2008/4/30 23:25
もう一つの日本文化(アイヌ文化への敬意) 文化・芸術
だいぶ前のことになってしまったが、3月16日に開催された「第2回 伊福部昭音楽祭」に行ってきた。

1月20日のブログでお知らせしたとおり、今回演奏された曲でアイヌに関わりのあるものは、次の2つであった。
○室内オーケストラのための「土俗的三連画」
○管弦楽の為の「コタンの口笛」(オーケストラ版/“アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌”より)〜ソプラノ:藍川由美
後者のオーケストラ演奏とソプラノ独唱はすばらしかった。
オリジナルの曲は、昭和31年にアイヌ語の伝承詩によって書かれた『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』の第2曲である『北の海に死ぬ鳥の歌』であり、昭和34年に制作された、アイヌ民族を描いた映画『コタンの口笛』のタイトル曲でもある。
この曲の詩はアイヌであり北海道大学教授でもあった知里真志保の採録になるものであり、伊福部の曲は昭和20年代後半に採録した釧路アイヌのメロディーを下敷きにしたものとのこと。
本当にすばらしい曲と演奏・独唱だった。
ここまでは、私にとっても、あのコンサートに行った多くの人にとっても真実のことだと思う。
では、この曲を「すばらしいアイヌの曲(音楽)だった。」と書くことはできるだろうか?
それを判断できるのは、アイヌだけなのだろう。
その評価は、アイヌに任せよう。
アイヌによる評価とは別の事柄として、私もある見解を持っている。
そのことを書く前に、次の事例を紹介したい。
2002年にサッカーのワールドカップ日韓共催が開催された。
テレビでの試合放映の度に流されていたテーマ曲(正式には『公式アンセム』)を覚えているだろうか。
琴のような音色のメロディーと和太鼓、コーラスが印象的で、東洋的な音階と楽器がうまく融和した壮大なオーケストラ曲である。

その曲を作ったのは、日本人でも韓国人でもない。
ギリシャ人で映画音楽で有名な『ヴァンゲリス』という作曲家である。
*1943年生、シンセサイザー奏者・作曲家。映画音楽では、炎のランナー(1981)、ブレードランナー(1982)、南極物語(1983)などが有名。
彼はきちんと日韓の音楽を研究し、日本人にとっても、韓国人にとっても自国の音楽として感じられる音楽として、そして、他の国の人々には日本と韓国を感じさせる音楽を作ってくれた。
*日本人には和太鼓が印象的で「日本」感じさせるが、韓国人には「アリラン」を引用した旋律と韓国打楽器サムルノリが「韓国」を感じさせる。
この曲は、日本の音楽でも韓国の音楽でもない。
しかし、日本と韓国の音楽に敬意を払った曲であることは断言しても良い。
アメリカ人やヨーロッパ人などの中には、この曲がきっかけとなって、日本や韓国の音楽(文化)に興味を持った人もいると思う。
私は、伊福部の『コタンの口笛〜オーケストラ版』も同じように感じる。
アイヌ音楽ではないが、アイヌ音楽に敬意を払った曲であり、この曲がきっかけとなって、アイヌ音楽(文化)に興味を持つ人もいると思う。
*個人的なことであるが、私は1970年代後半からヴァンゲリスのファンである。
彼が1979年に「チャイナ」というアルバムを発表した。
中国をモチーフにした作品であるが、そのときは、ひどく俗っぽい、安易な音の作り方のように感じ、好きにはなれなかった。
それから2年あたり経った頃、ヴァンゲリスによるこのアルバムへのコメントを読んだ。
大筋では次のような内容だったと記憶している。
『私はアルバム「チャイナ」に様々な批判があることを知っている。
私は東洋人でも中国人でもない。だが、私は、私が感じる中国を、中国に敬意を払って忠実に表現したつもりだ。自分としては何ら恥じるところはないと考えている。』

話は変わる。
「第2回 伊福部昭音楽祭」が開催された日(3月16日)、釧路市にあるレストランがオープンした。
そのレストランのHPから一部を紹介する。
http://www.i-omante.com/
『あるとき、フランス料理の修業を続ける料理人が、広い東北海道で”アイヌ料理”と出会いました。
それは一種の啓示だったのかもしれません。
この異なる文化圏の、食文化の巡り合いには思わぬ共通点がありました。
それは、素材が持つ美味しさや旨みを最大限に引き出すこと。
さらには、地場のものを旬の時期に見た目にも鮮やかにお料理すること。
そして、素材が生まれる瞬間から朽ちる瞬間まで、その「一瞬」ごとに価値を見出すこと・・・
料理人として「なんでも器用に作る」は、じつは「なにも作りだしていない」のかもしれない。そう気づかされました。
この「くしろ」で自分が本当に作りたい物をつくる。
それがアイヌ料理とフランス料理とのささやかでも大きな出会いを“創る”こと。
ようやく私たちの”芽”が息吹き始めます・・・・』
アイヌ料理の要素を取り入れたメニューは、次のようなものがある。
『達古武豚スペアリブとトマト、西洋野菜の〜ポネ・オハウ〜』
『釧路産サーモンとキタアカリピューレの重ね焼 アイヌ料理のコンブシト風』
『阿寒産エゾ鹿肉とフォアグラのパイ包み焼、シケレべソース』
私は、この情報を知ったとき、2つのことを考えた。
1つは、店名が「イオマンテ」という奇をてらったものであり、観光客向けの際物かな、というもの。
もう1つは、アイヌ文化に敬意を払った(和人による)フランスレストランかな、という期待。
先日(4月24日)に行って、『達古武豚スペアリブとトマト、西洋野菜の〜ポネ・オハウ〜』を食べてきた。


私が感じたのは、次のようなことである。
まず、料理の味は、まったくアイヌ料理ではない。
*紋別市にも同じような趣向の店(レストラン・ネーフ)がある。
北海道産の素材を使って、フランス料理の手法を用いて表現した、すばらしい『北海道のフランス料理』店である。
だが、アイヌ文化に敬意を払っていることは、メニューのデザインをはじめ、店内の随所に少しづつ感じられた。
決してアイヌ文化とかを前面に出すことはしない。
だが、『北海道のフランス料理』という『北海道』の中の重要な要素として、アイヌ文化を位置づけしているように感じた。
この店の料理がきっかけとなって、アイヌ料理に興味を持つ人が増えることを期待したい。
作年11月18日のブログにも書いたが、本当のアイヌ料理は、阿寒湖などで食べることができる。
私のお奨めは、阿寒湖の「ポロンノ」の「ユックオハウ・セット」である。
ユックオハウ(鹿肉の具沢山のスープ)とご飯、メフン(鮭の腎臓の塩から)の3点セットで850円と値段も手頃だ。
http://jns.ixla.jp/users/taka20001116845/
1月20日のブログでお知らせしたとおり、今回演奏された曲でアイヌに関わりのあるものは、次の2つであった。
○室内オーケストラのための「土俗的三連画」
○管弦楽の為の「コタンの口笛」(オーケストラ版/“アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌”より)〜ソプラノ:藍川由美
後者のオーケストラ演奏とソプラノ独唱はすばらしかった。
オリジナルの曲は、昭和31年にアイヌ語の伝承詩によって書かれた『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』の第2曲である『北の海に死ぬ鳥の歌』であり、昭和34年に制作された、アイヌ民族を描いた映画『コタンの口笛』のタイトル曲でもある。
この曲の詩はアイヌであり北海道大学教授でもあった知里真志保の採録になるものであり、伊福部の曲は昭和20年代後半に採録した釧路アイヌのメロディーを下敷きにしたものとのこと。
本当にすばらしい曲と演奏・独唱だった。
ここまでは、私にとっても、あのコンサートに行った多くの人にとっても真実のことだと思う。
では、この曲を「すばらしいアイヌの曲(音楽)だった。」と書くことはできるだろうか?
それを判断できるのは、アイヌだけなのだろう。
その評価は、アイヌに任せよう。
アイヌによる評価とは別の事柄として、私もある見解を持っている。
そのことを書く前に、次の事例を紹介したい。
2002年にサッカーのワールドカップ日韓共催が開催された。
テレビでの試合放映の度に流されていたテーマ曲(正式には『公式アンセム』)を覚えているだろうか。
琴のような音色のメロディーと和太鼓、コーラスが印象的で、東洋的な音階と楽器がうまく融和した壮大なオーケストラ曲である。
その曲を作ったのは、日本人でも韓国人でもない。
ギリシャ人で映画音楽で有名な『ヴァンゲリス』という作曲家である。
*1943年生、シンセサイザー奏者・作曲家。映画音楽では、炎のランナー(1981)、ブレードランナー(1982)、南極物語(1983)などが有名。
彼はきちんと日韓の音楽を研究し、日本人にとっても、韓国人にとっても自国の音楽として感じられる音楽として、そして、他の国の人々には日本と韓国を感じさせる音楽を作ってくれた。
*日本人には和太鼓が印象的で「日本」感じさせるが、韓国人には「アリラン」を引用した旋律と韓国打楽器サムルノリが「韓国」を感じさせる。
この曲は、日本の音楽でも韓国の音楽でもない。
しかし、日本と韓国の音楽に敬意を払った曲であることは断言しても良い。
アメリカ人やヨーロッパ人などの中には、この曲がきっかけとなって、日本や韓国の音楽(文化)に興味を持った人もいると思う。
私は、伊福部の『コタンの口笛〜オーケストラ版』も同じように感じる。
アイヌ音楽ではないが、アイヌ音楽に敬意を払った曲であり、この曲がきっかけとなって、アイヌ音楽(文化)に興味を持つ人もいると思う。
*個人的なことであるが、私は1970年代後半からヴァンゲリスのファンである。
彼が1979年に「チャイナ」というアルバムを発表した。
中国をモチーフにした作品であるが、そのときは、ひどく俗っぽい、安易な音の作り方のように感じ、好きにはなれなかった。
それから2年あたり経った頃、ヴァンゲリスによるこのアルバムへのコメントを読んだ。
大筋では次のような内容だったと記憶している。
『私はアルバム「チャイナ」に様々な批判があることを知っている。
私は東洋人でも中国人でもない。だが、私は、私が感じる中国を、中国に敬意を払って忠実に表現したつもりだ。自分としては何ら恥じるところはないと考えている。』
話は変わる。
「第2回 伊福部昭音楽祭」が開催された日(3月16日)、釧路市にあるレストランがオープンした。
そのレストランのHPから一部を紹介する。
http://www.i-omante.com/
『あるとき、フランス料理の修業を続ける料理人が、広い東北海道で”アイヌ料理”と出会いました。
それは一種の啓示だったのかもしれません。
この異なる文化圏の、食文化の巡り合いには思わぬ共通点がありました。
それは、素材が持つ美味しさや旨みを最大限に引き出すこと。
さらには、地場のものを旬の時期に見た目にも鮮やかにお料理すること。
そして、素材が生まれる瞬間から朽ちる瞬間まで、その「一瞬」ごとに価値を見出すこと・・・
料理人として「なんでも器用に作る」は、じつは「なにも作りだしていない」のかもしれない。そう気づかされました。
この「くしろ」で自分が本当に作りたい物をつくる。
それがアイヌ料理とフランス料理とのささやかでも大きな出会いを“創る”こと。
ようやく私たちの”芽”が息吹き始めます・・・・』
アイヌ料理の要素を取り入れたメニューは、次のようなものがある。
『達古武豚スペアリブとトマト、西洋野菜の〜ポネ・オハウ〜』
『釧路産サーモンとキタアカリピューレの重ね焼 アイヌ料理のコンブシト風』
『阿寒産エゾ鹿肉とフォアグラのパイ包み焼、シケレべソース』
私は、この情報を知ったとき、2つのことを考えた。
1つは、店名が「イオマンテ」という奇をてらったものであり、観光客向けの際物かな、というもの。
もう1つは、アイヌ文化に敬意を払った(和人による)フランスレストランかな、という期待。
先日(4月24日)に行って、『達古武豚スペアリブとトマト、西洋野菜の〜ポネ・オハウ〜』を食べてきた。
私が感じたのは、次のようなことである。
まず、料理の味は、まったくアイヌ料理ではない。
*紋別市にも同じような趣向の店(レストラン・ネーフ)がある。
北海道産の素材を使って、フランス料理の手法を用いて表現した、すばらしい『北海道のフランス料理』店である。
だが、アイヌ文化に敬意を払っていることは、メニューのデザインをはじめ、店内の随所に少しづつ感じられた。
決してアイヌ文化とかを前面に出すことはしない。
だが、『北海道のフランス料理』という『北海道』の中の重要な要素として、アイヌ文化を位置づけしているように感じた。
この店の料理がきっかけとなって、アイヌ料理に興味を持つ人が増えることを期待したい。
作年11月18日のブログにも書いたが、本当のアイヌ料理は、阿寒湖などで食べることができる。
私のお奨めは、阿寒湖の「ポロンノ」の「ユックオハウ・セット」である。
ユックオハウ(鹿肉の具沢山のスープ)とご飯、メフン(鮭の腎臓の塩から)の3点セットで850円と値段も手頃だ。
http://jns.ixla.jp/users/taka20001116845/
