2006/7/26  2:59

武満徹  音楽
 武満徹夫人の武満浅香の証言集『作曲家・武満徹との日々を語る』(小学館)を、数日前に読み終えた。10年前に亡くなった作曲家の日常や青春時代のありようがわかって、とても楽しい本だった。月並みだが、戦後すぐの、武満もその一人であった、瀧口修造サークルの親密にして冒険的な活動は決定的な重要性をもっていたのだな、と思う。また、その書斎の机の上に並べられた鉛筆の削り方の端正さ(先日まで開催されていた「武満徹/Visions in Time」展(於東京オペラシティアートギャラリー)で見ることが出来た)が象徴するような、自分の仕事を一つ一つ丁寧にこなしていく姿には、身を引き締まらせるものがある。ついでに、展覧会の同名のカタログを斜め読みするが、武満の文章は、楽曲に劣らず瑞々しい。川田順造・山田宏一・武満徹を、現代の三名文家と読んだのは誰だっただろうか。今から、昨日890円(!)で購入した、(「ソリチュード・ソノール」を含む)『武満徹・鳥は星形の庭に降りる 他』(ボーンマス交響楽団、指揮マリン・オールソップ:Naxos, 8.557760J)を聴く。
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2006/7/25  19:40

ゆらゆら帝国『つぎの夜へ』  音楽
 ロックへの関心を失いかけ、固定されたミュージシャンリストの大人買いや現代音楽に走りそうになったのを、正しい道へ引き戻してくれたのは、90年代に私の耳にもその名が届くことになった内外を問わない一連のミュージシャン達だった。そのトップに位置するゆらゆら帝国の新譜を繰り返し聴いている。近田春夫の簡潔な批評(『週刊文春』7月20日号、「気持ちよくて凄みが利いているゆらゆら帝国のサイケな世界」)に加えることは殆どない。
 先月、V∞redomsとのジョイントを野音の特等席で聴くことが出来たが、夕闇迫る中の静かな熱狂が忘れられない。
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[何ということか、題名に誤りがあることを友人から指摘されたので訂正。2006年12月9日付記]

2006/7/11  3:22

小林信彦『うらなり』  
 少し恥ずかしいが告白すれば、新刊が出るたびに、何とかその日の内に読み切ってしまう作家が何人かいる。大西巨人、大江健三郎、桐野夏生、町田康、中原昌也、東海林さだお、そして小林信彦である。我ながらあまりにオーソドックスで恥ずかしいが仕方がない。(このリストに、以前は、船戸与一が入っていたが、少し前に脱落した。いつからか、縮小再生産の傾向が著しい。但し、これは、福田和也の評価に従ったものではない。また、矢作俊彦はこのリストの候補者に入りそうだったけれど、『あ・じゃ・ぱん』で、ハワード・「フォ」ークスという誤植を見つけて以来、昇格しないでいる。この人が、こんな誤植を見逃しているとなると、金井美恵子がハンス・「ヴェ」ルメールと書いてしまう――勿論、金井美恵子は、そんな誤植を残すことはないだろう――といったことと同じ衝撃を受けてしまう。というよりも、矢作俊彦は、ついつい・敢えてそのようなミスを犯す人のような気がする。)
 小林信彦の新刊『うらなり』は、一気に読んでしまった。彼の一連の<極私的東京史>やフィクションの<東京三部作>にはただただ頭を垂れるしかない田舎者の私にとって、<世間知らず>=坊ちゃんの世界を<うらなり>の側から「も」描き、<マドンナ>の後日談にそれこそ人生の悲哀と残酷さを滑り込ませるこの作物はとても魅力的だ。そして、『en-taxi』第14号掲載の批評、芝山幹郎「動く後日譚」を読んで、その仕掛けを十分に読み取れない素人の読みの未熟さを思い知らされた。(小説的「現在」が1934年であるところに鍵があるのだった。)
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2006/7/3  23:58

デリダ、ストア、エトセトラ  哲学
 ついでに一挙に、在庫放出。こちらはいずれもまだまだ全部に目を通してすらいない。
 デリダ関係で、次の二つ。Jacob Rogozinski, Faire part. Cryptes de Derrida, Paris, Editions Lignes & Manifestes, 2005; Rue Descartes, 48. Salut à Jacques Derrida, 2005. Rogozinski は、前々から少し注目している哲学者。近刊に、La fêlure de la pensée という題名の著作の刊行が予告されているが、こちらも気になる。遅まきながら手にした後者には、既に亡くなったリクールの短いメッセージが収められている他、デカルト研究者として知られている Denis Kambouchner が独特な文体のエッセー« Jupiter parmi nous »を寄せている。
 他に、ストア派の研究論文集 Les Stoïciens, sous la direction de Gilbert Romeyer Dherbey et réunies et éditées par Jean-Baptiste Gourinat, Paris, Vrin, 2005、そして、待望のエミール・ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論(附:江川隆男「出来事と自然哲学――非歴史性のストア主義について」)』江川訳、月曜社、が手に入る。さらには、小泉義之氏の二冊、檜垣立哉氏の新書、そして、村上勝三氏の待望の『新デカルト的省察』(知泉書館)。頂いたものだけでも、本格的に取り上げるべき新刊のラッシュである。人の仕事の紹介ばかりしているわけにも行かないが、ともあれ「この項続く」として、今日は打ち切る。

2006/7/3  23:23

Gilbert Simondon  哲学
 ドゥルーズに決定的な影響を与えていることもあって、近年一部では注目を集めている個体化と技術の哲学者Gilbert Simondonの著作が相次いで刊行・復刊された。
 まずは、これまで分冊で刊行されていたその博士論文の全体が、一纏まりのものとして刊行された(L'individuation à la lumière des notions de forme et d'information, Grenoble, Editions Jérôme Millon, 2005.)。おまけに、160頁にも亘る「個体の概念の歴史」というタレスからヘルダーリンにまで及ぶ未刊行の概念史記述まで附録に付いている。
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 次いで、技術論関係の講義録・講演集 L'invention dans les techniques. Cours et conférences, édition établie et présentée par Jean-Yves Chateau, Paris, Seuil, 2005.さらに、知覚論関係の講義録 Cours sur la perception (1964-1965), Chatou, Les Editions de la Transparence, 2006.これに、2004年に刊行された Deux leçons sur l'animal et l'homme, Paris, Ellipses を加えると、シモンドン哲学の全体像を捉える基礎資料が整ったことになる。
 冗長な記述の多いシモンドンのテクストを読み込むにはかなりの忍耐力がいるし、本邦では既に廣瀬浩司による優れた論文が数本あるから、今さらこれらの著作を取り上げ直すには覚悟がいるが、読解のいい機会ではある。

2006/7/3  22:43

スピノザ関係幾つか  哲学
 ブログはちょっと気を抜くと、お休みしてしまう、ということがよくわかった一月だった。リハビリを兼ねて、新着図書紹介。まずはスピノザ関係。
 Saverio Ansaldi, Nature et puissance. Giordano Bruno et Spinoza, Paris, Editions Kimé, 2006. 前著 Spinoza et le baroque. Infini, désir, multitude, Paris, Editions Kimé, 2001 で、ドゥルーズ(や中沢新一)の向こうを張って、バロックの哲学者スピノザという刺激的な仕事を提出した著者による第二弾。ブルーノとスピノザ、という誰もが知りたいと思いつつ、なかなか手を出せないでいる主題を書名としているので到着を期待して待ったが、題名にはやや偽りありで、ルター/ブルーノ論から始まってシェリング/スピノザ論に終わる論文集。スピノザ/ブルーノ論は20頁弱の第6論文のみ。だが、ネグリ/ハートのマルチチュード論も、このあたりから考えた方がいいと思わせる、<力能>概念にフォーカスを集めた好著ではある。
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 もう一つは、Lectures de Spinoza, sous la direction de Pierre-François Moreau et Charles Ramond, Paris, Ellipses, 2006. 入門書・教科書の出版社からの刊行なので、こちらは期待しないでいたが、大部の著作(300頁)。Steenbakkers によるスピノザのバイオグラフィの提示から始まり、各著作の概要、スピノザ主義の受容史まで、蘭・仏・伊の研究者を集めての、かなり充実した入門書。
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 ついでにもう一つ。デカルトの医学・生理学関係の校訂版を2000年に出版した著者による、デカルトの医学論に関する博士論文が、浩瀚な研究書として刊行された。(Vincent Aucante, La philosophie médicale de Descartes, Paris, PUF, 2006.マリオンの序文付き。)この分野の著作を評価する力量はないので、ざっと眺めただけだが、基本図書になりそう。但し、形而上学に関する結論はたった6頁なので、こちらも表題にはやや偽りありか。
 
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