2007/12/13 16:06
トーマス・キング “A Short History of Indians in Canada” 本
Short History of Indians in Canada(Thomas King, 2005)
ワーホリが終わったらカナダの先住民に関する本を読もう、ということでふと図書館で手に取ったこの一冊。著者の名前は聞いた事がない。タイトルは直訳すると『カナダのインディアンの簡潔な歴史』とでもなるだろうか。'Indians' (インディアン)という単語がタイトルに入っているのでちょっと古い本かもしれない、と思った。なぜなら現在カナダで「インディアン」と言えばインド人、もしくはインド系のカナダ人のことになり、先住民は一般的に“First nations”(ファーストネイションズ=最初の国々の人々)と呼ばれているから。
まさかカナダに渡ってきたインド移民の歴史の本? だったらかなり興味あるのだが。しかし実際読み始めているとそれはとても異様な本だった。実は短編小説集で、最初の短編はこんな話だ。
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ネタバレ注意:
以下、本の内容に関する記述が含まれております)
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* * *
ボブが見上げると、まさにインディアンの一群がビルの側面に向かって飛び込んでいくところだった。
ドガッ! ドガッ!
ボブは見上げ、避けようとした。
ドサッ!
インディアンの一匹がボブの目の前の石畳に落ちた。
ドガッ! ドガッ!
二匹が後ろの石畳に落ちた。
なんだこりゃ、とボブは叫んで、落ちてくるインディアンたちを避けるために飛び退いた。
(略)
モホーク族だな、とビル。
こっちにはクリー族が二匹いるぜ、とルーディ。
(略)
ビルとルーディはポケットから緑色のビニール袋を取り出し、袋の口を探し始めた。
死んだやつは袋に入れる、とルーディ。
生きてるやつにはタグを付けて小屋に入れる。元気になるまで世話して自然に返す、とビル。
すごい、とボブ。
(略)
お楽しみいただけましたか、とホテルのドア係が言った。
ありがとう、すごい眺めだった、とボブ。
昔ほどではありません、とドア係は溜め息をつき、夜空を見上げた。
昔だったら、インディアンの群れが来ると空全体が真っ黒になるほどでした。
(表題作“A Short History of Indians in Canada”より)
なんなんだろうこの小説は。インディアンが空を飛び、トロントの高層ビルにぶち当たって落ちるというが、まるで野鳥のように扱われている。どうやら先住民の待遇を皮肉ったものであるらしい。他にはこんな話もあった:「コヨーテと敵性外国人」。敵性外国人、と言えば第二次世界大戦中の日系人のことが思い浮かぶが・・・
* * *
コヨーテは帰ってきたときにはいいトラックを運転していた。
ヨーホー! 俺のいいトラックを見ろよ、とコヨーテ。
ああ、いいトラックだね、いい感じだ、と自分。新しい仕事っていい仕事なんだろう。
ああ、いままでやってきた仕事の中でも最高の仕事だ、とコヨーテ。
コヨーテの乗っているいいトラックのドアには「コガワ海産物店」と書かれていた。このコヨーテはいつも食べものを探している。
どこで見つけたんだい、と自分。
コヨーテに盗まれた、といいトラックが言う。
盗んでねえよ、とコヨーテ。
いや盗んだ、といいトラック。
馬鹿トラックの言う事なんか聞くな、とコヨーテが自分に言う。
(略)
敵性外国人のトラックと話すのは法律違反だ、とコヨーテ。
(中略)
カナダの物語。コヨーテの物語。時には判別が難しいことがある。どちらも'C'で始まるわけだし。
(“Coyote and the Enemy Aliens” より)
まさにそれだった。「敵性外国人」は戦時中の日系人のことで、「コヨーテ」は彼らの所持品を没収して売り、また彼らを捕まえてあちこちに送る「仕事」を請け負っているのだ。なんともダイレクトな皮肉である。
こんな話が14編入っているわけで、中には引き込まれるものもあったが、正直言って読んでいるとかなり神経が疲れてくる。というわけで全編読む事は断念、明日図書館に返しに行こうと思う。
人によって好みが別れるだろうが、自分はあまり楽しんで読めなかった。
