2006/10/27  4:30

夜の訪問者  分類なし

 夜中の10時30分ころ、事務所のドアを物凄い音でガンガンたたく人がいた。
 急患か? しかし、私のこのスマートでスタイリッシュな事務所には、もうそういう非常識な相談者は来ないはずだった。そういうお客は「宮古島ひまわり基金法律事務所」に行ってもらうことにしていたからである(中村先生、失礼!)。
 ところが、ドアの外にいらしたのは、私が日頃敬愛してやまない大先輩、沖縄本島で大事務所を構えておられるA弁護士だった。しかしA先生はすでに相当酔っ払っているようであった。
 「先生。どうしたんですか。なぜ、こんな時間に?」
 私は、応接の豹柄ソファに、先生を招じ入れようとした。
 しかし
 「ああ、君。ちょうど今、君の大学の先輩でもあるB弁護士と宮古に来てたんだよ。B弁護士、知ってるだろ? 今、市内のスナックで飲んでいるんだが、どうかね、君も付き合わんかね。忙しいかね。思い立って呼びにきたんだよ。」
 ・・・しかし、夜こんな時間に法律事務所で暇をつぶしている弁護士なんてどこを探してもいないだろう。忙しいからこうやって残って仕事してんじゃないですか!
 特に、今夜はどうしても仕上げなきゃならない書面が3通もあって、今それに四苦八苦していたところなんですよ。いくらなんでもA先生、非常識じゃないですか。前もって言ってくれてりゃ私もそのつもりでいたのに!!
 ・・・と言おうかとも思ったが、そこは相手が大先輩。しかも、実を言うと、私は事務所で仕事をしていたんじゃなくて、なにかブログのネタでもないかと、40インチ大画面で韓流ドラマのDVDを見ながらボケッとしていたところだったのだ。
 だから暇は暇なのだが、この時間から酒を飲みに行く気力がどうしても湧かない。私は嘘をつくことにした。
 「先生。お誘いいただきながら、本当に申し訳ないのですが、実は、今どうしても手が離せない仕事中でして。今晩中に仕上げなければならない起案をしていた最中なんですよ。実のところ最近ちょっとパニック状態になりかけてまして・・・。大変残念なんですが、今夜ばかりはご遠慮させてくださ・・・」
 「いやぁ、いやぁ、いいじゃないの。仕事なんて。付き合いなさいよ。B先生も来てるんだからさ。せっかくだからさ!! タクシーも待たせてるんだ。」
 有無を言わさぬとはこのことである。私は一瞬警察を呼ぼうかとも思ったが、しょうがない。「では、とにかくお店にはお邪魔して、私はごあいさつだけで失礼しますから。ホント、ごあいさつだけですから。」と結局、スナックに同行することになってしまった。
 ところが、A先生は相当酔っているため、そのスナックの名前をどうしてもタクシー運転手に言えなかった。私は、A先生が運転手に「ビックル」だとか「シャックリ」だとか言っているのを聞いていて市内でも有名な「ツィンクル」に行こうとしているのだな、とウスウス思ったのだが、「先生、これじゃぁ今晩はおあきらめいただくしかなさそうですよ。私もB先生にお目にかかれず残念ですが、とりあえずホテルまでお送りしますから。」と、A弁護士を宿泊先のホテルまで送り、そのまま事務所に帰ってきた次第だ。ある意味、うまくいったと言えなくもない。
 しかし、こういったゴタゴタで、小一時間浪費したうえに、なぜか結局2000円くらいのタクシー代を負担させられるハメになった。
 で、このことをブログにつづることにして、今こうやって完成したわけである。
 本当に、毎日暇で暇で、笑いが止まらないです。

2006/10/26  0:23

ポストが消えた!  分類なし

 郵政民営化へのあおりかどうか知らないが、私がよく利用していた郵便ポストが廃止された。
 ひとつのポストがなくなると郵便を出すのがどんなに面倒になるかということを、おそらく都会に住んでいる人はわからないだろう。今、私の邸宅か事務所のまん前にポストを作ってください、金ならいくらでも出すから・・・と郵政公社にお願いしているところだが、成算は乏しい。
 ところで、以前公設事務所(平良ひまわり基金法律事務所)に勤めていたとき、お客さんからいただく郵便物にはいくつかの共通点があることに気付いた。
 ひとつは、こちらで同封した返信用葉書や封筒による返信であるが、そのあらかじめ記入された私の宛名に「様」とか「殿」を書き加えて返送されてくる郵便がまずないということ。
 次に、たとえば何かの書類を送ってください、とお願いしてお客さんから送ってもらった郵便物に、当の書類のほかひとことでも送り状とか添え状が入っていたことがほとんどないということ。
 三番目に、これはお客さんからいただく郵便物というわけではないが、お客さんが「こんな郵便が来てたから見てちょうだい。」と言って持ってきた郵便物の封が、きちんとハサミとかで開けられていたことが絶対にないということ。つまり、そのすべてが乱雑に手で破られ、開封されているということ・・・である。
 こういった事実から、私は、弁護士過疎地における法律事務所の顧客が、郵便物を送り、受け取るという行為、または郵便物それ自体を敬遠し、もしくはこれに対し、いかに怒りを抱き、あるいは日々恐れおののいているかという事実を知るのである。
 弁護士過疎地の郵便ポストには人の世のありとあらゆる恐怖が詰まっているのだ。

★ 写真は、日本郵政公社宮古支社のイメージキャラクターに結局採用されなかったいのししキューピーこと「蘭」ちゃん。海がめよ、ペンギンよ、お前らの時代は終わったのだ!
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2006/10/24  21:49

大阪で生まれた女  分類なし

 和歌山県のある海辺の老人ホームに、私の古いお客さんである老女が入所されている。
 その方は、たいへんな資産家。・・・案の定、周辺の親族らがこの方の遺すであろう遺産に目をつけ、互いに権謀術策を弄しあっているようだった。なお、彼女自身は生涯独身で、今は兄弟もお子さんもおられない。
 そのような周囲の気配に耐えられなくなった老女からの、私に全財産の管理を委任したい、また、遺言も書いておきたい・・・との希望であった。
 むろん、ご要望についてはお手伝いすることにし、また、念のため「成年後見契約」という、自分が認知症などで意思疎通ができなくなったとき「後見人」(財産管理などを担当する目付け役)をだれにするかなど、予め決めておく契約も手配することにした。
 わたしに言わせれば、だれにも後ろ指さされることなくこれまで立派に生きてきて、苦労して多額の蓄財もとげた彼女なのだが、人生の最晩年、からだが不自由になっただけではなく、人間不信におちいり、こんな俺なんかに全財産の管理を委ねようという。
 わたしは、なんとなく寂しい思いを引きずりながら、今、和歌山から宮古島に帰ってきたところだ。
 宮古島もさすがに10月下旬。いくらか涼しくなってきた。

2006/10/18  0:10

社会科見学  分類なし

 久々に那覇地裁で刑事事件があった。
 特別の事件ではないのに、傍聴席がほぼ満員。なぜかというと、社会科見学の児童・学生たちがたくさん引率されて来たからである。
 裁判が終わった後、裁判長が、「検察官と弁護人もちょっと時間がありませんか。もし時間があれば、せっかく見学に来たみなさんと質疑応答をしたいので、残っていただけるとありがたいのですが。」と。
 もちろん承諾し、そのまま法廷で生徒らの質問に答えるなどした。
 ある生徒が、「法律家のやりがいはなんですか。」と質問した。
 裁判官が「最終的に自分が決断してものごとを決められることです。」、検察官が「社会正義の実現に力を尽くせることです。」などと答えたような気がするが・・・実はあまりよく覚えていない。
 なぜなら、次に自分はどう答えればいいかうろたえてしまい、人の答えを聞いている余裕などなかったからだ。
 だが、本当なら、私は「お客様にお金をいただくことです。」と答えたいところだった。実際にそーなんだから。
お金をいただくということは、弁護士として認めてもらい、仕事を評価されることである。そして、それは、感謝の気持ちを口先だけではなくて、きちんとした形で示していただくということだからだ。・・・この実感自体は、全然うしろめたいものとは思わない。
だが、しかし、そのことを今この子供たちの前で言うのはなぜかはばかられた。
そこで、私はこう言った。
「『弁護士のやりがい』ですが、それはね、実はここだけの話なんですが・・・」
・・・オッと!。「ここだけの話」をブログで再現するわけにはいかない。今日はここまでにさせていただこう。・・・それにしても、引率の先生は伊東美咲に実によく似ていた。
★ 写真は、社会科見学の後、残光の那覇市内国際通りを闊歩する生徒達
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2006/10/15  23:28

こんな深夜に・・・  分類なし

 日曜のこんな夜おそくに、この下らないブログを見てくださる方がいる・・・。
 しかし『丹波1号』さん。あなたは、実は、私が若いとき秘書としておつかえした土井孝子先生でしょう?
 そうです。先生は、豊岡の”播磨焼き”がすごくお好きでしたよね。幸い豊岡の近くの柏原というところに私が懇意にしている弁護士さんがおられますので、その弁護士さんにお願いして、今度先生にも播磨焼きを送っていただくことにします!どうか楽しみになさっていてください。
 そして、『北東北の小娘さん』。あなたが誰かも私はわかっています!
 そう。昔、三橋未知也先生の教室でいっしょに津軽三味線を習った岸知絵子さんですよね!
岸さん。あなたも私と同様、もう60歳に手が届くはずだ。それなのに、「小娘」だなんて。あいかわらず冗談きついですね。
 岸さん。あなたにも宮古島の『ぶんみゃぁ』でマサボウの島唄を聞かせてあげたいですヨ。彼の三線(サンシン)はなかなかのものですからね。
 ぜひ、二度でも三度でも、お孫さん達を連れて当地をお訪ねください! お待ちしております。
 

2006/10/14  22:40

陳述書  分類なし

 あまりに暇なので、たまには真面目な話題を提供したい。
 「陳述書」とは何かといえば、要するに作文であって、事件の関係者、証人などの言いたいことを作文にまとめたものである。
 離婚事件であれば、夫に暴力をふるわれ、浮気された赤裸々な体験、自己破産であれば、自分が破産状態に陥ってしまった恥ずかしい過去、損害賠償の裁判であれば、事故が起きたときの目撃譚、自分が被害者ならその被害感情などなど。
 そういったことを書き連ねた陳述書を裁判所に証拠として提出するわけだが、もともとは、これは証人尋問を効率的に行うための補助道具として出現し、利用されてきたもののように思う。つまり、こちらが証人尋問で証人に言わせたいことを予め陳述書に作成しておき、実際の証人尋問の場では、「あなたの言いたいことはここに書いてありますね。」とこの内容を援用して終わる。こうして後は相手方の反対尋問を中心に証人尋問を行い、尋問時間の節約を行うというわけである。
 ところが、最近の裁判では、証人尋問の申出をしようとしても、裁判長が「まず陳述書を出してください。」、さては、陳述書を出したら出したで、「陳述書があるから証人尋問する必要ないじゃないですか。」とか言って、証人尋問が全面的にカットされてしまう場合が多いように思う。
 こうして、証人尋問の補助道具だったものが、いつの間にか証人尋問の代用品になり下がっている。さらに、始末におえないのが、こうして証人尋問代わりに証拠調べされた陳述書の内容が、では、裁判長に信用してもらえるのかといえば、必ずしもそうではなく、「陳述書に書かれていることは不合理だ。」とか何とか一蹴されてしまうことも少なくないのだ。
 こればかりは大いに不満だ。それならそれで、陳述書に書いてあることが信用できるかできないか、証人尋問の場で本人にじかに問いただして検証してもらわねば困る。本人の生の表情や口調から、彼が嘘をついているかどうか、読み取ってもらわねば。裁判長は、陳述書の内容が怪しいと思ったら、直接証人尋問の場で証人を弾劾するべきだし、逆に、証人にも釈明の場を与えるべきであろう。
 証人尋問こそ、裁判の最大の見せ場であり、弁護士にとっても腕の見せ所だろう。しかしながら、こうやって証人尋問などほとんど行われぬままに終わってしまう裁判も少なくなくなった。
 裁判がますますセレモニー化してきていることを現場で実感せざるを得ない所以である。
 さて、私の場合は、陳述書は、私が本人からいろいろ事情を聴取して、私がそれをパソコンで記録し、作成代行することがもっぱらである。そして、内容を十分確認してもらってから、本人の署名捺印をもらう。したがって、ひとつひとつの陳述書には、それぞれ思い出や思い入れがある。
 今、ためしに、自分のパソコンに何通の陳述書が保存されているか検索してみたら、「陳述書」という名前がついているファイルだけで350通もあった。このパソコンは、だいたい4年くらい使っているものだから、これまで4,5日に1通ずつくらいの割合で、私は、赤の他人の人生経験のある断面をノン・フィクションとしてつむぎ出してきたわけだ。・・・だからといって、誰もほめてはくれないが。
 そこでいずれは、「市川尚陳述書全集 全5巻」を発刊したいと思っている。

2006/10/13  21:42

電話の楽しみ  分類なし

 いきなり携帯に電話がかかってきた。
 女の人だ。そして、いきなり「マエザトエイジ?!」と尻上がりに言い放った。
「え? ちがいますよ。」
「弁護士さんじゃ・・・ないの?」
「ええ。市川ですが。」「ああ、市川弁護士さんでしょ?」「はい。そうですが、どちら様ですか。」
 しかし、ここまで聞いて、相手の声の主が誰かわかった。以前ある案件で弁護を担当した依頼人Tさんなのだ。
「ああ、Tさんね。久しぶりですね。最初に言ってくれなきゃ、こっちだってすぐには思い出せませんよ。で、マエザトエイジっていったい何のことですか。」
「何も聞いてない?」
「聞いてませんよ。いったい何のことですか。」
「なんかの書類さね。」
「え。なんのことですか。」
「今日、時間とれんかね?」
「・・・ですから、いったいどういう要件なのですか。」
 ・・・この後、かなりやりとりをして、ようやくわかった。マエザトエイジというのは、このTさんの親戚で、ある不動産を売るために市川弁護士に権利証を預けたと言っているそうだ。しかし、不動産を売る必要がなくなった。で、本人でなくTさんから、権利証を預かっていたら返して欲しい・・・と、これが私に対する要件の趣旨なのだった。なんだ、簡単なことじゃないか。
 しかし、私は、マエザトエイジの権利証を預かった覚えはない。彼はどこかの司法書士と私を勘違いしているようなのだ。
「私は預かっていませんよ。おそらくマエザトさんは勘違いしているんでしょうから、よく確認してもらってください。」
 そして、私はTさんにこうも言ってあげた。
「…それから、電話でね、『私はTですけど、私の親戚のマエザトエイジが市川弁護士に権利証を預けたと言っているのですが、預かっていますか。もし預かっているなら返してほしいとマエザトエイジが言っているのですが。』と、最初からそういう風に聞いてくれないですかね。いきなり『マエザトエイジ!』とか言われても何のことかさっぱりわからないじゃないですか。」
 Tさんは素直に「はい。」と言っていた。
 ちょうど暇をもてあましていた今日の午後。私にとっては、このTさんとの電話のやりとりが格好の暇つぶしになった。したがって、決してイライラすることもなかった。

2006/10/11  21:36

考える会の合宿  分類なし

 全国各地で活躍されている弁護士や法律事務所員のみなさんが、へき地、特に離島における司法サービスの現状について実地に学び、その将来についてディスカッションする場として、「離島・へき地における司法サービスの現状を視察しその将来を真剣に考える会」(略称:考える会)を結成されたことは、このブログをご覧の皆様も、夕刊紙上等ですでにご存知のことと思う。
 その考える会の有志の皆さんが、10月8日から11日まで当地宮古島で合宿をされた。
 この合宿の合間に、私は、オプショナル・ツアーと称して、皆さんを連れ出し、来間島、東平安名崎、池間島、人頭税石等々一巡し、さらには伊良部島にも足をのばしたのだが、私自身、足もとの宮古の美しさを再認識することができた。
 写真上は、伊良部島白鳥崎でつかの間の休息を楽しむ「考える会」の皆さん(ただし、最前列は、月給80万円で雇用している当事務所の事務員)。写真下は、同じく伊良部島「通り池」で周辺案内図に隠された暗号の解読に時の経つのも忘れる同会幹事吉田隆宏弁護士
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