2008/7/13  15:34

人工生命とオートポイエーシス その5  分類なし
10、Tell
プログラムの一部を抜き出した状態遷移図から、プログラム全体の状態遷移図へと話を戻す。
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赤―青―緑の順番に追ってゆく。

マーキングしている、面取りした四角のtellに注目。
これは産出プロセスでtellが生じ、そのあとにほかの構成素が出来てしまうことを示す。なんの産出プロセスもなしに構成素が生まれるということはありえない。
ここでみっつの前提についてもおさらい。

(1)観察の結果分かるものはすべて構成素とする
(2)if文は産出プロセスとする
(3)複数のif文はひとつの産出プロセスとする

さて、オートポイエーシスシステムとして記述しようとすると、矛盾が生じる。
Tellは構成素なのか、産出プロセスなのか。これもずいぶん悩まされた。

オートポイエーシスシステムとして記述可能であるという前提だと、記述のために考えられる回避方法は二つある(他にあったら教えてね)。
@ ひとつの産出プロセスから、ふたつの構成素が産出されるパターン
A ひとつの産出プロセスから、ひとつの構成素とひとつの構成素じゃないものが産出されるパターン

この状態遷移図の場合、tellは産出プロセスに関わっていない。
ということは、オートポイエーシスにおける構成素としての条件を満たしていない。
結論。
回避方法として考えられるのは、tellは構成素ではない産出物だということ。
構成素ではない産出物をなぜプログラムに記述しないといけないのか。オートポイエーシスシステムとして捉えて考えると結果が出てくるけれども、新しい述語についての解説が必要になる。

とりあえずtellを構成素から外したシステムー構造図を作ってみる。
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</蛇足>
構成素って観察できなくても問題が無いと気付くのにずいぶん時間がかかった。
構成素は観察可能なものではなくてはならない、という思い込みから生まれた蛇足。
tellは観察可能なものであるのかどうかも分からない。アリを観察した場合、あるいはこのプログラムが動いている状態を観察した場合、実際にエサのありかを伝達されているかどうかは観察しても分からない。「アリが別のアリに情報を伝達している」という仮説が適当である、という表現はできるけれども。
先に看板システムとして他のアリを喩えたのも、この話への布石。ワイシャツに口紅がついていたら浮気のサインであるように、アリの口に食べかすがついていたらそれがたんにサインになる。伝達しているという主体的なものであろうが、単に動く看板であろうが、オートポイエーシスの維持としてはどっちでもいいという解釈になる。
</蛇足>




11、オートポイエーシスの用語その2
追加で必要になってきた用語について定義する。
これが分からないとtellはオートポイエーシスシステムにとってどういう意味を持つものなのかが分からない。

(1)擾乱
オートポイエーシスシステムになんらかの変化を与えるような働きを擾乱と呼ぶ。
さて、どんな形式があるか。
@構成素が別のオートポイエーシスシステムで産出され、擾乱が起こる
A構成素以外の産出物(←これにもきちんとした述語が欲しいね)が別のオートポイエーシスシステムで産出され、擾乱が起こる
tellがこれに当たる。詳しくは後述。
B環境自体が変化して、擾乱が起こる
エサがフィールドに投入されるとこの状態になる。詳しくは後述。


(2)相互浸透
環境がオートポイエーシスシステムにたいして擾乱を起こし、かつオートポイエーシスシステムが環境になんらかの変化をおよぼすような状態を相互浸透と呼ぶ。
オートポイエーシスシステムにおいては、ほぼ日常的に行われている動作。
ここではtellが構成素以外の産出物としてシステムによって産出され、同時に産出されたtellによって、ほかのオートポイエーシスシステムに影響を及ぼす。
また一方で、エサが入ることで環境が変化する。エサを発見することでオートポイエーシスシステムは変化し、また同時にエサが減ることで環境もまた変化する。


(3)構造的カップリング
構造的カップリングとは、複数のオートポイエーシスシステムが、互いに環境として擾乱を生じあっている状態のことを言う。
相互浸透において、オートポイエーシスシステム同士の関係のみを示す述語。
物理学や工学で用いる用語だと、共振に近いイメージ。
複数の、という点が面白くも厄介。100個のオートポイエーシスシステムが互いに擾乱を起こしあって共存しているような状態も考えられる。
いま説明に必要なのも、実は複数のシステムの共存。


(4)一階言及システム
@元のオートポイエーシスシステムを環境として構造的カップリングを行っており
A元のオートポイエーシスシステムに依存している
こんなオートポイエーシスシステムを、一階言及システムと呼ぶ。
俺の当初の狙いは、先に書いたアリ一匹のプログラムを示している状態遷移図から、一階言及システムが作れるかどうかということだった。
んでも撃沈した。
構造的カップリングの定義を含めた上で、再度一階言及システムの条件を定義づけてみると、
@複数のオートポイエーシスシステムが互いに環境として擾乱しあう
A擾乱によって変貌する前のオートポイエーシスシステムAは、変貌後のオートポイエーシスシステムBと相互に擾乱を起こしている
B変貌する前のオートポイエーシスシステムAが死ぬと、一蓮托生で一階言及システムであるオートポイエーシスシステムBも死んでしまう
といった具合になる。
今回のプログラムの場合、残念ながらオートポイエーシスシステムが一蓮托生で死んじゃう、という状況には陥らない。若干期待していただけに残念。

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