2008/4/28 1:02
下水道詐欺にあいました RECOMMENDATION
みなさん。聞いてください。お疲れで戸建てに一人暮しの方は特に。
人には心に隙が生まれることがあると、あらためてご注意を喚起したい。
まさか、こんな見え透いた穴に自分が落ちてしまうとは、思いませんでした。
顛末をお話ししましょう。
そして、みなさん、心に鍵を。
絶対に、絶対に、知らない人を家に入れてはいけません。
それは、日曜の10時頃だった。わたしは大変疲れていたが、一週間分の朝食用のスープをなんとか仕込んで、少し横になろうと思い、家に鍵をかけ、警備会社の「警備依頼」のボタンを押すところだった。そこへ、一人の男が呼び鈴を押してやって来た。大工さんや電気屋さんのような作業服を着ている。
「この付近で下水の工事があります。つきましては、お宅の下水道にも影響があると困りますので、検査させてください。」
これだけで、十分おかしい。インターフォンで断れば良かったのだ。
しかし、もう休もう、休みたいと思っていたわたしは、判断力が鈍っていた。
「はい、どうぞ。」
男はずけずけ入ってきた。まず、下水道をみせてくれというから、裏木戸から、案内して、下水管の入っているところに案内した。我が家はトイレが3つあったが、母が亡くなったときに、ひとつ使わなくしてしまった。もちろん、使おうと思えば使えるのだが、そこは、今は使っていない。それでもあと2つトイレがある。その後父が亡くなりひとりになったが、2階の寝室のトイレは便利なのでそのままにしてある。すべて同じ下水につながっている。
「ここをイヌバシリというのですがね。」
下水の通っている場所を指して言う。専門用語である。ここであやしいと思わなかった自分が恥ずかしい。
「ここにひびがあるのですよ。どうも勾配の具合で、使っていないトイレの方に汚物が上がっていて、オリがたまっているようです。」
ここもおかしい。勾配など、見るだけでわかるものか。
「はあ。」
「わたくしどもなら、1時間ですっかり問題ないように、きれいに処理させて頂きます。3万8千円のところ、2万8千円でいかがでしょう。」
「あの、わたしは、以前、きちんとした業者に『これで20年は大丈夫』という洗浄作業をしてもらたのですが。」
「いつのことですか。」
「2年前です。」
「それはうまくいってませんね。いかがですか。たった1時間ですみますし。」
以前の業者は、たっぷり半日かけて作業していったのだ。ここでもおかしいと思えなかった自分がふがいない。なにしろ水回りのことというのは、とてもこわい。
なんとわたしは、あっさり承諾してしまった。
男は3連の契約書を出し、名前や住所などを書かせ、判を押させた。そうしている間に、なぜか、もう一人男がいつの間にか来ている。「あ、わたし別の現場から来ました。」そういって、その人が、契約書に、事業所のサインをして、判を押した。そして、すぐ作業するという。そうしている間に、「もう一人、近くの現場で作業している者を呼びますから。」一番最初に来た男が言うと、携帯で電話をした。するとほどなくもう一人あらわれた。
実際に、ポンプのようなもので、作業は始まった。そうすると、一人はわたしから離れない。どうも今から思うと監視されていたのではないかと思われる。なにしろ、以前の業者は一人で全てをきっちりこなせたのだった。3人も必要ないのだ。
作業の合間に最初の男が入ってきては、残っていた男とわたしに話しかける。どんな仕事をしているのだとか、家のあちこちを「ほめる」。うちなど、築60年のボロ屋で、建て増しに建て増しを重ねたろくな家ではない。母がお茶をしていたので、茶室仕様にしていた部屋をほめたり、天井のはりが桜でできていたりとか、旧家だったら、もっとすごいことがたくさんあるにちがいなく、うちのは全て中途半端な造りで、美学のかけらもないのに、である。
そうこうしているうちに、作業は終わった。
「下水の洗浄作業で、下水管の所々が破損しているといけません。床下に入れる所はありませんか。」
「畳部屋があるので、そこから入ってください。」
「あ、猫ちゃんをみはっていてくださいね。」
ここで猫をケージにいれて、男たちを見張るべきだった。わたしは、猫を見張ってしまったのだ。
「こんなこと、ありえないんですがね。」
ありえないことは、ありえない。世界の真理である。
「はあ。」
「リビングの床下が、黒カビだらけで、水滴がたれているのですよ。どうもリフォームしたときに、縁の下をふさいでしまったようですね。」
わたしは、ここで、目が覚めてきた。縁の下をふさぐだって?
「それから、こんなことはいいたくないんですがね、『シロアリが上っているあとがあるんです』。」
げー。やべー。やられた。やっと完璧に目が覚める、全く馬鹿なわたし。
「それで、直すとすると、いくらかかるんですか。」
顔色を変えずに、ためしに聞いてみた。
「ちょうどいいことに、この近くで、新築している物件があって、そこに資材がありますので、そこの工事をとめて、こちらを優先させて頂きます。」
そんなに都合いい話があるものか!
「それで、入り口から、リビングまで7坪半ですね。」
おいおい、測ってみたのかよ。
「特別に安くさせて頂いて、1坪あたり、12万でどうでしょう。」
大金である。わたしは受話器を取った。
「姉に相談させてください。」
周囲の空気の色がさっと変わった。
「もしもし、おねえちゃん。実はこういうわけで、工事したいって言うんだけど。」
「お金を払って今すぐ追い出しなさい。」
はい。
「みなさん、申し訳ありませんけれど、今回は、下水だけで結構です。後は家族で話し合ってみますから。」
しっかり領収書をもらって、お引き取り願った。
すぐに姉から電話が来た。
「家に鍵かけて、警備会社の警備依頼のボタンを押して。」
「今押した。こわかったよう。」
「もう、2万円かそこらで済んで良かったよ。典型的な詐欺だよ。」
わたしは、もうぼろぼろ泣いている。
ニュースは仕事上、毎日隅から隅までチェックしている。下水道詐欺で、殺された人の事件は山ほど読んできたはずだ。それなのに、全部忘れてしまっていた。なんという不覚。
「今日は、月謝払ったと思って、もう寝なさい。全部、なかったことにするんだよ。」と姉。
「うん、そうするよ。猫と一緒にずっといるよ。一歩も外に出ない。」
なぜ、ひっかかったのか。
まず、自分の体調が悪すぎた。
難しいことが考えられない、隙だらけの精神状態だったのだ。
そして、この人たちの人当たりの良さと、話題の広さである。とにかく、とてもいい人なのである。そして、よく考えられた段取り。ストーリー通りにどんどん話を停滞させることなく、進めていく。最初は、出しやすいような金額。なにしろ、先にやった工事は、自治体に紹介してもらった、きちんとした業者だったのだが、このほどの金額よりもっと高かった。しかし「20年は大丈夫です。」という話をしていた。彼の言うことをとことん信じれば良かった。
とにかく、教訓として、こちらから頼んでいない業者は絶対敷地に入れてはいけません。そして、しつこかったら「弟が(あるいは兄が)、下水関係(あるいは建築関係)の仕事をしてますので、見てもらいます」ということ。精神科の医者に聞いたところ、これが一番効くそうだ。
とにかく、みなさん、疲れていたり、気が弱っているときはくれぐれも注意してください。そして、土木工事は、一人で決断してはいけません。絶対誰かに相談してからにしましょう。1日や2日で家は崩れたりしません。大災害でもない限り。
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