2007/6/9  21:11

もう一つの日本文化(マキリ・その5)  文化・芸術

 以前、「マキリ・その4」で、「日高地方在住の工芸作家」ということで名前を公開しなかった方の作品を紹介したことがあった。
 その方の了承を得たので、作品ともどもご紹介する。
 日高地方「浦河町在住の[浦川太八]氏」である。

 私は、マキリ作りでは、浦川氏は、現在、最高の逸材だと思っている。(数名のアイヌ工芸関係者からも同様の同意見を聴いている。)
 私が、浦川氏のマキリ作り絶対的な信頼を置いている理由としては、次のことにある。

@浦川氏は狩猟者(鉄砲撃ち)でもあり、仕留めたエゾシカ、熊等の獲物を自作のマキ リで「血抜き」や「解体(皮剥ぎ等)」を行っており、どういうマキリが実用的であ るかを知り尽くした上で製作しているということである。
 具体的には、柄も鞘も「トペニ(イタヤカエデ)」という硬い木で作っている。(当 然、加工は難しく時間もかかる。)
 加工(彫刻)しやすい「ネシコ(クルミ)」などで作ると、エゾシカ一頭の解体にも 柄が持たない(割れてしまう)ことになる。

A浦川氏の工房を訪問したことが何度かあるが、勉強家である。昔のアイヌ工芸品に関 する資料が豊富にある。また、浦川氏が昔の工芸品の複製品(レプリカ)を制作する 時などは、それを所蔵している博物館まで行って詳細に確認するなど、ともかく、マ キリに関して、いい加減な仕事はしない方である。

B加工・彫刻などの技術などが、まさに「現在の名工」と呼ばれるのにふさわしいすば らしいものである。
 例えば、そのウロコ彫りの正確さなどを、一般の工芸品と比較すれば、誰でも理解で きるだろう。

 江戸時代末期、択捉(エトロフ)島に「シタエホリ(または、シタエーパレ)」と呼ばれる名工がいた。
 「北海道」の名付け親である松浦武四郎が『近世蝦夷人物誌』で、卓越した彫工と激賞したことで有名であるが、今回、浦川氏は、函館市立博物館にあるシタエホリのマキリのレプリカを制作してくれた。
 本物と見まごう出来だ。じっくり堪能してほしい。
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2007/7/22  21:19

投稿者:t260arima

大口のま 様

浦川太八さんのところに行ってまいりました。のまさんの書かれた文章を読んでもらい、感想をお聞きしました。

のまさんの書かれた「鹿の皮剥ぎ」については、そのとおりだと言っておりました。

あと、のまさんの描いたナイフの刃の形を見て、この形は「マキリ」というより「タシロ」だと言っていました。(タシロも棒状の枝に括りつけて、槍にして熊と戦います。)
そのため、のまさんの書いた柄の出っ張りがもっとY字になるようになると、棒状の枝のY字と組み合わさるようにして紐で固定でき、強固な槍になるとのことです。

あと、マキリにせよタシロにせよ、鹿の解体時には、胸の肋骨の軟骨部分を断割らなければならないので、柄は柔らかい木ではだめで、アイヌは、トペニ(イタヤカエデ) を使っていると言っていました。

参考になれば幸いです。

2007/6/14  14:47


ありがとうございます。浦川さんの見解のお返事を楽しみに待っています。

海と山とでずいぶん文化は違うでしょうね。海魚を捌くためのマキリがどのようなものか、機会をつくって見てみたいものです。

萱野茂さんの「アイヌ語辞典」では、マキリの語源についての見解はないのですが、マタンキ(matanki)は猟のことと書いてありました。(拙ブログに書き加えました。)東北にもアイヌ語は残っている、とよく聞きますが、いづれにせよお互いに影響しあってきた言葉・文化で、それを知ることで学び得ることも多いでしょうね。

2007/6/13  21:50

投稿者:t260arima

「大口のま」コメントありがとうございます。ブログも拝見しました。
マキリの柄の形については、ご指摘のとおり、ほとんどに反りが見られます。(私は持っていませんが、アイヌのマキリでも、海の魚を捌くためのマキリは反りがありません)
ただ、残念ながら私は、獣の皮剥ぎをしておらず、(山菜採りに使っているだけです)そのための反りかどうかはわかりません。
今度、浦川さんに会ったら、「大口のま」さんの意見を見てもらって返事を書くことにします。
それと「マキリ」というアイヌ語は、どうも日本語から来たもののようです。日本の影響が弱かった樺太アイヌなどは、「エピリケ」と呼んでいます。「削り取るもの」という意味だと聴いた記憶があります。上川(旭川)アイヌも同じような言葉(「イピリキリ?」)を使っていたはずです。

2007/6/11  22:31


こんばんは。
なんとも美しいマキリですね。見惚れてしまいます。

こちらで紹介しているマキリやタシロを観ているうちに、いろいろ思いついたり考えたりしたことがありまして、ナイフの鞘・柄作りに役立てようと思っています。むろん、一番良いのは浦川氏のような匠の製作を見学することなのでしょうが、いましばらくは叶わぬことなので・・・。

進行状況は遅々としていますが、考えたことを記事にまとめました。よろしかったら一読いただいてご意見うかがえれば嬉しいです。

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