2008/3/16  9:27

竹の箸Memoir - ポール・フレールの思いで -4 タルガ  竹の箸Memoir

タルガ・フローリオのスタートポイント/ピット前にて
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ポール・フレールとは、最初の来日のホンダ1300以来、開発中の新型車の評価試乗に
同行した。

すべてが記憶に鮮やかに残るが、とくに楽しかったのは2代目マツダRX-7 FC・開発記号P4747の中間改良型を持ってのイタリア・シチリア島行であった。ポールは、ヴァンケル型ロータリー・エンジンに興味を抱き、ヨーロッパのメーカー群の開発をフォロウしていた。私も純粋回転に近い(純粋ではない)REについては、1964年のイギリス・グッドウッド・サーキットのNSU・スパイダー試乗以来、とくに熱心に追っていた。そこにマツダが最初のツーローター・エンジンを生産車コスモ・スポートに搭載し出た。他の”ロータリー・クラブ”・メンバーが続々と脱落する中、マツダだけが頑張り続けた。

私は、FCについては、開発ブック(英語版のみ)を書くため、開発の初期から追っていた。 ポールは、開発過程のFCを三次プルーヴィング・グラウンド、西日本サーキット、ニュールブルクリンク北コースで評価試乗している。

マツダは、できたてのホヤホヤのツインスクロール・ターボ・エンジン搭載したRX−7をシチリアのホントのロードレース”タルガ・フローリオ”のピッコロ・マドニエ・コースに送り込んだ。ドライバーは、ポール・フレールとシチリアの英雄、1965, 71, 75年タルガ・フローリオ優勝者、ニーノ・ヴァッカレーラ。ポールがニーノ紹介の労をとってくれた。同行した"コビー”こと早川隆治主査、私、スチル写真を撮影した故但馬治チームとビデオクルー。

夕刻、愛車フェラーリ328を駆り、ニーノ・ヴァッカレーラがヴィーラ・イジェアに現れた。ここでは往年タルガ・フローリオ・レース後の祝賀会が開かれたという。コートに袖を通さず、羽織ったニーノは、まさにイタリアン・ダンデイを絵に描いたような人物だった。

翌朝は、2度のタルガ・フローリオ出場(ポール:「正確には1.5度だよ」これは後で説明する)を含め何回かシチリアに来ているポールが、チャーターした大古メルセデス・タクシーで州都パレルモの歴史と建築探究の案内をしてくれた。狭く混雑した市街を抜け、ちょっと開けた場所に巨大な赤錆だらけの2本の柱がそびえている。運転手がひそめた声で説明し、ポールが通訳してくれる。「この辺は、マフィアの大抗争の場で、犠牲者の記念碑ですよ」そういえば車、人通りが少ない。コビーこと小早川主査と私が顔を見合わせる。ドライバー「ウヒヒヒ」、ポール「ウフフフ」。かつがれた!
ポールが案内してくれた市街を外れた丘の上のモンレアレ大聖堂、市内のノルマン王朝宮殿と付属礼拝堂は、素晴らしかった。

「ちょっと足慣らしをするか」ポールの駆るRX-7に同乗し、ワインディングに向かった。「オヤ、この路面はアイスバーンのように滑るな」天候はよく、路面はドライだ。停車し、降りて路面を観察した。舗装に埋め込まれた砕石表面が通る車群のタイアで磨かれている。それもルースな舗装から浮き出しているのだ。ニーノが「タルガのコース路面は、まったく油断できないよ。ジャッキー・イクス(F1、スポーツカーの名ドライバー。後日、ルマン、西伊豆で会うことになる)ですら、レース・スタート後、2分も走らないうちにトントントン、ドーンとコースオフしてリタイアした」形容する所以だ。

そのニーノ、とばすとばす。田園ワインディングでは、トントン、ズリーッとガードレールに擦りつけたが、見事に立ち直る。但馬フォトグラファー、顔色も変えず(変わったかもしれぬが、色黒で判らなかった)、「いいですよ。反対側を撮りますから」

タルガのコースのコレッサーノの町中には、有名なニーノ・コーナーがある。路面のミューは低く、ニーノが実戦で溝に落ち、リタイアした。町民が書いた『NINO ATENZIONE=ニーノ、気をつけて』の文字が残っていた。彼の駆る深紅のRX-7が、実戦もかくやと走る。あっという間に町民が集まり、お祭り騒ぎになってしまった。

ワインディングでポール・フレールの見せてくれた車輪の上の舞いは華麗そのものだった。そうそう、彼のタルガ1.5回は、最初がフェラーリ2リッターで出場する予定がメイン・ドライバーのクルマが故障し、譲ったのでノンスターター。2度目は、なんとBMC/ジョン・クーパーが製作した前後にエンジンを積んだ4駆MINI 。「リアエンジンがオーバーヒート気味で、なんとか走った程度」とは彼の説明。

但馬フォトグラファーは、車中のニーノとポールのショットでは、ウインドシールドとボンネットに木の葉の映りが欲しいという。そんな場所はない。シェイクスピエアのマクベスではないが、樹木が生えてなければ、動かせばいい。折れた大きな枝を探し、それをかざした。


RX−7車中のニーノとポール。ウインドシールドに映り込む木の葉が但馬治フォトグラファーのこだわり
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上の写真のメーキングシーン。右端で折れ枝をかざすのが私
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路面は、このような滑りやすい砕石を用いた舗装
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