2008/5/21  22:39

さすらいの男(21)  さすらいの男

体中が熱い。
この感覚を俺は知っている…。
こうやって興奮して、誰かと戦っていた…。
記憶が、本を開くようにゆっくりと覚醒していく。

周りの男達が動き始めた。
サラを後ろに庇い、身構える。
囲まれて、ピンチに陥る。
それは日常茶飯事だった。
そして、…
そして、…
何かが足りない…
後ろには…
後ろには…

男達が一斉に襲い掛かってきた。
「きゃあ!」
サラの悲鳴を聞きながら俺の体は当たり前のように軽やかに動く。
覚えている。
戦い方を。
拳が、足が、決められているかの様に弧を描く。
いつしか密やかに笑みを浮かべていた。
この興奮の中で俺は生きてきたのだ。
生きるか死ぬか。
それが俺の世界!

瞬間、勝敗は決まっていた。
確実に急所を決めた男達が転がっている。
死んではいないはずだ。
殺すことはやめたから。
あのときから。
あのとき?
あのとき…
あ・の・と・き…

大切な何かが足りない…
それは…
それは…

「ぐああ!」

頭に激痛が走った。



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