2008/5/20 5:53
もう一つの日本文化(アイヌの中国語表記) 文化・芸術
先週末(5月17・18の土日)、中国の高校生がホームステイで我家に来た。
我家にとっても初めての経験であったが、中国高校生(漢族の「李」くん、16歳、四川省成都市出身)の積極的でありながら礼儀正しい態度に助けられて2日間を無事終了した。
中国高校生は日常会話程度の英語は話せるとのこと、受入家庭も簡単な英語か中国語が話せればいいとのことで受入れた。
私の語学の実情は、英語も中国語も「ほんの少し出来る」といったもの。妻の英語も、私よりは「多少まし」という程度。彼の話をどれだけ正確に理解したか、また、こちらの意図したことをどれだけ伝えられたかは、不明である。
彼の訪日9日間(5月13日〜21日)の日程表を見せてもらった。
初日、成田空港から入国。
2日目は皇居や外務省訪問など東京での公式行事。
3日目は全国4道県に分かれての活動となり、北海道へは42名が来る。羽田から釧路へ移動、丹頂鶴公園や市立博物館などの視察、地元ロータリークラブ主催の歓迎会。
4日目は地元高校との交流があり、夕方、阿寒湖入りをする。
日程表には、次のように記載されている。
5/16(星期五) 在阿寒湖愛奴民族村参観了解愛奴民族文化
17:30〜18:30 (講話、参観古式舞踏、参観生活記念館)【学習体験】
5日目は札幌へ移動。札幌の一般家庭へのホームステイ(寄宿的日本家庭見面)。
6日目は午前中でホームステイ終了。午後は小樽運河や市立博物館などの視察。
7日目は札幌の高校との交流。
8日目は大阪へ移動、大阪城などの視察。
9日目は帰国である。
彼は、我家に来る前日、阿寒湖のアイヌコタンに行ってきたとのことで、オンネチセでのアイヌ古式舞踊やアイヌ生活記念館(ポンチセ)などを観た話をしてくれた。
デジカメで丁寧にこれらを撮影していた。古式舞踊は動画撮影していた。
私は、この家には、アイヌの木彫り工芸品がたくさんあるよ、と言って、テーブルの上に置いてあるニマや壁や玄関に飾ってあるイタ、台所のメノコイタなどを紹介した。
また、秘蔵のマキリ15本やパスイについても披露し、簡単な解説を行った。
彼は訪日前に、それなりに日本文化についても自分で学習してきたようで、一般的な日本文化とは異なるデザインや雰囲気を持っていることは理解したようだった。
ついでにと思って、このブログを見せると、目を輝かしてWebアドレスをメモしていた。
積極的で、偏見がなく、非常に学習意欲が高い少年だった。中国にこのような少年が多いとすれば、当然の結果として、将来、日本は中国に負けると思った。
*食事のあと、お茶(抹茶)を振舞った。
茶道についても事前学習していたとのことで、うれしそうに初めての経験だと言っていた。
妻が茶筅でお茶を立てている様子もデジカメで動画撮影している。
本来、お茶は楽しく飲むことが最も大切である。(少なくとも利休の教えはそうである。)
お菓子(和生)の食べ方については特に教えず、お茶をいただくとき茶碗を持って感謝することと時計回りに2回ほどずらす(回す〜正面を避ける)ことだけ教え、味わってもらった。
彼は、おいしそうにお菓子を黒文字(楊枝)に刺してパクッと一口で食べて、茶碗を持って感謝し不器用そうにはあるが右に2回ほど回し、お茶を飲んで満足した様子で茶碗を置いた。
次に私がいただいたわけであるが、普通の動作を行うことになる。
お菓子は、黒文字で切って食べ、茶碗は三口半で飲み、飲み口を指で拭いて、茶碗を正面に戻すことになる。
私が飲み終えたあと、妻が彼に「もう一服いかがですか?」と聞くと、「もう一回飲みたい」とのことで、もう一服立てた。
驚いたのは、2回目の彼は、私の動作を正確に演じたことだ。
私は、この少年は、単に頭がいいだけでなく、他文化に対し敬意を払う心を持っていると感じた。
彼との交流は、他にも感心したことがいろいろあるが、ここでは触れない。
話は変わる。
私は彼が持っていた日程表4日目の『在阿寒湖愛奴民族村参観了解愛奴民族文化』の『愛奴民族』という表記が気になった。
漢字には、それぞれ意味がある。
『奴』という字は、「召使。金で買われた住みこみの使用人」の意味である。
アイヌの中国語表記として、私は適切でないと考える。
ご承知のとおり、「アイヌ」という言葉はアイヌ語で人間を表す単語の「音」であり、日本語で表記するときはカタカナでこのように表記する。
英語で表記するときは「AINU」になる。
中国人向けには、漢字(中国語)で表記することになるのだろうが、どのように表記するのが適切であろうか。
一般的な話として、中国語において、外国語など自国にない言葉を取り入れる方法は、2つある。意味で取り入れる場合と、音で取り入れる場合だ。
意味で取り入れる場合の例として、「ホットドック」→「熱狗」、「スーパーマーケット」→「超級市場」。
音で取り入れる場合(音訳)の例として、「サンドイッチ」→「三明治」がある。
音訳の場合も、意味としてイメージできるものにすることが多い。
例えば、「コカコーラ」→「可口可楽」(楽しくおいしい)、「ペプシコーラ」→「百事可楽」(大変おいしい)、「ビタミン」→「維他命」(彼や彼女の命を維持する)、「シャンプー」→「香波」(香りする波)などである。
前述のとおり、漢字には、それぞれ意味があるため、その命名によっては、トラブルになることも多い。
5年ほど前、中国でトヨタの車種名を巡る騒動があり、トヨタは迅速に対応した結果、かえって評価を高めた事件があった。
2003年11月末、トヨタは中国で新型RV車(日本名:プラド)を「覇道:バーダオ」として発売した。トヨタとしては、音訳+「困難と危険を恐れない」といったイメージを付けたつもりだったと思う。
そして、その広告は、轟然と進む車体「覇道」に対し、2体の中国の石の獅子が敬礼をしているものだった。

この広告は、中国の人々に怒りを引き起こした。中国の伝統文化では「石の獅子」は「正義と尊厳の象徴」である。
「覇道」という言葉は、日本語における意味よりももっと強く「横暴、無道」を意味する。
どうして、日本の「横暴、無道」に対し、中国の「正義と尊厳の象徴」が頭を下げるのか、というものだ。
これを「言いがかり」と思う人もいるだろうが、トヨタの反応は迅速だった。
すぐさま、中国語版HPに謝罪文を掲載し、車名は、単なる音訳の「普拉多:プラド」とした。
この事件を契機に、トヨタは、すべての車種の命名に単なる音訳を採用することに決めた。トヨタの最高級車LEXUS(レクサス)は、「凌志」から「雷克薩斯」に改称された。
民族名の漢字表記については、3週間ほど前の「週刊朝日」で次のような記事を読んだ。(記憶なので誤っている部分があるかも知れない。)
中国政府のチベット弾圧に対する覆面座談会で、日本にいるチベット人やウィグル人、モンゴル人などによるだった。
その中で、こういう発言があった。
中国人は、漢民族が最も優秀で、他の民族を低く見る伝統的傾向がある。
モンゴルに対しては、現在も「蒙古」という表記を使用している。
「蒙古」という漢字の意味は、「道理に暗く愚かであり、古い。」という意味であり、モンゴル人に対する侮辱である。
このような他民族への蔑視は、古来からあった。
「日本」について、最初に中国語で表されたものは、「魏志倭人伝」で有名な「倭」という表記だ。
「倭」という漢字の意味は、「背が曲がって背丈の低い小人」という意味であり、侮辱的な意味合いである。
これに対し、聖徳太子は、西暦607年、隋の煬帝に出した国書において、「倭王」という名称を使用せず、「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙(つつが)なきや・・・」という文章を出し、隋の皇帝の怒りをかった史実がある。
これは、自国を貶める表記は避けるという勇気ある行為だったと思う。
さて、アイヌの中国語表記についてであるが、実態がどのようになっているか、道内で発行されている観光パンフを調べてみた。
(JR札幌駅にある道と札幌市が共同運営している観光物産センターに置いてあったものを調べた。)
表記は、次の4種類だった。
*パンフ名及び発行者を記載
*パンフ名は、台湾人向け(繁体字)も中国本土人向け(簡体字)も、便宜上、日本の漢字で表記した。
@漢字ではなく「AINU」表記
●日本北海道観光(北海道観光連盟)
A「阿伊努族」または「阿伊努民族」
●札幌市阿伊努文化交流中心(札幌市)、●札幌観光指南(札幌市)、●登別棕熊牧場(登別温泉索道梶A●旭川市周辺地区指南(旭川市)、●歓迎光臨阿寒湖温泉(中国本土人向け:阿寒阿伊努工芸協同組合)、*私の記憶では、ニ風谷のアイヌ博物館もこの表記
B「愛努民族」
●北海道活動指南・北海道活動指南(洞爺湖サミット道民会議/国土交通省北海道運輸局)、●愛努民族博物館(アイヌ民族博物館)、●歓迎光臨阿寒湖温泉(台湾人向け:阿寒愛努工芸協同組合)、●阿寒湖愛努Cotan(阿寒愛努工芸協同組合)、●大自然宝庫北海道(北海道観光連盟)
C「愛奴族」
*観光パンフではなかったが、阿寒観光協会HP(作成:NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構)で中国本土人向けのHPで、次のようになっている。
阿寒的魅力>愛奴族部落
在阿寒湖温泉街上有36户130人左右的北海道最大的爱奴族部落。[寇坛]在爱奴语中是部落的意思。 主街的两侧是民族工艺品店,饮食店,在部落中央的[恩内齐塞]可以观看爱奴古典舞蹈,欣赏民族乐器口琴的演奏。
http://www.lake-akan.com/zh/ainu/index.html
*不思議なことに、阿寒観光協会HPの台湾人向けのHPでは、次のように「愛努民族」を使用している。
阿寒的魅力>愛努村落
阿寒湖溫泉街的總戶數有36戶、130人左右,是北海道最大的愛努民族的村子。「村落(KOTAN)」是愛努語「村子」的意思。 主要街道的兩側有許多民藝品店和飲食店,在村落(KOTAN)中央的「ONNECHISE」,可以觀賞愛努古式舞蹈,也可以聽到民族樂器--- MUKKURI的演奏。
http://www.lake-akan.com/zh-tw/ainu/index.html
<私の考え>
一般的な日中辞典での「アイヌ」の中国訳(表記)は、「阿伊努」である。これは単なる音訳であり、意味が付加されることがないからだと思う。
「阿伊努」がいいのか「愛努」(または「AINU」)がいいのかは、アイヌが決める事項であるが、統一した方がいいと思う。
「愛奴」の表記は、論外である。阿寒観光協会(作成:NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構)は、直ちに修正すべきである。
自国の民族を貶めることは避けるのは、全世界共通のあるべき認識だと思う。
自国や自分の住んでいる地域の文化や伝統を大切に考えていないことが、今回の「愛奴表記」の最大の要因だと思う。
今回の中国高校生の訪日事業(日中21世紀交流事業)の事務局は、NPO法人日中交流振興協会であるが、そこに情報提供した経緯を確認し、再発することがないようにすべきである。
*阿寒湖地区のアイヌ表記は、統一されていない。「愛奴」「阿伊努」「愛努」の3種類が並存している。
中国本土人向けのアイヌ表記は、阿寒観光協会HPでは「愛奴」、阿寒阿伊努工芸協同組合によるものでは「阿伊努」である。
台湾人向けのアイヌ表記は、「愛努」で統一されているが、そもそも中国本土人向けとの台湾人向けとでアイヌ表記を変える必然性は全くない。
道内の他地区でこのようなところは、1箇所もない。
我家にとっても初めての経験であったが、中国高校生(漢族の「李」くん、16歳、四川省成都市出身)の積極的でありながら礼儀正しい態度に助けられて2日間を無事終了した。
中国高校生は日常会話程度の英語は話せるとのこと、受入家庭も簡単な英語か中国語が話せればいいとのことで受入れた。
私の語学の実情は、英語も中国語も「ほんの少し出来る」といったもの。妻の英語も、私よりは「多少まし」という程度。彼の話をどれだけ正確に理解したか、また、こちらの意図したことをどれだけ伝えられたかは、不明である。
彼の訪日9日間(5月13日〜21日)の日程表を見せてもらった。
初日、成田空港から入国。
2日目は皇居や外務省訪問など東京での公式行事。
3日目は全国4道県に分かれての活動となり、北海道へは42名が来る。羽田から釧路へ移動、丹頂鶴公園や市立博物館などの視察、地元ロータリークラブ主催の歓迎会。
4日目は地元高校との交流があり、夕方、阿寒湖入りをする。
日程表には、次のように記載されている。
5/16(星期五) 在阿寒湖愛奴民族村参観了解愛奴民族文化
17:30〜18:30 (講話、参観古式舞踏、参観生活記念館)【学習体験】
5日目は札幌へ移動。札幌の一般家庭へのホームステイ(寄宿的日本家庭見面)。
6日目は午前中でホームステイ終了。午後は小樽運河や市立博物館などの視察。
7日目は札幌の高校との交流。
8日目は大阪へ移動、大阪城などの視察。
9日目は帰国である。
彼は、我家に来る前日、阿寒湖のアイヌコタンに行ってきたとのことで、オンネチセでのアイヌ古式舞踊やアイヌ生活記念館(ポンチセ)などを観た話をしてくれた。
デジカメで丁寧にこれらを撮影していた。古式舞踊は動画撮影していた。
私は、この家には、アイヌの木彫り工芸品がたくさんあるよ、と言って、テーブルの上に置いてあるニマや壁や玄関に飾ってあるイタ、台所のメノコイタなどを紹介した。
また、秘蔵のマキリ15本やパスイについても披露し、簡単な解説を行った。
彼は訪日前に、それなりに日本文化についても自分で学習してきたようで、一般的な日本文化とは異なるデザインや雰囲気を持っていることは理解したようだった。
ついでにと思って、このブログを見せると、目を輝かしてWebアドレスをメモしていた。
積極的で、偏見がなく、非常に学習意欲が高い少年だった。中国にこのような少年が多いとすれば、当然の結果として、将来、日本は中国に負けると思った。
*食事のあと、お茶(抹茶)を振舞った。
茶道についても事前学習していたとのことで、うれしそうに初めての経験だと言っていた。
妻が茶筅でお茶を立てている様子もデジカメで動画撮影している。
本来、お茶は楽しく飲むことが最も大切である。(少なくとも利休の教えはそうである。)
お菓子(和生)の食べ方については特に教えず、お茶をいただくとき茶碗を持って感謝することと時計回りに2回ほどずらす(回す〜正面を避ける)ことだけ教え、味わってもらった。
彼は、おいしそうにお菓子を黒文字(楊枝)に刺してパクッと一口で食べて、茶碗を持って感謝し不器用そうにはあるが右に2回ほど回し、お茶を飲んで満足した様子で茶碗を置いた。
次に私がいただいたわけであるが、普通の動作を行うことになる。
お菓子は、黒文字で切って食べ、茶碗は三口半で飲み、飲み口を指で拭いて、茶碗を正面に戻すことになる。
私が飲み終えたあと、妻が彼に「もう一服いかがですか?」と聞くと、「もう一回飲みたい」とのことで、もう一服立てた。
驚いたのは、2回目の彼は、私の動作を正確に演じたことだ。
私は、この少年は、単に頭がいいだけでなく、他文化に対し敬意を払う心を持っていると感じた。
彼との交流は、他にも感心したことがいろいろあるが、ここでは触れない。
話は変わる。
私は彼が持っていた日程表4日目の『在阿寒湖愛奴民族村参観了解愛奴民族文化』の『愛奴民族』という表記が気になった。
漢字には、それぞれ意味がある。
『奴』という字は、「召使。金で買われた住みこみの使用人」の意味である。
アイヌの中国語表記として、私は適切でないと考える。
ご承知のとおり、「アイヌ」という言葉はアイヌ語で人間を表す単語の「音」であり、日本語で表記するときはカタカナでこのように表記する。
英語で表記するときは「AINU」になる。
中国人向けには、漢字(中国語)で表記することになるのだろうが、どのように表記するのが適切であろうか。
一般的な話として、中国語において、外国語など自国にない言葉を取り入れる方法は、2つある。意味で取り入れる場合と、音で取り入れる場合だ。
意味で取り入れる場合の例として、「ホットドック」→「熱狗」、「スーパーマーケット」→「超級市場」。
音で取り入れる場合(音訳)の例として、「サンドイッチ」→「三明治」がある。
音訳の場合も、意味としてイメージできるものにすることが多い。
例えば、「コカコーラ」→「可口可楽」(楽しくおいしい)、「ペプシコーラ」→「百事可楽」(大変おいしい)、「ビタミン」→「維他命」(彼や彼女の命を維持する)、「シャンプー」→「香波」(香りする波)などである。
前述のとおり、漢字には、それぞれ意味があるため、その命名によっては、トラブルになることも多い。
5年ほど前、中国でトヨタの車種名を巡る騒動があり、トヨタは迅速に対応した結果、かえって評価を高めた事件があった。
2003年11月末、トヨタは中国で新型RV車(日本名:プラド)を「覇道:バーダオ」として発売した。トヨタとしては、音訳+「困難と危険を恐れない」といったイメージを付けたつもりだったと思う。
そして、その広告は、轟然と進む車体「覇道」に対し、2体の中国の石の獅子が敬礼をしているものだった。
この広告は、中国の人々に怒りを引き起こした。中国の伝統文化では「石の獅子」は「正義と尊厳の象徴」である。
「覇道」という言葉は、日本語における意味よりももっと強く「横暴、無道」を意味する。
どうして、日本の「横暴、無道」に対し、中国の「正義と尊厳の象徴」が頭を下げるのか、というものだ。
これを「言いがかり」と思う人もいるだろうが、トヨタの反応は迅速だった。
すぐさま、中国語版HPに謝罪文を掲載し、車名は、単なる音訳の「普拉多:プラド」とした。
この事件を契機に、トヨタは、すべての車種の命名に単なる音訳を採用することに決めた。トヨタの最高級車LEXUS(レクサス)は、「凌志」から「雷克薩斯」に改称された。
民族名の漢字表記については、3週間ほど前の「週刊朝日」で次のような記事を読んだ。(記憶なので誤っている部分があるかも知れない。)
中国政府のチベット弾圧に対する覆面座談会で、日本にいるチベット人やウィグル人、モンゴル人などによるだった。
その中で、こういう発言があった。
中国人は、漢民族が最も優秀で、他の民族を低く見る伝統的傾向がある。
モンゴルに対しては、現在も「蒙古」という表記を使用している。
「蒙古」という漢字の意味は、「道理に暗く愚かであり、古い。」という意味であり、モンゴル人に対する侮辱である。
このような他民族への蔑視は、古来からあった。
「日本」について、最初に中国語で表されたものは、「魏志倭人伝」で有名な「倭」という表記だ。
「倭」という漢字の意味は、「背が曲がって背丈の低い小人」という意味であり、侮辱的な意味合いである。
これに対し、聖徳太子は、西暦607年、隋の煬帝に出した国書において、「倭王」という名称を使用せず、「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙(つつが)なきや・・・」という文章を出し、隋の皇帝の怒りをかった史実がある。
これは、自国を貶める表記は避けるという勇気ある行為だったと思う。
さて、アイヌの中国語表記についてであるが、実態がどのようになっているか、道内で発行されている観光パンフを調べてみた。
(JR札幌駅にある道と札幌市が共同運営している観光物産センターに置いてあったものを調べた。)
表記は、次の4種類だった。
*パンフ名及び発行者を記載
*パンフ名は、台湾人向け(繁体字)も中国本土人向け(簡体字)も、便宜上、日本の漢字で表記した。
@漢字ではなく「AINU」表記
●日本北海道観光(北海道観光連盟)
A「阿伊努族」または「阿伊努民族」
●札幌市阿伊努文化交流中心(札幌市)、●札幌観光指南(札幌市)、●登別棕熊牧場(登別温泉索道梶A●旭川市周辺地区指南(旭川市)、●歓迎光臨阿寒湖温泉(中国本土人向け:阿寒阿伊努工芸協同組合)、*私の記憶では、ニ風谷のアイヌ博物館もこの表記
B「愛努民族」
●北海道活動指南・北海道活動指南(洞爺湖サミット道民会議/国土交通省北海道運輸局)、●愛努民族博物館(アイヌ民族博物館)、●歓迎光臨阿寒湖温泉(台湾人向け:阿寒愛努工芸協同組合)、●阿寒湖愛努Cotan(阿寒愛努工芸協同組合)、●大自然宝庫北海道(北海道観光連盟)
C「愛奴族」
*観光パンフではなかったが、阿寒観光協会HP(作成:NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構)で中国本土人向けのHPで、次のようになっている。
阿寒的魅力>愛奴族部落
在阿寒湖温泉街上有36户130人左右的北海道最大的爱奴族部落。[寇坛]在爱奴语中是部落的意思。 主街的两侧是民族工艺品店,饮食店,在部落中央的[恩内齐塞]可以观看爱奴古典舞蹈,欣赏民族乐器口琴的演奏。
http://www.lake-akan.com/zh/ainu/index.html
*不思議なことに、阿寒観光協会HPの台湾人向けのHPでは、次のように「愛努民族」を使用している。
阿寒的魅力>愛努村落
阿寒湖溫泉街的總戶數有36戶、130人左右,是北海道最大的愛努民族的村子。「村落(KOTAN)」是愛努語「村子」的意思。 主要街道的兩側有許多民藝品店和飲食店,在村落(KOTAN)中央的「ONNECHISE」,可以觀賞愛努古式舞蹈,也可以聽到民族樂器--- MUKKURI的演奏。
http://www.lake-akan.com/zh-tw/ainu/index.html
<私の考え>
一般的な日中辞典での「アイヌ」の中国訳(表記)は、「阿伊努」である。これは単なる音訳であり、意味が付加されることがないからだと思う。
「阿伊努」がいいのか「愛努」(または「AINU」)がいいのかは、アイヌが決める事項であるが、統一した方がいいと思う。
「愛奴」の表記は、論外である。阿寒観光協会(作成:NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構)は、直ちに修正すべきである。
自国の民族を貶めることは避けるのは、全世界共通のあるべき認識だと思う。
自国や自分の住んでいる地域の文化や伝統を大切に考えていないことが、今回の「愛奴表記」の最大の要因だと思う。
今回の中国高校生の訪日事業(日中21世紀交流事業)の事務局は、NPO法人日中交流振興協会であるが、そこに情報提供した経緯を確認し、再発することがないようにすべきである。
*阿寒湖地区のアイヌ表記は、統一されていない。「愛奴」「阿伊努」「愛努」の3種類が並存している。
中国本土人向けのアイヌ表記は、阿寒観光協会HPでは「愛奴」、阿寒阿伊努工芸協同組合によるものでは「阿伊努」である。
台湾人向けのアイヌ表記は、「愛努」で統一されているが、そもそも中国本土人向けとの台湾人向けとでアイヌ表記を変える必然性は全くない。
道内の他地区でこのようなところは、1箇所もない。
2008/5/21 18:23
投稿者:大口のま
http://norabu-blog.okutano.net/
http://norabu-blog.okutano.net/
中国において、少数民族と言われているひとびとは漢族に対して複雑な気持ちを持っているひとが少なからずいます。そしてそんなひとたちは、おれから見ると自分の民族に誇りを持っているひとびとです。一方で、中国国内に於いての漢民族以外の民族への対応は、上記のように漢族からの視点が濃いものの、日本国に比べればましだとも思います(比べてもしょうがないのですが、程度を測るために)。
モンゴル自治区その他の「民族自治区」では駅等公共機関でその民族の文字を併用しています。
紙幣には漢族以外の民族の文字も使われていて(漢字よりごく小さいですが)、漢族以外の民族が民族衣装で絵描かれているものが複数あります(金額が小さいものに限られていますが)。
所謂一人っ子政策は漢族に限られ、他民族は複数の子を認められている場合が多い。
そして、パスポートがどうであったかは覚えていませんが、氏名住所など身元を表記する場面で「国籍」の他に「民族」という項目があります。
(すべて十年以上前の知識です)
長々とまとまらぬことを書きましたが、雲南省のサニ族のひとへアイヌのことを紹介したときのことを書いて終わりにいたします。
手縫いの刺繍を売って生活しているサニ族のおばさんに、アイヌの民族衣装の本を見せました。「アイヌ」という名前を字で書くことはありませんでしたが、口で言って説明した時、そのおばさんは嬉しそうに(そしてちょっと照れたように)笑って言いました。「アイヌ、のアイが、“愛”と同じ(発音)で、すごくいい!」
中国語での「愛」は純粋に愛情・愛することを意味しますので、そのおばさんは親近感のようなものをもってそんな感想を言ったのだと、ごく自然に感じました。
アイヌ民族の表記について、中国でも日本国でも統一した良い表記を決めることを、アイヌのひとびとが承諾した上で決めることを願います。
そして四川の李くんのように、他文化への敬意を忘れぬ関心を、多くのひとがもてるようになることを。
(拙ブログでのサニ族のひととのことを書いた記事、貼らせてください。
http://norabu-blog.okutano.net/?eid=379709)
モンゴル自治区その他の「民族自治区」では駅等公共機関でその民族の文字を併用しています。
紙幣には漢族以外の民族の文字も使われていて(漢字よりごく小さいですが)、漢族以外の民族が民族衣装で絵描かれているものが複数あります(金額が小さいものに限られていますが)。
所謂一人っ子政策は漢族に限られ、他民族は複数の子を認められている場合が多い。
そして、パスポートがどうであったかは覚えていませんが、氏名住所など身元を表記する場面で「国籍」の他に「民族」という項目があります。
(すべて十年以上前の知識です)
長々とまとまらぬことを書きましたが、雲南省のサニ族のひとへアイヌのことを紹介したときのことを書いて終わりにいたします。
手縫いの刺繍を売って生活しているサニ族のおばさんに、アイヌの民族衣装の本を見せました。「アイヌ」という名前を字で書くことはありませんでしたが、口で言って説明した時、そのおばさんは嬉しそうに(そしてちょっと照れたように)笑って言いました。「アイヌ、のアイが、“愛”と同じ(発音)で、すごくいい!」
中国語での「愛」は純粋に愛情・愛することを意味しますので、そのおばさんは親近感のようなものをもってそんな感想を言ったのだと、ごく自然に感じました。
アイヌ民族の表記について、中国でも日本国でも統一した良い表記を決めることを、アイヌのひとびとが承諾した上で決めることを願います。
そして四川の李くんのように、他文化への敬意を忘れぬ関心を、多くのひとがもてるようになることを。
(拙ブログでのサニ族のひととのことを書いた記事、貼らせてください。
http://norabu-blog.okutano.net/?eid=379709)
2008/5/21 18:21
こんにちは、大口のまです。
今回の記事を読んでいろいろと思い、コメントいたします。
もう十数年前になりますが、おれは北京に住んでいました。アイヌが好きだった当初のおれは、中国における漢族以外の民族の状況、暮らしぶりや文化はもちろん、ひとびとの認識がどのようなものか注意を向けていました。そのなかでよく覚えていることをいくつか書きます。
北京の高校で在学の生徒(漢族)と話している時、「我想中国人還是優秀的民族(わたしは、中国人はやっぱり優れた民族だと思う)」と無邪気に語る言葉は、単に自民族への誇りともとれる発言で、“日本人”に誇りをもてないおれとしては羨ましいと思えるくらいすがすがしかったのですが、“中国人”と言っているのが気になりました。「ni 説的中国人、就是漢族[口馬]?(中国人って、漢族のこと?)」と聞いたおれに、驚きを込めて「当然! 少数民族什ma 那箇・・・(もちろん! “少数民族”なんてあんなのは・・・)」との返事が返ってきました。
“中国人”の語を、イコール漢族の意味で使っていて疑問を持っていなかったために、おれの質問は相当意外だったようです。しかし、「あんなのは・・・」のあとの言葉を口ごもって言えなかった彼は、自分の言葉の言わんとしていることを、話つつ感じとって、言い続けられなかったようにも見えました。
大学の先生が少数民族のことを話していて“蒙古族”についてふれた時、モンゴルからの留学生(二十歳前後)が「蒙古族不是少数民族!(モンゴル族は少数民族じゃない!)」と叫んだことがありました。先生は「中国的蒙古族(中国におけるモンゴル族のことだ)」と笑って言い、モンゴルの学生は不満気でした。先生には、その学生の不満が理解できなかったようです。
雲南省の旅で長距離バスの運転手(漢族)と話していて、「日本是一箇民族ba !(日本は単一民族だろ!)と肯定的に言われたので、「不、有三箇民族。ainu族、yamato族、okinawa族(いや、三つの民族がいるよ。アイヌ族とヤマト族とオキナワ族だ)」と言ったのですが、おかしなことを言う奴だ、という表情をされて返事をしませんでした。
今回の記事を読んでいろいろと思い、コメントいたします。
もう十数年前になりますが、おれは北京に住んでいました。アイヌが好きだった当初のおれは、中国における漢族以外の民族の状況、暮らしぶりや文化はもちろん、ひとびとの認識がどのようなものか注意を向けていました。そのなかでよく覚えていることをいくつか書きます。
北京の高校で在学の生徒(漢族)と話している時、「我想中国人還是優秀的民族(わたしは、中国人はやっぱり優れた民族だと思う)」と無邪気に語る言葉は、単に自民族への誇りともとれる発言で、“日本人”に誇りをもてないおれとしては羨ましいと思えるくらいすがすがしかったのですが、“中国人”と言っているのが気になりました。「ni 説的中国人、就是漢族[口馬]?(中国人って、漢族のこと?)」と聞いたおれに、驚きを込めて「当然! 少数民族什ma 那箇・・・(もちろん! “少数民族”なんてあんなのは・・・)」との返事が返ってきました。
“中国人”の語を、イコール漢族の意味で使っていて疑問を持っていなかったために、おれの質問は相当意外だったようです。しかし、「あんなのは・・・」のあとの言葉を口ごもって言えなかった彼は、自分の言葉の言わんとしていることを、話つつ感じとって、言い続けられなかったようにも見えました。
大学の先生が少数民族のことを話していて“蒙古族”についてふれた時、モンゴルからの留学生(二十歳前後)が「蒙古族不是少数民族!(モンゴル族は少数民族じゃない!)」と叫んだことがありました。先生は「中国的蒙古族(中国におけるモンゴル族のことだ)」と笑って言い、モンゴルの学生は不満気でした。先生には、その学生の不満が理解できなかったようです。
雲南省の旅で長距離バスの運転手(漢族)と話していて、「日本是一箇民族ba !(日本は単一民族だろ!)と肯定的に言われたので、「不、有三箇民族。ainu族、yamato族、okinawa族(いや、三つの民族がいるよ。アイヌ族とヤマト族とオキナワ族だ)」と言ったのですが、おかしなことを言う奴だ、という表情をされて返事をしませんでした。
