2008/5/19  10:54

さすらいの男(19)  さすらいの男

サラが目を閉じた。

顔が近づいていく。

そうすることが自然なように。

そして…

「! 誰だ?!」
暗闇から誰か近づいてくる。
サラがはっとして身を固くする。
「やあ、お楽しみのところを邪魔しちゃったかな?」
嫌に派手な格好をした男が近づいてきた。
「アトマーレ!」
こいつがアトマーレか。
軟弱そうな男だ。
「やあ、サラ君。君にはしてやられたね。
 まさかあんなことをするなんて。
 そんな野蛮な女性だとは思わなかったよ」
「いかに私を見ていないか分かる言葉ね。
 そんなんで私に結婚なんか申し込むからいけないのよ」
「君という人は…。
 レディーとしての教育が足りていないようだね」
「人間としては十分よ」
「分かっているだろう?
 君に求められているのはそんなものじゃないよ。
 僕のパートナーにふさわしいと思ったのだが、
 本当に、とんだ見当違いだね。
 おまけにあんな恥までかかされてしまって、
 どうやって償ってもらおうか」
良くペラペラ喋る男だ。
「どうせすでに傷物になっているし、
 それなら僕としても心が痛まないな。
 というわけで、君にはさらに汚れてもらうよ」
気付けば数人の男達が周りを囲っていた。
このおしゃべりは気を逸らすための罠か?!
単なるおしゃべりにしか見えんが…。
「彼氏は目の前で殺されて、
 君自身は複数の男に汚されて、
 もう帰ることもできなくなる。
 というか帰ってこられても困るがね。
 折角だから、みなさんに差し上げてしまおうかな?
 君一人いなくなっても大丈夫だし」
サラの顔が青ざめた。
ここまでは予想してなかったようだ。
サラもまだまだ甘い。
このくらいは予想範囲内だ…。

…なんの?

俺は何か予想していたっけ?

その時、頭の奥がズキッと痛んだ。



この記事へのトラックバックURL

RSS1.0