2008/7/26 15:36
玉ねぎの皮をむきながら 本
玉ねぎの皮をむきながら
Beim Haeuten Der Zwiebel
ギュンター・グラス著 依岡隆児訳 集英社 ISBN 978-4-08-773459-1 ¥2,500(本体)
☆☆☆★★★

「ブリキの太鼓」でナチス社会を容赦なく解剖し、ドイツの良心の番人とも言われたノーベル文学賞作家のグラス。2006年刊行のこの作品で、17歳の時にナチスの武装親衛隊員(SS)だった事を告白し世界中に大きな衝撃を与えた。
映画「ブリキの太鼓」が公開された時に、内容にすっかり辟易としてしまった私は、以来、ギュンター・グラスの作品には触れる事なくいたのですが、この作品がドイツで発表された時の騒ぎや、ノーベル賞を返上しろといった様なバッシング、それとなにより80歳を迎えようとしていた彼が、今までひた隠しにしてきた事実を告白しようと思い立った心境に興味を惹かれて、読んでみました。
グラスがSSに入隊したのは17歳の時。ドイツ社会全体が、ナチスの勝利とヒトラーを信頼していた時代。以前、「ニュールンベルグ裁判」関連の書籍を読んだ時にも思ったのですが、ドイツ社会がいかにしてナチス一色になっていったかという背景を知らないと、本当の理解にはつながらない。敗戦後、彼は米軍の捕虜となる。ここまでの体験が、彼の創作の大きな核となっている。ちなみにこの作品の中で、私が一番気に入っているのは、米軍捕虜時代のエピソードです。若い彼は、とてもうまくたちまわる。
老境に達した彼が、記憶の玉ねぎの皮を1枚づつめくりながら、自身の歩んできた人生とその折々の心境をふりかえっていく。幼い自分はあの頃何を思っていたのか、関係した女性達への思いはどんなものだったか、戦争の中で彼が学んだ事は何だったのか。そしてそれらは、自分の記憶の中で誇大なものとなり、美化されたりしているだろうか。
この本は、グラスの親衛隊員告白ばかりがとりだたされがちだけれど、読んでみてわかるのは淡々と、感情的になる事なく、一人の人間の一生を振り返っていく細密な自伝だという事でした。SSだったという事実も、人生の中の一つの流れのエピソード。彼自身、その事をひたかくしにしてきた負い目や苦しみもあっただろうと思うが、同じく淡々とふり返られていく。
後書きでも触れられている様に、多くの著名人からの擁護の声も高く、告白された事実で彼の成し遂げた業績が揺らぐ事はない。グラスのとってきた政治的な態度や、市民活動などもあり、評価は様々なようです。私自身は、彼の足跡を詳しく知らないので、何も言えないのですが、この作品が自伝文学として、かなりのレベルのものであるのは感じました。敬遠していた「ブリキの太鼓」、いつか是非読みたいと思ってます。
Beim Haeuten Der Zwiebel
ギュンター・グラス著 依岡隆児訳 集英社 ISBN 978-4-08-773459-1 ¥2,500(本体)
☆☆☆★★★
「ブリキの太鼓」でナチス社会を容赦なく解剖し、ドイツの良心の番人とも言われたノーベル文学賞作家のグラス。2006年刊行のこの作品で、17歳の時にナチスの武装親衛隊員(SS)だった事を告白し世界中に大きな衝撃を与えた。
映画「ブリキの太鼓」が公開された時に、内容にすっかり辟易としてしまった私は、以来、ギュンター・グラスの作品には触れる事なくいたのですが、この作品がドイツで発表された時の騒ぎや、ノーベル賞を返上しろといった様なバッシング、それとなにより80歳を迎えようとしていた彼が、今までひた隠しにしてきた事実を告白しようと思い立った心境に興味を惹かれて、読んでみました。
グラスがSSに入隊したのは17歳の時。ドイツ社会全体が、ナチスの勝利とヒトラーを信頼していた時代。以前、「ニュールンベルグ裁判」関連の書籍を読んだ時にも思ったのですが、ドイツ社会がいかにしてナチス一色になっていったかという背景を知らないと、本当の理解にはつながらない。敗戦後、彼は米軍の捕虜となる。ここまでの体験が、彼の創作の大きな核となっている。ちなみにこの作品の中で、私が一番気に入っているのは、米軍捕虜時代のエピソードです。若い彼は、とてもうまくたちまわる。
老境に達した彼が、記憶の玉ねぎの皮を1枚づつめくりながら、自身の歩んできた人生とその折々の心境をふりかえっていく。幼い自分はあの頃何を思っていたのか、関係した女性達への思いはどんなものだったか、戦争の中で彼が学んだ事は何だったのか。そしてそれらは、自分の記憶の中で誇大なものとなり、美化されたりしているだろうか。
この本は、グラスの親衛隊員告白ばかりがとりだたされがちだけれど、読んでみてわかるのは淡々と、感情的になる事なく、一人の人間の一生を振り返っていく細密な自伝だという事でした。SSだったという事実も、人生の中の一つの流れのエピソード。彼自身、その事をひたかくしにしてきた負い目や苦しみもあっただろうと思うが、同じく淡々とふり返られていく。
後書きでも触れられている様に、多くの著名人からの擁護の声も高く、告白された事実で彼の成し遂げた業績が揺らぐ事はない。グラスのとってきた政治的な態度や、市民活動などもあり、評価は様々なようです。私自身は、彼の足跡を詳しく知らないので、何も言えないのですが、この作品が自伝文学として、かなりのレベルのものであるのは感じました。敬遠していた「ブリキの太鼓」、いつか是非読みたいと思ってます。
2008/8/2 23:37
投稿者:ごみつ
2008/8/2 22:56
投稿者:はなこ
こんばんは。
人が人を批判する。人が人を裁く。すごく難しいことなんだろうなあと思います。完全無欠な人間なんてこの世に存在しないだろうから、結局自分のことは棚に上げて他人を裁いてしまうのでしょうね。
今日、出光美術館で開催中の「ルオー大回顧展」に行って来ました。今年はルオー没後50年に当たるんだそうです。
敬虔なカトリック教徒であるルオーも人間が人間を裁くことに懐疑的で、裁判官の姿を繰り返し描いては、その1人の人間としての苦悩を表現していたようです。神仏のみぞ、人間を裁くことができる?!
ギュンター・グラスの著書『ブリキの太鼓』は未読ですが、映画化作品は見ました。社会風刺が強烈でしたね。
グラス氏は自伝も書かれていたのですか。若き日にSSだったことで、その人生のすべてが否定されるのは酷ですよね。人間誰しも大なり小なり過ちは犯すものだと思うし、そこから何度でもやり直しはきくはず〜その繰り返しが人生だと思うし。
ヌマンタさんもご指摘のように、歴史はそう単純ではない。さまざまな要因が絡み合っての事実の積み重ねが歴史を作るのでしょう。さらに歴史観も、立ち位置が違えば、また違ってくるものでは?だから、いつまでも歴史認識の違いで国と国とが争うことにも、正直ウンザリしています。
人が人を批判する。人が人を裁く。すごく難しいことなんだろうなあと思います。完全無欠な人間なんてこの世に存在しないだろうから、結局自分のことは棚に上げて他人を裁いてしまうのでしょうね。
今日、出光美術館で開催中の「ルオー大回顧展」に行って来ました。今年はルオー没後50年に当たるんだそうです。
敬虔なカトリック教徒であるルオーも人間が人間を裁くことに懐疑的で、裁判官の姿を繰り返し描いては、その1人の人間としての苦悩を表現していたようです。神仏のみぞ、人間を裁くことができる?!
ギュンター・グラスの著書『ブリキの太鼓』は未読ですが、映画化作品は見ました。社会風刺が強烈でしたね。
グラス氏は自伝も書かれていたのですか。若き日にSSだったことで、その人生のすべてが否定されるのは酷ですよね。人間誰しも大なり小なり過ちは犯すものだと思うし、そこから何度でもやり直しはきくはず〜その繰り返しが人生だと思うし。
ヌマンタさんもご指摘のように、歴史はそう単純ではない。さまざまな要因が絡み合っての事実の積み重ねが歴史を作るのでしょう。さらに歴史観も、立ち位置が違えば、また違ってくるものでは?だから、いつまでも歴史認識の違いで国と国とが争うことにも、正直ウンザリしています。
2008/8/2 10:55
投稿者:ごみつ
rippletonefrench 様
今日は。
オツムテンテンって・・。(笑)死語かと思ってました。(笑)私もテンテンです。
ドイツは第一次世界大戦で負けたので、戦勝国から莫大な負債を背負わされて、国民はかなり苦しんでたんだよね。そんな中、ドイツ民族の優秀性を鼓舞して現われたのが超カリスマ指導者のヒットラーです。
ユダヤ人捕虜収容所とかの実態が明らかになったのも、戦後。ナチスの指導者の中にも知らない人はたくさんいた位。
歴史はちょっと知っただけでも、いろいろなことを教えてくれるな〜って思います。
私も、もっと勉強しないといけないんだけど・・。(汗)
今日は。
オツムテンテンって・・。(笑)死語かと思ってました。(笑)私もテンテンです。
ドイツは第一次世界大戦で負けたので、戦勝国から莫大な負債を背負わされて、国民はかなり苦しんでたんだよね。そんな中、ドイツ民族の優秀性を鼓舞して現われたのが超カリスマ指導者のヒットラーです。
ユダヤ人捕虜収容所とかの実態が明らかになったのも、戦後。ナチスの指導者の中にも知らない人はたくさんいた位。
歴史はちょっと知っただけでも、いろいろなことを教えてくれるな〜って思います。
私も、もっと勉強しないといけないんだけど・・。(汗)
2008/8/1 21:39
投稿者:rippletonefrench
ごみつ様
こんな本、あるんですね。
私は頭があまり良くないので、もし自分の親が
ナチスに入っていたら、きっと子供の私はなにも
考えずにヒトラーに肩入れしていたかもしれません。
当の本人たちはナチスの考えや発言に一体感をもって
陶酔していたのでしょう。
ヒトラーにはカリスマ性があったのでしょうか。
加害者達はどうあつかわれるべきなのか。
オツムテンテンの私にはわかりません。
人は過去の時間が多くなると、昔を淡々と思い返すのかもしれません。
嗚呼、ちゃんと書けないオツムですみません(汗
こんな本、あるんですね。
私は頭があまり良くないので、もし自分の親が
ナチスに入っていたら、きっと子供の私はなにも
考えずにヒトラーに肩入れしていたかもしれません。
当の本人たちはナチスの考えや発言に一体感をもって
陶酔していたのでしょう。
ヒトラーにはカリスマ性があったのでしょうか。
加害者達はどうあつかわれるべきなのか。
オツムテンテンの私にはわかりません。
人は過去の時間が多くなると、昔を淡々と思い返すのかもしれません。
嗚呼、ちゃんと書けないオツムですみません(汗
2008/7/29 0:20
投稿者:ごみつ
くり 様
ホント暑い毎日ですね。(^o^;) バテない様に、食事はきちんととる様にしています。くり様も、夏バテしない様に気を付けて下さいね。
ドイツ語の担当になってかなりたつので、門前の小僧で、結構くわしくなってきました。(笑)しかし、ドイツ語の出来ない担当ってどうなの?!って感じですよね。(^^; 初歩だけでも勉強しようかしら。
ホント暑い毎日ですね。(^o^;) バテない様に、食事はきちんととる様にしています。くり様も、夏バテしない様に気を付けて下さいね。
ドイツ語の担当になってかなりたつので、門前の小僧で、結構くわしくなってきました。(笑)しかし、ドイツ語の出来ない担当ってどうなの?!って感じですよね。(^^; 初歩だけでも勉強しようかしら。
2008/7/28 0:21
投稿者:くりすけ
こんばんはヽ(^。^)ノ
毎日暑いですねぇ・・・・
お体いかがですか?
ドイツと聞くとあの方を思い出してしまいます。
この話も確か聞いたような気がします。
毎日暑いですねぇ・・・・
お体いかがですか?
ドイツと聞くとあの方を思い出してしまいます。
この話も確か聞いたような気がします。
2008/7/27 23:09
投稿者:ごみつ
ヌマンタ さん
その通りなんですよね。第一次大戦の敗戦国だったドイツに、あまりにも大きな負債を負わせたことが、ナチスを産んだのだから、責任は戦勝国にもあると思います。
アメリカ映画なんかで、ドイツ軍と言ったらプロトタイプな物凄い悪役。戦後そういうイメージを世界に発信させっぱなしだったのも、ホントひどい話です。
私も当時のドイツ人だったら、ナチスを支持していたかもしれません。(ユダヤ人迫害は別にしても)
限られた情報の中では、そう判断せざるを得ないんですよね。
歴史を知る事は、本当に大切なことだと思います。
その通りなんですよね。第一次大戦の敗戦国だったドイツに、あまりにも大きな負債を負わせたことが、ナチスを産んだのだから、責任は戦勝国にもあると思います。
アメリカ映画なんかで、ドイツ軍と言ったらプロトタイプな物凄い悪役。戦後そういうイメージを世界に発信させっぱなしだったのも、ホントひどい話です。
私も当時のドイツ人だったら、ナチスを支持していたかもしれません。(ユダヤ人迫害は別にしても)
限られた情報の中では、そう判断せざるを得ないんですよね。
歴史を知る事は、本当に大切なことだと思います。
2008/7/26 17:41
投稿者:ヌマンタ
敢えて暴論を言いますが、ナチスの暴虐を生み出したのは、戦争に正義を持ち出した英仏が悪い。復讐心を正義に包んで、必要以上にドイツを苦しめたことが、ヒットラーへの支持を生み、ドイツの独善を深めさせたと思います。
反発したドイツの一般市民の心情を理解しないとナチスへの支持は絶対理解できない。フランスもイギリスもアジアアフリカで散々残虐な行為をしておいて、それを棚上げして正義感面しているのだから、実に厚かましいものです。
多分、私が1930年代のドイツの若者だったら、喜んでナチスに入党したかもしれません。それを戦後の価値観で裁くのは、実に愚かしくおぞましいと思います。
反発したドイツの一般市民の心情を理解しないとナチスへの支持は絶対理解できない。フランスもイギリスもアジアアフリカで散々残虐な行為をしておいて、それを棚上げして正義感面しているのだから、実に厚かましいものです。
多分、私が1930年代のドイツの若者だったら、喜んでナチスに入党したかもしれません。それを戦後の価値観で裁くのは、実に愚かしくおぞましいと思います。

今晩は!暑いですね〜。お体の調子はいかがですか?
私はコーラばっかり飲んでます。(汗)体に良くないな〜と思いつつも・・。
グラスのこの自伝の翻訳は最近出たばっかりなんですよ。新刊です。
ドイツ国内におけるナチス体制反省の態度は、かなり強くってドイツではヒトラーの「我が闘争」は出版してはいけない事になってるんですよ。ドイツ語オリジナルでは読めないのです。英語では出てるんですけどね。
そんな状況もあってだろうけど、グラスはSSに在籍していた事を口にしなかったんだろうと思います。
あ、私もルオー大好きです!出光美術館でやってるんだ〜。行きたいな〜。
話飛びますが、随分前に上野で見た「エル・グレコ展」は良かったな〜。また見たいです。
今、一番見たいのは「カラバッジオ」と「ゴヤ」です。どこかでやらないかな〜。