2008/5/16  20:40

さすらいの男(18)【サラ】  さすらいの男

胸がドキドキしている。
足がもつれてしまう。
後ろからは追っ手がついてくる。
私達は走った。

どれくらい走ったのだろう。
「と、とりあえずは大丈夫だろう」
レイが言った。
私は苦しくて何も言えない。
ただ呼吸を繰り返すだけ。
「つ、疲れた…」
そういって座り込んでしまった。
こんなに走ったのは初めて!
本当に体力の限界を感じた。
「大丈夫か?」
レイはそんなこともないみたいで、
少し息は切れているものの、私みたいにへたり込まない。
「レイ、は、平気、なの?」
切れ切れに言った。
レイが私の隣に腰を下ろす。
「ああ、俺はなんとかな。しっかし驚いたぜ!
 何を言い出すのかと思った」
はははとレイが笑った。
「ああ、言って、おけば、下手な相手が、近寄らなく、なるでしょ」
まだ呼吸が苦しい。
でも気分は爽快!
「レイ、ごめんなさい。あなたを、こんな形に巻き込んで。
 でも心配しないで。お父様にはきちんと説明するから」
「そうしてくれ。殺されかねないからな」
ふふふと私も笑った。
あんなことを宣言してしまえば、余程の物好きでなければ、
私を娶ろうなんて思わないはず。
たとえ「私は潔白です」
なんて宣言しても、後ろ暗いうわさは残る。
きっとサルツブグル家も手を引いてくるだろう。
お父様とお母様は嘆くだろうけど。
「うちに帰ったらどうなるかしら。
 勘当されたりして」
「そうなるかもしれないぜ。
 そうしたらどうする?」
「家を出るしかないわね。そして私は自由に暮らすわ。
 何にも縛られない、私になるの」
「そりゃあいいな」
一緒に私達は笑った。


その時ふと、レイと目が合った。

何となくはずすこともできずに、何となく見つめあう。

何となく自然に、顔が近づいていく。

そうすることが自然なように。

そして…



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