂々と列を離れ牡蠣とワインを頂き、
行列に戻った。

おっさん達は親切に、私達がグラスと牡蠣の皿を両手に持って
牡蠣を食べるのは難しいから、とワインと皿を持ってくれて、私達は牡蠣を食べながら、
メインディッシュの順番を待っていた。私はまだスッピン状態だったし、
いろいろ支度もあるので時間が節約できてありがたかった。
牡蠣の立食は大変お行儀の悪いことだったが、それでもおっさん達は
とても陽気で親切だったし、牡蠣もワインも美味しかった。

メインディッシュは、バーべキューで焼いたステーキか鴨ロースを選ぶことができた。
鴨を選び、大変美味しかったので脂肪までしっかり食べた(着席で)。
オケや合唱団は、ちゃんと正規に行列を作り、いつまでも食べているようだったが、
私達は親切なおっさん達の協力もあり、早めに食事を終えて、控え室に戻れた。

テノールは控え室でヨガをやっていた。ヨガ仲間だ。なかなか上手だった。
床が大層汚い場所だったが、そうでなかったら一緒にヨガをやりたいくらいだった。
黙々とヨガをするテノールを背後に、黙々と顔にファンデをしっかり塗りこみ、
髪を巻いていた。なかなかシュールな光景だ。

本番前、会場にBGMとして軽音楽が掛かっていた。
指揮者は、ロッシーニとは似ても似つかない音楽をかけるなんて、とご立腹だった。
集中したいときに関係ない音楽は嫌だ、と思うのだろうか。
私ははっきり言ってどうでも良いと思った。
段々暗くなっていたが、海の方角から黒い雲が流れてきていたのが気になった。

日が暮れてきて、ますます寒くなっていた。第一部はソリストが1曲ずつ歌う。
私はメゾと猫を歌う。演出らしい演出もないが、まあ求愛して成就、という定番だ。
とりあえず受けたようだったし、私はまたメゾとチューした。
私が舞台上でチューする相手はいつも女性だ。
と今回で2回目だったが。前回は私が男で、今回は女役だ。

ドレスに薄いストールだけでは寒いので、私は舞台用としてではなく持っていた
別のスカーフをストールと重ねてつけることにした。同系色だし、これで大分暖かい。
2枚が合体していたほうがバタバタしなくていいのだが、
ソーイングセットなど持っていないので、事務所にあったホッチキスでとめた。

第二部も事故もなくどんどん進んだ。途中小粒の雨が降った。
私は楽譜に小さな水滴が付いているのが見えて、私のつばか、と思ったが、雨だった。
スポットライトを見ていると、雨が降っているのがわかったが、
大降りになることなくすぐに止み、結局最後まで無事終えることが出来た。

メゾは、いつかベルレクを屋外でやり、途中大雨になって、
リベラメの前で演奏会を終らせたことがある、と言っていた。
そんなことになったらどうしよう、と思っていたが、大した雨にならなくて済んだ。
私のアリアの前で大雨が降ったら、歌わないで済んでホッとするかも、と思う気持ちと、
やっぱり今日まで頑張ったんだし、歌わないわけにはいくまい、という気持ちが
入り乱れた。やはり、逃げるより、雨にもまけず歌いたい気持ちが強いことがわかる。

私のアリアのテンポは、やはり前半を早く歌わないと、
下手なテノールみたいなことになりかねないので、早くやってくれと頼み、
私の歌いたいテンポで歌わせていただくことにした。
不思議と緊張もなく、最後も何とか決まった…ぐったりである。

とにかく、重要なのはコンサートの成功だ。私は自分にできることをするだけだ。
全曲が終わり、スタンディングオーベーションをしていただくと、
ま、いっか!と思ってしまう。まあこの国の聴衆は、
簡単にスタンディングオーベーションをしてくれる人たちで、
演奏家には甘い国民だ。特に田舎だからそうなのだろう。

そして、甘やかされた演奏家(私)はこんなリアクションを見ると、
単純にウハウハ嬉しくなる。たくさんの人が良かったよ、と声をかけてくれた。
ふーんと思うが、そういうことにしておく。

帰り道のバスも当然ないので、家の近くに住む合唱の人が送ってくれた。
彼は家族連れで、3人の子供がいる。下の2人は、うちの子と2人とも同い年だ。
下の子は演奏中も寝ていたようだが、静かに聴けて偉いことだ。
車で、下の2人の子はいびきをかいて寝ていた。
奥さんと一番上の子がが客席にいたので、いろいろ感想を言ってくれた。
客席だとどういう印象かよくわかる。今回は夫も来なかったので、いろいろ面白かった。

風水効果か、本番も無事済んだ。これで私も夏休みが始まる。
12月の再演にも声をかけていただけたので、昨日以上の演奏ができるようにしたい。



2008/7/9  17:44

投稿者:junki

>あまんださん、
どうも、こちらではおひさしぶりでした(変な文章)。
帰国を前にお忙しくて大変ですね。いろいろご助言いただいてありがとうございました。これを克服、と呼んで良いのか疑問なんですけど…。とりあえず、最悪の事態は回避できました。ゆっくりしたテンポでも歌えるといいんですが…。
日本、素晴らしいメンバーに囲まれて、いろいろ楽しんでください。


2008/7/8  23:05

投稿者:Amanda

ようやくここにも戻って来れました。
超久しぶりです。
読めなかった日記は、新しいPCで松本でもゆっくり読みますわw
メールでも読んだけれど克服おめでとう!
年末に歌うときは、もっと楽になるのではないかしら。
次回会った時、また説明しますね。
とりあえず、引越しに向けて頑張ってね!!

2008/7/8  17:06

投稿者:junki

>Cecillianaさん、
ありがとうございます。
いやー、スタンディングオーベーションは、されない方が珍しいんですよ。皆さんそこまで感動するのでしょうか。単に拍手するだけより盛り上がりたいと思っていらっしゃるんでしょうか。よくわからないけど、こうローカルなコンサートなので、皆さん批判的な目で厳しく見るより、ひたすら楽しもうと思ってらっしゃるみたいです。
夏休み、長いんです…学校とか幼稚園が母親に与えてくれる静寂って、素晴らしいですね…。まあ可愛いのも今のうちと思って、楽しく観察しようと思います。

2008/7/8  16:59

投稿者:junki

>はゆちゃん、
同じものでも、野外で食べるとなんかワクワクして、屋外で食べるより美味しい気がするよねー。何でだろう?
あの鴨は特別んまかったよーーー。ワインも美味しかったなあ、って本番前に当たり前のように飲んでるんだけど。
いよいよ遂に夏休みです。引越し準備中状態に突入してます。
はゆちゃんとこも、いよいよもう少しだね。良い夏休みをお迎えください。

2008/7/8  16:55

投稿者:junki

>げっけいじゅさん、
本番としては大変でしたが、日曜は一日お祭みたいな感じで面白かったです。ジモティのおっさんや、子供達との交流が妙に楽しかったです。
本当にカオスなんです。段取り悪いし…日本ではありえない話ばっかりでしたけどね。それでも、居心地はとてもよかったです。合理的で便利な日本ですが、それが心の豊かさと直結しているかは疑問です…。
でも無茶苦茶寒かったのが一番の思い出かもしれません。夏の夜は、田舎だと寒いと勉強になりました。もうドレスは前から決めていて、今更別のものに変更するなんて、と言う感じでしたが、他の候補も考えて変更するべきでした。反省です。

2008/7/8  9:43

投稿者:Cecilliana

ご成功おめでとうございました。
最後までお天気がもってよかったですね。
しかし急激な気温の低下の中歌うと言うのは厳しいですよね、しかも屋外で。
そんな中でのスタンディングオベーション、さすがです♪

これから始まる夏休み、がんばってください。
junkiさんほどお子様を大事にしてらっしゃっる方でも自分だけの時間が侵食されるのは堪えるというお話、うかがうとあーよかった私だけじゃなかったんだわ〜とこっそりうれしくなっちゃいます。
でもあとホンの数年ですよ〜きっと。

2008/7/8  8:34

投稿者:はゆ

お疲れ様〜。
無事に終わっていよいよ夏休みだね。

褒められると嬉しいし、
またがんばっちゃお!って気になるよね。

お料理の話を聞いて
なんか美味しいもの食べたくなっちゃったw

2008/7/8  0:31

投稿者:げっけいじゅ

ああ、なんだか素敵な夏をお過ごしですね。
牡蠣、バーベキュー、ヨガ、夜の野外音楽会。
全て私も好物なので、EUの夏が懐かしいです。

それにしても、何故でしょうね、読めないヨーロッパの
寒さ。暑い夜はアフリカかって程だし、突然ストールを
必要とするほどにキンキンに冷えてしまったり。
それでもやっぱり、なんだか懐かしくて南ヨーロッパが
好きです。色々カオスなことがあっても憎めません。

私もカレッジが辛いのか、現実逃避で、こちらに伺って
は違うことを考えて忘れています。
junkiさん、ありがとう!

2008/7/8  0:31

投稿者:げっけいじゅ

ああ、なんだか素敵な夏をお過ごしですね。
牡蠣、バーベキュー、ヨガ、夜の野外音楽会。
全て私も好物なので、EUの夏が懐かしいです。

それにしても、何故でしょうね、読めないヨーロッパの
寒さ。暑い夜はアフリカかって程だし、突然ストールを
必要とするほどにキンキンに冷えてしまったり。
それでもやっぱり、なんだか懐かしくて南ヨーロッパが
好きです。色々カオスなことがあっても憎めません。

私もカレッジが辛いのか、現実逃避で、こちらに伺って
は違うことを考えて忘れています。
junkiさん、ありがとう!

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