2008/10/10  6:52

不明  分類なし

 甲府労働基準監督署は8月下旬、客待ちのタクシー内で急性心筋こうそくで死亡した甲府市のタクシー会社の男性運転手(当時62歳)について、「発症の原因は運転業務による蓄積疲労」として労災を認定した。“過労死”の背景には、低賃金のため長時間労働せざるを得ない運転手の現実がある。(前田遼太郎、矢島哉子)

食事すら車内で 男性の遺族を支援した「働くもののいのちと健康を守る山梨県センター」によると、男性は、主に2日連続で勤務して翌日休みを取る勤務サイクルだった。午前9時半ごろに家を出て、車内でコンビニ弁当の昼食を取る以外はほとんど休みなく働き、車庫に戻るのは午前2時過ぎ。帰宅は午前3時を回る。出勤2日目は、約4時間の睡眠で前日同様に働いていた。同センターは「決して特殊なケースではない」と主張する。

 男性が意識を失ったのは、JR甲府駅南口のタクシープール。常に数十台が順番待ちの列をつくる。客待ち時間は1時間半から2時間。プールに入れず、駐車違反にならないよう駅前ロータリーを回り続けているタクシーもある。

 「死のプール」と呼ぶ業界関係者もいる場所にタクシーが集まるのはなぜか。

 山梨は大都市に比べて客の絶対数が少ないため、タクシーを走らせながら客を探す「流し」は難しい。運転手の給料は主に歩合制のため、収入を増やすには人の集まる駅前や病院で多く乗せるしかない。1日に乗せられる回数はおのずと限られ、稼ぐには長時間勤務するしかない。

すでに飽和状態 関東運輸局によると、2006年度の県内タクシーの合計輸送客数は、長引く不況や運転代行業者の台頭などの影響で、20年前の半分の約750万人にまで低下。運送収入も約3割減った。ところがタクシー台数は1200台前後とほとんど変わっていない。

 その分、給与も下がった。運転手の労働組合「自交総連」の調べでは、06年度の県内運転手の平均年収は約260万円。40代の夫と妻、10代の子ども2人の生活保護世帯が得る生活保護基準額約270万円を下回る額だ。県内各社は昨年末、運賃値上げに踏み切ったが、燃料費の高騰などの影響で必ずしも運転手に還元されていないという。

 タクシーの供給過剰に歯止めをかけようと、国土交通省は7月、全国的に増車を規制する地域を拡大した。県内では甲府など5営業区域で増車が難しくなった。しかし、そもそも山梨では02年の規制緩和以降も台数は増えていない。すでに飽和状態で、増車しても利益につながらないと各社が判断したためとみられる。

 県内の運転手の平均年齢は07年に全国最高の61・4歳に達した。低賃金で成り手が少なく、退職後の年金受給者が就くケースが増えている。

 中学生の長男を持つ甲府市の男性運転手(47)は「2人目の子どもが欲しいが、月20万がやっとの給料では共働きでも難しい。観光客も少ないし、景気が良くなってくれないとどうしようもない」と嘆いていた。
(2008年10月10日 読売新聞)

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