もう少し戦闘シーンも多いかと思っていましたが、言論での攻防、に終始して、9.11関連作として一昨年見た「ユナイテッド93」のような具体性はなかったですが、何かと考えさせられる、余韻は残りました。上院議員トムVS記者メリル・ストリープの、イラク戦争に走った政府、煽ったマスコミの失態、非難、それをかわそうとするあせり、等、9.11以降の情勢への本音が重なるような応酬。
若者達の、国の状況への醒めた無関心さ。戦場へ志願するのは、正義感と同時に、帰国後の優遇、も見越した、貧しい環境の者から、等の実情で、実際戦場へ赴いた優秀なメキシコ人と黒人学生の運命。2組の言論の攻防に、その2人のアフガン戦場シーンも並行して挟まれたことで、戦場で犠牲になった多くの若者の、皮肉なからくり、というものも改めて垣間見えたり。
原題の「Lions for Lambs」(羊のためのライオン)は、第一次大戦中に、ドイツ兵が、勇敢なイギリス兵達を讃えると同時に、彼らを何十万人も無駄に死なせた最高司令官への嘲笑、でもある言葉、だそうですが、イラク戦争でのアメリカ政府や市井の若者達の一面を、シニカルに匂わす感も。
あと印象に残ったのは、レッドフォードと議論を交わす学生(アンドリュー・ガーフィールド)の、授業中での、麻薬中毒者に清潔な注射針を、という政策=飲酒運転者専用道路を、と同じ事、という指摘。
暗に対テロへの皮肉、あるいは、この生徒の弁論力を見せるシーン、だったのかもしれませんが、日本にしても、そういう事が実際結構多く、価値観がふとした事で一変しやすい、と言われたりもしますが、正論、というか、例えば「道路は元々、飲酒せずに走る場所だ」とか率直に言う事が、糾弾されかねない、というような不穏な風潮も折に感じたりするので、この科白が、妙に頭に残ったりしました。
また、メリル・ストリープは「プラダ・・」でのコミカルさも見せた鬼編集長役から一変、冷静に斬り込んで行く硬派記者ぶり、作品を締めていた気がしましたが、議員が熱弁するアフガン政策の言葉の端々に、その裏側の危険な匂い、を感じ取りながら、保身的上司に、そういう正義感での報道が、介護を要する母がいる57才の女性記者、という再就職困難な状況を匂わされ、公に出来ない理不尽さ。
|