2008/5/1  19:46

人間機械論【ノーバート・ウィーナー】  
副題が人間の人間的な利用。
原題がthe human use of human being。
ちょっと訳題がよろしくないな。
荒っぽくいうと、人間が人間らしく生きるために、機械で代用できるものなら機械にしちまえという議論。チャップリンのモダンタイムズは、人間性を否定する仕事を拒否するということと同じくらいの意味。

ウィーナーはサイバネティックスの提唱者。
サイバネティックス wikipedia
ここでやっていることの祖先にあたる。



全体的に面白くない。議論としてどこに注目するべきか分からず、けっこう苦労した。
上の一行要約は俺の感想。

これってシリコンバレーの考え方の基になったのかなという気もする。
個人のエンパワーメントは善であるっていう考え方だものな。なんで個人のエンパワーメントが良いことかっていうと、それが人間の能力を最大化するっていう意味なんだと思う。マジメに追いかけたことがないから、大雑把な新聞雑誌の知識だけで類推しているけれど。

自然科学を適当な機械論として考えるというやり方は昔からあった。
これはほぼアルゴリズムの歴史に該当する。人文系では、ド・ラ・メトリィなんかが書いている。
んで現代では、俺が人間を対象にしてやっているわけだ。

イメージする社会像がやや貧困。
よく分からんオタク系民主主義支持者とか、オタク系自由主義のはしりという具合にも読める。
これはまぁ自然科学者特有の単純化なので、仕方ないかもしれない。人文系の学者はあまりに複雑かつ神秘的に考えすぎると思うけれどね。


人工知能論として読むと、人間はアナログコンピュータであるという前提のもとに書かれていることに好感を持った。Pp71−72周辺。
どうあってもC3POかドラえもんをイメージする人が多い。素子が違えばパフォーマンスも違うと思うんだけれどな。


やはり宗教色があるねぇ。
サイバネティクスについて、宗教家が書いた書評についての論評もいれてある。
人工知能って、どこか人間の人間性や神秘性を否定するかのような感覚があるからなぁ。まぁそういう背徳感が楽しいっていうところも少しはある。60−70年代における人工知能論者のビッグマウスが悪かったんだろう。過去の学者のせいにしてしまおう。
んでも実際にやってみると、人間の知能ってなんでこんな風になっているんだろうなぁとか、これってよく分からねえなぁとか、さらなる謎が出てくるんだけれどな。


当時の政治情勢を鑑みると、こういう書物になってしまうことは仕方の無いことなのかなぁという気もする。
一般向けに書かれた本なので、相当に政治や社会情勢には気を使った書き方をしているね。
俺はどれほどスゴイ技術であっても、生きていくうえで正しい・有用な知的判断に必要なことについて、技術は限定的にしか機能しないと思っている。社会構造を変えるとかね。どう考えてもうちのオカンとコンピュータネットワークにはなんの関係もねぇし。
企業の構造変化は多少あるとしても、個人生活において限定的であるっていう考え方が出てきたのはここ十年くらいだと思う。いまだに科学万能主義とかマジで信じている人っているのかな。市場原理主義とおなじくらいレアなんじゃないの。


ちょこちょこ面白かったところを抜粋
P94
>会話は話し手と聴き手が共同して混乱の諸力に対抗するゲームだという見解である。
たしかにそういう側面もある。仕事中の会話ってこういう方法論だし。
ただ、人間の会話ってのは有目的的ではないことが多々あるということもまた、面白い事実だと思うんだけれどな。おそらく会話の人間性と呼ばれているものは、この目的のない感情発露のとりとめのなさと、共感にもあると思う。これがないとおそらく知能って呼ばれることはないんじゃないのかなぁ。

P95
>言語をゲームとして扱う適切な理論は、
1、 主として情報を伝えることを目指した言語
2、 意図的な敵にたいしてひとつの見解を押し付けようとする言語
例によって、文の一部を俺がいじった。
言語を動物の発声として捉えると、前者は仲間への合図に、後者は敵への威嚇に類似しているね。
やはりどこかで、ロジックのみの言語理論を考えることには限界はあると思うよ。ただし、限定された環境において、適切な心理を言語に組んでやることによって、限定的ながら会話らしくなるようになるかもしれない。たとえばイライザは、たまたまながらもそういう簡単なこころを実装している、という見方もできる。


P103
>人間の卵子
卵子自体を確認することが難しかったため(ツキイチでしか出てこないからねぇ)、精子が人間の材料だと思われていたという話。へー、初めて知った。


P115
>立法者または裁判官の第一の義務は、専門家ばかりでなく、その時代の普通の人が唯一つの仕方で解釈するような明瞭で曖昧のない陳述をすることにある
精度が上がれば、一般人には理解できないのが世の常。
だから政局はヘンテコな解釈がされるし、エセ科学は世にはびこる(俺のことだって?うるせー)

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