2008/1/17  22:39

蠍の火  さいわい

今の季節からはちょっとずれますが、この時期は空気が澄んでいて星がきれいに見えるので星についての話題をひとつ・・・

さそり座 は、夏の代表的な星座で全88星座の中でも、もっとも見つけやすい星座の一つです。
そして、夏の夜、南の空で輝く1等星アンタレスはさそり座の心臓と呼ばれる星、アンタレスは、その表面温度は3500度で太陽よりずっと低いのですが、その大きさは太陽の230倍で、その輝きは5000倍にもなります。

大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗いろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした。

宮澤賢治は『銀河鉄道の夜』の中でアンタレスの輝きをこんな風に表現しています。
その赤い火は“蝎の火”。
今日は『銀河鉄道の夜』の中に出てくる“蝎の火”のお話です。
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川の向う岸が俄かに赤くなりました。楊の木や何かもまっ黒にすかし出され見えない天の川の波もときどきちらちら針のように赤く光りました。まったく向う岸の野原に大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗いろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした。

「あれは何の火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」ジョバンニが云いました。
「蝎の火だな。」カムパネルラが又地図と首っ引きして答えました。
「あら、蝎の火のことならあたし知ってるわ。」
「蝎の火ってなんだい。」ジョバンニがききました。
「蝎がやけて死んだのよ。その火がいまでも燃えてるってあたし何べんもお父さんから聴いたわ。」
「蝎って、虫だろう。」
「ええ、蝎は虫よ。だけどいい虫だわ。」
「蝎いい虫じゃないよ。僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。尾にこんなかぎがあってそれで螫されると死ぬって先生が云ったよ。」
「そうよ。だけどいい虫だわ、お父さん斯う云ったのよ。むかしのバルドラの野原に一ぴきの蝎がいて小さな虫やなんか殺してたべて生きていたんですって。するとある日いたちに見附かって食べられそうになったんですって。さそりは一生けん命遁げて遁げたけどとうとういたちに押えられそうになったわ、そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまったわ、もうどうしてもあがられないでさそりは溺れはじめたのよ。そのときさそりは斯う云ってお祈りしたというの、
 「ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。それでもとうとうこんなになってしまった。ああなんにもあてにならない。どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちに呉れてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸(さいわい)のために私のからだをおつかい下さい。」って云ったというの。
そしたらいつか蝎はじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを見たって・・・

                       『銀河鉄道の夜』より

旅の最後、ジョバンニは 「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあの蠍のようにほんとうにみんなの幸(さいわい)のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」と語り掛けます。

みんなのさいわいのために・・・
みんなのさいわいとは・・・
時を越えて宮沢賢治が静かに問いかけてきます。
クリックすると元のサイズで表示します LOVE&PEACE



2008/1/28  21:02

投稿者:PAPA

なずなさん
はじめまして!
こんばんは♪

子供たちへと思ってはじめたブログですが、知らず知らず、自分が失ってしまったものや求めているものに惹かれてしまいます。

子供たちには『よくわからなーい♪』って言われることも多いのですが・・・(笑)

文庫本をかばんに忍ばせて旅とかしてみたいなぁって思いますね。

よろしければまた遊びにきて下さいね。
ありがとうございました。

2008/1/28  20:50

投稿者:PAPA

Rita☆さん
こんばんは!

いつもありがとうございます。
インディアンのお話、とても素敵です。

ポジティヴワールド♪に住めるかどうかは自分次第ですね♪

がんばるぞ〜!


2008/1/28  0:43

投稿者:なずな
http://book727.blog118.fc2.com/

ブログ村からたどってきました。
まだ学生だった頃、この『銀河鉄道の夜』の文庫版をかばんに入れ、岩手を旅行したことがあります。記事を拝見し、またよみかえしたくなりました。
パパさんのお人柄なのでしょうか、ご紹介されている本があたたかなもの、静かで深いテーマのものが多い印象を持ちました。
またおじゃまするかと思います。
よろしくおねがいします。

2008/1/25  16:49

投稿者:Rita☆

パパさん、こんにちは♪
いつも銀河鉄道=パパさんを連想します。
先日、インディアンの話しという素敵な詩を頂いたので、パパさんにお送りしたいと思ったのですがこちらのブログに貼ってあるところから入ってもメール送れませんでした。
宜しければお手数ですがご連絡ください♪

2008/1/24  21:39

投稿者:PAPA

minaさん
ほじめまして!
いらっしゃいませ♪

そんな風に思って頂いただけで・・・
感謝・感激です。

もしお時間あればまたいらして下さいね♪

2008/1/23  21:52

投稿者:mina
http://minaperere.cocolog-nifty.com/

はじめまして。
ブログ村からきました。
ステキなタイトルと、
サブタイトルに、ぐっときてしまいました。
私も本が大好きです。
今度時間のあるときに、
ゆっくりブログを拝見させていただきますね!

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