2008/8/3  21:43

シュトックハウゼン『ヘリコプター四重奏』のメイキング  音楽

 現代音楽のドキュメンタリーを多くリリースしているMedici artsから、“KARLHEINZ STOCKHAUSEN HELIOPTER STRING QUARTET”というDVDが出た。

 シュトックハウゼン晩年の話題作『ヘリコプター弦楽四重奏曲』初演までのメイキング・ドキュメンタリーだ。面白くないはずがない。監督はフランク・シェファー。
 各種情報から、この曲が4台のヘリに分乗した4人の演奏家の演奏を、上空から絵と音を観客に送って聞かせるという、突飛な作品だとは知っていた。ただ、それがどんなものかあまりイメージできなかったのだけど、これで具体的にどんな作品なのかがよくわかった。
 もちろん、こればかりは実演に接しないことには、「天上から降る音楽」をどのように体感できるのか、わかりようがないのだけど。

 だが、このフィルムでじっくり見ることができる、シュトックハウゼンとアルディッティ四重奏団の練習は実にエネルギッシュで、こちらも力が入る。
 特に、シュトックハウゼンの明晰な指示に恐れ入る。どう演奏すべきか、一切迷うことがない。練習しながら、次々と判断を下して音楽を修正し、どんどん指示を与えていく。
 「ここはどうしようか」と迷う場面などひとつもなく、演奏者に意見を聞くこともない。そのかわり、演奏者が独自の解釈で奏でたフレーズがベターと感じたなら、直ちにそれを取り入れる。今まさに創造されつつある瞬間を見るのは、やはりスリリングだ。

 シュトックハウゼンはこの特異な音楽の着想を、夢の中でヘリコプターに乗り込む演奏者の姿を見たことから得たと言う。要するに「お告げ」なんだ。
 その本番のために、実に入念な準備をしていることにも感心する。4人の演奏家がそれぞれヘリに乗り込み、実際に演奏するに十分な空間があるか(特にチェロ!)、機内の演奏はちゃんとマイクでひろわれるのか(ヘリの爆音ばかりで楽器の音は聴こえなくならないか)など、すべてリハーサルをする。きっとものすごいお金がかかったに違いない。

 4重奏の各声部は、それぞれ4つの色で譜面が書かれている。その4つの色は音の高低を示す直線になっており、その直線が上になったり下になったりしている。そんなスコアに、4機並んだヘリが上下しつつこちらに向かってくる様をイメージしてしまう。
 だから、このフィルムでも、4機並んだヘリを1フレームでとらえたショットが一つでもあれば、よかったんだが、と実に残念に思った。
 しかし、それをやるにはもう1機撮影カメラを搭載したヘリが必要で、それはきっと予算オーバー。監督も痛恨だったのではないか。興味のつきない77分。
 あともう一つ、いわゆる「美声」ではないが、シュトックハウゼンがとてもいい声をしていることにも感動。

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