2007/2/17  17:31

太陽の帝国  映画

 今日は映画の話を。取り上げるのは「太陽の帝国」(1987年:スティーブン・スピルバーグ監督)です。

 大好きな映画なので以前からずっと書きたいと思っていました。でも、思い入れがあるので中途半端に書きたくないという気持ちもあり、延び延びに。今日はゆっくり時間が取れて心身ともに調子がよいので、満を持しての熱い語りで迫りたいと思います!!


あらすじ:

 舞台は太平洋戦争前夜の上海。欧米列強が植民地支配の橋頭堡として租界を置くこの地で、主人公のイギリス人少年ジェイミー(クリスチャン・ベール)は暮らしていた。彼の父親は実業家として財を成し、一家は上流階級として何不自由ない生活を送っている。

 ジェイミーは飛行機が大好き。中でも日本海軍の零式艦上戦闘機(いわゆるゼロ戦)が大のお気に入りで、いつの日かパイロットになることを夢見ては模型飛行機で遊ぶ、奔放な少年だ。

 ある日のこと、父親が日本軍の上海侵攻のニュースを聞きつけ、一家は上海を離れ避難する事に。しかし時すでに遅く、日本軍はすぐそこまで迫っており、辺りは逃げまどう群集で大混乱。その中でジェイミーは両親とはぐれてしまう。

 おぼっちゃん育ちで世間知らずなジェイミーは途方に暮れる。そして、ひょんなことで知り合ったアメリカ人のベイジー(ジョン・マルコビッチ)と行動を共にするうちに、彼らは日本軍に捕まり収容所へと送られてしまう。誰も頼る事のできない過酷な状況の中、ジェイミーは生きていくために、大人たちの世界でたくましく立ち振る舞う術を身に付けて成長していくのだった・・・。


 ヒットメイカーとして知られるスピルバーグ監督。しかし本作品は興行的に失敗し、評価が低い事でも知られています。いわゆる娯楽大作ではなくて叙情的な要素が多いことや、太平洋戦争中の日本人というセンシティブなテーマを取り上げていることなどがネガティブに働いたのではないかという気がします。

 ともあれ、私は「太陽の帝国」を彼のベスト作品の一つであると思っています。極限状態であらわになる人間のドロドロとした本性と、その中でもみずみずしさを失わない少年の心の成長とを美しい映像と音楽でつづった手腕はさすがというところ。特に、要所で挿入されるモンタージュからは一篇の詩の朗読を聴いているような神的な感覚をおぼえずにはいられません。

 まずはファーストシーン。ボーイソプラノが響き渡る中、川面に棺桶が漂っています。そこへ突然、小型の軍艦とおぼしき船舶が画面を切り裂くように現れます。棺桶を押しのけて我が物顔で進む船。そのマストには日章旗が翻っているのでした。まあ映像の作りの方はいかにもスピルバーグといった、暗示がやや説明的に過ぎるきらいは否めません。

 「良い映画は入りが良い」が私の持論であると以前書きました。この映画の入りが良いのは音楽です。本当にいい曲ですね(ジェイミーが唄ってる)。この後に様々な人間の業というものが展開されるわけですが、神様がそれを優しく見つめているようなholyな無常観といいますか、そうしたものを私は体験しました。

 その他、私の好きなシーンを挙げてみます。

 まず、日本軍のパイロットがジェイミーの敬礼に返礼するシーン。夕陽を背にシルエットになったパイロット達。その後ろでは飛行機を修理する溶接の火花が黄金色に輝いています。背伸びをしたくてはやる少年の心が、それを大人が暖かく受け入れてくれたことで何にも代え難い高揚感を得て鼓動を増す様が、泣きたいくらい美しいです。

 そして、収容所が連合軍の空襲を受け大混乱に陥るシーン。戦闘機が低空飛行で機銃掃射を行い人々が逃げ惑う中、ジェイミーは一人塔のてっぺんに登ります。それはひとえに、大好きな飛行機を間近で見るまたとないチャンスだから。そしてここで彼にとって最高の奇跡が起きます。半狂乱のように大声で手を振るジェイミーに、戦闘機を操縦するパイロットが気付いて手を振り返してくれるのです。

 「P51! Cadillac of the sky! hoo!!」

 いいです。ヒコーキ少年の夢です。ここは何回見ても泣きます。心が震えます。

 最後に、ジェイミーと仲良くなった日本人の少年パイロット(片岡孝太郎)が死ぬシーン。生き返るのを信じて疑わないかのように、ジェイミーは心臓マッサージをいつまでも続けてやめません。恐怖や憎しみが渦巻く中で次々と取り返しのつかない過ちを犯していく大人たち。それでもジェイミーはまっすぐな心を失わず、彼なりのやり方で立ち向かおうとする。「知らない」がゆえに子供だけが持ちえる神性というものが、「知っている」がゆえに大人は愚かであるということを事をえぐりだすことができるのだということを見せつけられた気がしました。
 
 サントラももちろん買いました。あのコーラスを聞くと本当に心が洗われます。

 このストーリーはイギリスの作家、J・G・バラードの半自伝的小説に基づいているそうです。いつか原作も読んでみたいですね。



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