2008/7/20  21:26

無題  分類なし

追悼

終生の友、人生の楽しさを教えてくれた彼を偲んで。
到々彼のお嫁さんを見ることが出来なかった。
残念だ。

ありし日の彼の書き物



こんな事が人生で二度繰り返されるとは思わなかった。
一度は融けたこころがまた凍えた。

少し、休みたい。

2008/7/7  22:44

ファイトー!ファイトー!ファイトー!  分類なし

如何も髪が多いと思って居ったら半年も切って居らなかった。
或れば或る丈何かの役に立つなら蓄えても於くが、防護帽の代わりに成るでもなし、
バットで殴れば矢張り痛かろうし血も出よう。
寧ろ常に目の前にぶら々々して始終居酒屋の暖簾を潜って歩いて居る気分に
させられるのだから喉が渇いて堪らぬ。

馴染みの髪屋に出掛けて此方へお掛け下さいと云われるが侭に腰を下ろす。
程無くして新たな客が我輩の隣に座る。
少々恰好を付けた男で或る。
大体に於いて女性客が多い店で、我輩は何時も肩身の狭い思いをして居ったから
他の男性客が居るのは心強い。

やがて洗髪台に呼ばれる。
首の位置は好いか、湯は熱くないか、力加減は好いか、洗い足りない処は無いか、
全ての問いに「はい」の一辺倒で済まして居ったが、隣で洗髪を始めた男性客が
徐に洗髪係へ向けて喋り出す。
今日は暑いですね、もう溶けちゃいそうですよ。
何だ此の馴れ々々しさはと、知らず身構える我輩とは裏腹に、うふふ本当ですねと
彼の洗髪係が追従する。

同じ設備で同じ人員が同じ作業をして居るのに、此処と隣では何が其んなに
違うので或ろうかと不思議で成らぬ。
庭で云う成らば子供達が駆け回り賑やかで楽しいお隣に対して我輩の処は時折
獅子脅しがコンと鳴る侘しい庭の様で或る。
同じ鯛で以って隣が豪華な活け造りを拵えたのに我輩は蒲鉾を作って仕舞ったかの
如き寂しさで或る。

一つ我輩も何か喋って遣ろうと思うのだが何を喋って好いやら見当も付かぬ。
暑くて溶けそうだ等と云う、言葉とは反対にお寒い冗談を云う様な真似はしたくない。
とは云え熱い冗談も持っては居らぬ。
成らばどんな冗談を持って居るかと考えるに、きつい冗談位しか持ち合わせが無い。
と、冗談の不足に頭を悩ませて居って不図気付く。
冗談の過不足は兎も角、そも々々不足して居るのは社交性で或った。
流し足りない処は御座いませんか?
我輩は「はい」と云った。

鏡の前に座ると担当のNさんが遣って来る。
今日は如何されますか、との問いに、何時もなら何ヶ月分戻して呉れと云って居る
処で或るが、先刻の洗髪の影響が出たので或ろうか、来月同窓会が或るので…
とつい口から出る。
同窓会が或るので如何したいかと云う肝腎の部分を考えて居らなかったのは我乍ら
些か迂闊で或った。

処がNさん、或るので…を如何解釈したものか、即座に答えを見付け出す。
判りましたと請け負って、素早く美容雑誌を持って来る成り探しもせずにお目当ての
頁をぱっと開き、此んな感じで如何でしょうと提案する。
勿論此れの此処を此う云う具合にですね、とNさんは語り出す。

然し残念乍ら説明が頓と理解出来ぬ。
雑誌に載る様な人とは元が違うのだから、土台の違うものの上で話をされても
想像が追い付かぬ。
第一我輩は鏡も自分の写真も見るのが嫌いで或る。
我輩に理解出来るものと云えばNさんの熱意丈で或る。
其れで好う御座んすと我輩は答えた。

数十分後、床には其の侭足が生えて物凄い勢いで逃げ回りそうな毛の塊が或り、
腕には寝汗で張り付いた髪の毛が、猿人立場が逆に成った映画の特殊メイクの如く
纏わり付き、鏡の中には有野課長が居った。
Nさんがシャギ々々と斜めに切って呉れたお陰で前髪がギザ々々して居る。

何かワックスでも付けましょうかと訊かれ、普段なら丁重にお断り申し上げてNさんの
水仕上げで以って一夜限りのスタイリングを楽しむ処で或ったが、つい油断して
はい其うしましょうかと答えた時のNさんの喜び様は忘れられぬ。
彼は我輩がお洒落に目覚めるのが余程嬉しいらしい。
我輩も其んなに喜んで貰えるのなら一日髪が固まる位我慢せんでも無い。

さっぱりしましたねー、と自分の事の様に云うNさんに見送られて髪屋を出る。
何と無く好いことをした気分で浮かれて居ったからだろうか、帰り道の薬屋で
小さなヘヤワックスを買う。
其の侭すっかり忘れて居ったのだが、夜中に急に思い出して頭にワックスを付けて
遊ぶ。
ツン々々と髪を立たせて鏡を見る。
黄色く染めたらナルトみたいだと気付く。
ちょっと嬉しい。

2008/6/18  21:30

負んぶしたからには  分類なし

休日に携帯が鳴る。
否、拠り正確には携帯が震える。
周囲への気遣いで音の出ぬ設定にして居るのだが、誰からも相手にされぬ我輩で
或るからして無用な気遣いと云える。

其れでも偶に着信が或る。
驚くのは我輩で或る。
若し我輩が猫なら二メートル程後ろに飛び退り、胴体と同じ位に尻尾を膨らませて
ふー、と唸って居る処で或るが、我輩は猫では無いので飛び退る丈にして於く。

恐る々々携帯を手に取るが、震える携帯を持つのが余りにも久し振りで或った為
釣れたての石鯛を掴んで居る様な心持ちがして少々怯える。
誰からで或ろうかと表示窓を視るが、電話番号が書いて或る許りで誰だか頓と
見当も付かぬ。
知らない電話には出ない方が好かろうとは思うが、知り合いが誰かから我輩の番号を
訊いて掛けて来たのかも知れず、知らないか知ってるか知らない電話には如何
対処したものか考えあぐねて居る内に指が勝手に通話釦を押して居た。

己の指の行動力に狼狽し乍らも、電話を受けて仕舞ったからには喋らねば成らぬ。
はぃ・・・と、ひと月振りにコーヒーを飲もうと思い立ち其処で不図其う云えば最後に
飲んだ時フィルターを捨てたっけかなと曖昧な記憶の侭フィルターの蓋を開いて視る
が如く不安に打ち震え乍ら発声すると、電話の向こうは○○さんのお宅でしょうかと
生真面目に云う。

何か妙で或る。
少なくとも相手は○○の「携帯」に掛けて居る積もりで或ろう。
其して○○とは我輩の名で或る。
其処迄は好いのだが、あちら此方に持ち運べるから携帯電話なので或って、
とすれば○○さんのお宅ですかは可笑しい。
若し我輩が外出中なら、はい○○ですがお宅じゃありませんと応えねば成らぬ。
此れではヲタクと揶揄されて必死に否定する人の様で非常に恥ずかしい。
其れも外出先で云わねば成らぬのだから困る。

幸い我輩はお宅に居った為、又相手が知って居る人らしいと判った事と合わせて
二重の安堵感で以って、はいと返答すれば、相手は急に砕けた態度に変わる。
おー、○○が?俺、××だ!久し振りだのう!あはははは!
高校時分の同級生で或った。

何でも夏に同窓会をするに当り葉書を送るので住所を教えろと云う内容で或った。
田舎の同級生と判れば我輩も瞬時に使用言語が切り替わる。
オー、ゴグロサン、ゴグロサン、と薬品名見た様な挨拶はご苦労さんの訛りで或る。
ドーシッタヤ?と近況を尋ね、ドモサネノーと恙無きを伝える。
愉快で或る。

愉快では或るが、我輩が何か一言云う度に相手がげら々々笑うのは腑に落ちぬ。
我輩の訛りの腕が落ちて妙な風に聞こえるので或れば少々哀しいが、如何も
其んな雰囲気でも無い。
薬か何か遣って居るかの様なテンションなので或る。
久し振りに級友の声を聴いて昂揚して居るので或れば光栄だが、少し薄気味悪い。

兎に角住所を伝え、行けたら行くと云って電話を切った。
其れから暫くして往復葉書が届く。
今年は特別だとかで、クラス会では無く学年規模で集まると書いて或る。
我輩は悩む。

特別で無い年には呼ばれて居らぬ。
否、呼ばれて居っても親元で招待状が止まって居る。
珍しく親元の手を逃れ、魔王が追って来るよと泣き乍ら我輩の元へ葉書が
辿り着いても其の時には期限切れ、既に葉書は息絶えて居る。
此んな我輩がのこ々々顔を出した処で歓迎されるで或ろうか。
歓迎されない迄も、迫害されたりはすまいか。

元拠り髪は濃いが、髭と影は薄い人物で或る。
居て楽しい人間でも嬉しい人間でも無い。
寧ろそっと居なく成っても気付かれぬことを特技として居る位で或る。
記念撮影で無駄に空間を埋めて一人当たりの顔面積を僅か乍ら小さくする以外
影響の無い我輩が出席する意味が何処に或ろう。

然し人に訊いたら話の種に行くべきだと云う。
同級生の一人からも出ないかとメールが来る。
行くべきか如何しようか。
未だに思案中で或る。

2008/6/16  14:16

世の中の人の情けなんて思い出しもしないよ  分類なし

帰ってみれば一時半を周って居る。
今直ぐにでも大の字に倒れ込んで肺の中の空気と伴に濁点混じりの「はぁー」を
吐き出したい処で或る。序でに魂が抜けることも或る。
玄関の鍵穴に鍵を差込み、開錠しようと試みるも何故か上手く行かぬ。
はて鍵を廻す体力も無く成ったかと驚きつつも、何の気無しに鍵を逆に廻すと
施錠出来た。
一日鍵が掛かって無かったらしい。

物騒と云えば物騒だが仮令泥棒様が多忙の中足をお運びに成っても貴重品等
何一つ無いのだから其の御足労に対し却ってお詫びせねば成らぬ位で或る。
寧ろ斯様な詰まらなくも下らぬ日記を読まされる事に腹を立てた誰かが、記事の
リンクを外して自らの安全を求めるのに飽き足らず、他の読者も助けて遣ろうと云う
殊勝にして立派な志で以って、諸悪の根源で或る我輩に直接天誅を下そうと試みた
結果、バールの様なものの様なものを手に暗闇に潜んで居ると云った可能性の方が
高い様に思われる。

我輩の有害な日記を天に代わって無効化するのは尊い事で或ろうが、其の手段も
又高貴で或ろうかと成ると別で或る。
やあ々々我こそは、姓は骨皮、名は筋衛門、善良成る庶民の視神経と精神を
貴様の下賎な日記から守る為神に使わされて参上仕った。さあ此の丸太ん棒で
ぶん殴って遣るから一寸頭を前にお出しなさい、と云われて判りましたはいどうぞと
頭を出す我輩では無い。
きっと毎朝の階段で鍛えた脚にものを云わす算段で或る。
名乗った処で逃げられると成ると、無事天誅を下すには物陰に隠れて急襲する拠り
他に無い。
神の使いにしては少々卑怯臭い様だが致し方無かろう。

殴られるのを判って居て頭を出したりせぬ様に、物陰に潜んで居るかも知れぬのに
無用意に家に這入るのは危険で或る。
頃は深夜、何時戻るとも知れぬ我輩を待ち侘びた骨皮氏がつい居眠りをして居った
場合、心の準備も無く我輩と対面し驚きの余り大声を上げたりすれば近所迷惑でも
或るし我輩も又吃驚する。
かと云って小さくひいいと囁く様に叫ばれたのでも気味が悪い。

此処は礼儀として、先ず玄関を開けたら灯りも点けずにただいまあと挨拶をする。
此れで侵入者にも心の準備をする余裕を与えた事に成る。
我乍らフェアで或る。
其して徐に茶の間の扉を開け、スッと後ろに一歩下がる。
襲って来る者が居らぬと瞬時に悟り、スッと一歩前に出る。
流るるが如き美しい所作で或る。
但し己の小心振りに顔は真っ赤で或る。

其れからは豪胆に次から次と不審者の潜んで居そうな場所を調べて廻ったりする
様なことはせぬ。
台所に赴き、包丁を研いでみようかしらと呟いたり、ブン々々と音を立ててフライパンを
素振りして見たりする。
我輩の手元に物騒なものが或るよと潜伏者に暗に知らしめ、且つ怖気付かせ、
果ては我輩に見られぬ内にこっそりと脱出する機会を与える為で或る。
無用な流血沙汰を回避するのは格闘の上悪漢を捕獲する拠り賢い遣り方で或る。

出来得る事なら話し合いで解決したい処では或る。
此れ々々斯様な訳で日記を書くのはもう止すが好いと云われれば、我輩とて
左様ならば止します左様ならと素直に聞く耳を持つ所存で或る。
然し黙って侵入する位の御仁は多かれ少なかれ逆上して居るもので或ろう。
まともに話が出来るとは思えぬ。

さて遣れる事は遣った。
賊は逃げたかも知らんし、逃げそびれたかも知らん。
或いは端から侵入者等居らぬかも知らん。
然し疲れた。
独りで暴漢対策模擬演習をする事以前に、日中の仕事で疲れた。

寝る事にする。
殴るなら殴れば宜しい。
態々やあ々々我こそはと遣らずに黙って静かに殴って呉れると有り難い。
此う云う意図で殴りましたと紙にでも書いて横に置いて於いて貰えれば充分で或る。

無かった事にして欲しい恥ずかしい記念写真見た様な半開きの目で寝室へ向かう。
と、後ろでガシャンと音がする。
溜息混じりにゆっくりと我輩は振り返る。
云い忘れて居たお休みを云い乍ら、与え忘れて居たおやつを飼いネズミに与える。
おやつを忘れられた腹癒せかも知れぬが嚇かそうったって其うは行かぬ。

2008/6/2  23:03

はい、風蓮湖があるところです  分類なし

書き掛けの記事を増やした侭で到々六月に成って仕舞った。
職場環境の変化も甚だしく、辞する者も多々或れど名残を惜しむ暇も無い。
然し辞さぬ者も又居る訳で、寧ろ辞して欲しい位の小父さんの不手際で以って
図らずも文字通り忙中に閑有りと成った時間を不毛に活用すべく此れを書く。

つい先日、職場を去る人の送別会で或った。
地味乍らも頼りに成る小父さん一人と、職場に華やかな花を添えて居った若い
女史二人が同時に姿を見せなく成るのは残念で或る。
纏めて送別会をして呉れれば好いものを、人の出処の問題とかで小父さん送別と
女史送別という別々送別に成ったのも又残念で或る。
其して同じ部署で或ると云う理由で小父さん送別組に成ったのは好いとして、
二次会から女史送別に駆け付けようかとの申し出を、お呼びで無いと一刀両断
されたのは残念と云う拠り恥辱の極みで或る。

何が厭と云って、職場のトテモエライ人が同席する事程厭なものは或るまい。
何しろ面倒で気疲れする。
我輩は早々に偉い人々の座らぬ下座に席を極め、梃子でも動かぬ構えで或る。
其処に我輩が育てたと云っても過言では無い後輩女史が遣って来て、とーますさん
どいて下さいと云うから一つ隣にずれた。
いや、我輩は此処が好いのだと云っては見たのだが、いいからの一言で片付けられた。

エライ人がビールをじゃん々々持って来いとボイに云うのでビールがじゃん々々来る。
東京エール三番とか云うてんで泡の立たぬだらしの無いビールを仕方無しに飲む。
其の癖エライ人は途中からワインを飲んで居る。
其して大きな声で喋って居る。

料理が運ばれ四人で一皿の勘定で卓に置かれる。
端の席には我輩と女性許り三人で、黙って踏ん反り返って居っても後輩が勝手に
小皿に取り分けて呉れるので楽で或る。
取り分け乍ら後輩が、今自分が此処に居るのはとーますさんのお陰ですと甚だ
豪快に持ち上げて呉れるのは有り難かったが、とーますさんは十の内六しか
教えて呉れず後は自分で考えさせるから不親切だっただの、集計表のマニュアル本を
渡された時は一週間の休暇を全て其れを読むのに費やしたのだから休みを還して
欲しいだのと感謝には程遠い叙述許りなのは勘弁して欲しかった。

やがて我輩卓の一人が子供を迎えに行くので退席し、次いで後輩が友人の見送り
の為に帰る。
料理は愈々本格的な飯物に成る。
気付けば我輩と残ったもう一人の女性で四人前を受け持って居る。
残留女史は我輩に輪を掛けて喋らぬものだから、する事と云えば食うか飲むかしか
無い。

話をする位なら嚥下器械に成り果てる方が益しと云わん許りの勢いでフォークを
上げ下げして居ると、エライ人が何か話を振らねば可哀想と思ったのか何なのか、
貴方は温泉に行くかとかサントリーレッドを知って居るかとか、如何でも好い事を
訊いて来る。
エライ人が我輩の湯治経験やら酒の好みに関心が無いのを我輩は知って居るが
同じく我輩がエライ人の旅行記や酒の知識に関心が無いのをエライ人も恐らく半ば
判って居るに相違無い。
其処で繰り広げられるはい/いいえの質疑応答は、後々あの時は話が大いに
盛り上がりましたとエライ人の記憶に残るので或ろう。

此う云った時に誰とでも楽しく会話が出来る人間が羨ましい。
折角だから思い切り会話を楽しめば好かろうと思う人も居るだろう。
へえ其うですかと話に食い付いて、興味深い振りをしてうん々々頷いて損は或るまい。
我輩とて相手に拠っては楽しく成らん事も無い。
然し拠らない相手だと如何してもなけなしの社交性を散財する気に成らぬ。

何が拠らぬと云えば、如何だ面白いだろう、此の知識は知らなかったろう、
為に成って有り難かろうと一々人の顔を覗き込む様な話し方に辟易するので或る。
其れは面白い、存じませんでした、恐れ入りましたとニコ々々笑って受け答えをする
先輩社員は何かしら特別な訓練を積んで居るのかも知らんとさえ思う。
話し手の自慢話拠り寧ろ其方を尊敬する。

斯様な具合で時間は流れ、漸くビールも片付いた頃には料理と話で満腹で或る。
飲み物を勧められても這入る余地は少なし、且つ退屈も手伝って、飲み物を極める。
メニュに無いものは別料金で或ろうと妙に分別を働かせた我輩はちゃんとメニュに或る
ウォッカトニックの、トニックと氷抜きを頼む。
ラストオーダーだと云うのでもう一杯頼む。
其れを視ていたエライ人が頼みもせぬのにもう一杯頼む。
其処で漸くお開きに成った。

楽しかるべき宴の席で素直に楽しめぬ自分は唐変木で或る。
否、楽しい部分も或ったには或った。
然し矢張り苦手なものは苦手で或る。

満腹の侭店を出て、今度は四人で居酒屋へ行った。
小父さんが頼んで食わなかった焼きおにぎり二個とと焼酎二杯、
腹のどの隙間に這入ったのか今以て不思議で或る。

2008/5/19  18:01

牛と鳥それぞれ  分類なし

時事問題は極力書かぬ様にして居る積もりで或る。
特に政治経済に就いては敢えて書かぬ。
其れは我輩が常に中立の立場に居る極普通の一般人で或ると云う姿勢を貫く
事で、何時でも誰にでも楽しめる日記で或れよかしと云う願いを貫く為なので或る、
等と立派な事は云わぬ。
只単に斯様な場所でご披露出来る意見を持ち合わせぬ丈で或る。

然し其の時々々の社会現象に就いて多少言及する事は或る。
後に読み返して当時を偲ぶ風物が書かれて居れば楽しかろうと思うが故で或る。
残念なのは誰も、我輩を含め誰も読み返さぬと云うことで或ろう。
仮に読み返してもにがりダイエットの話等今読んでも楽しくも何とも無いから
如何でも好いと云えば如何でも好い。

さて最近スーパーに行くと気付く事が或る。
バターが不足して居りますので御一人様一つ限りとさせて頂きますと云う知らせの
文章と、空っぽのバター売り場で或る。
無いなら無いと書けば好かろうに、如何にも或ることは或るけれども買い求めるのが
遅過ぎたのだと云わん許りの書き様は腹に据え兼ねる。

成らば朝一番に並んでバターを御求めに成って遣ろうか、おう々々々々と腕捲りして
怒鳴り散らす我輩では無い。
何と成れば、バターを使う料理等滅多に遣らぬからに他成らぬ。
然し口惜しい。
欲しくも無いバターでは或るが、自分丈買えないと成ると妙に口惜しい。

其処で普通のマリーさん成らば、バターが無ければマーガリンを買えば好いのにと
云う処で或ろうが、我輩のマリーさんは其処らのマリーアントワさんとは一味違う。
バターが無ければ作れば好いのに、と彼女は云う。
我輩はバターを作る。

何、作ると云っても大したことは無い。
生クリームと濃い牛乳をペットボトルか何かに入れて振る丈で或る。
塩は好みで入れても入れなくても好い。
早速五百ミリリットルの容器に材料を入れ、蓋も飛べよと秤りに振って見た。
忽ち液漏れで或る。
勝って兜の緒を締めよ。振って泣く拠り蓋締めよ。
再度蓋をきつく締め直し、文字通り振り出しに戻る。

じゃぼ々々遣り始めて物の一分も経たぬ頃、音が聴こえなく成る。
我輩の強烈な振りに耐え切れず早くも音を上げてバターに成ったか未熟者めと
容器を見るが、未だどぶり々々とした液状で或る。
如何やら泡立って液が動く余地が無く成ったらしい。
欲張って材料を入れ過ぎた。

少し液体をコップに移してじゃぼ々々再開で或る。
這入って来た団体客に揃いも揃ってマティーニを註文されたバーテンダーの如く、
猛烈な勢いで容器を振り続ける。
手を持ち替え、或いは両手で前後、左右、上下とあらゆる方向に揺さ振る。
必死過ぎて我乍ら気味が悪い。
事情を知らぬ人には絶対に見せたくない姿で或る。
仮令事情を知って居っても、見せたくない姿で或る。
若し此の侭世の中のバター不足が続き、自家製バターが流行する事にでも成れば
「相手のバターを作る姿に冷めた」が離婚の原因の上位を占めるに違い無い。

やがて腕が痛く成って来る。
尋常で無い汗が噴き出す。
此れでは丸で拷問では無いかと思い始める。
虎を連れて来てぐる々々走らせた方が簡単な様な気さえして来る。
斯様な労力を振り絞って結局バターが出来ませんでしたでは振り損の疲れ損の
汗噴き損で或る。
今更辞める訳にも行かぬ。

最早鬼の形相で或る。
ハァ々々と息を切らせ、ポタ々々と汗を滴らせ、もう動けまいと云った処から今一度
歯を食い縛り、力を振り絞って容器を振る。
少年漫画なら立ち去り掛けた敵が振り向いて「馬鹿な、何故未だ動けるのだ」と
問い質す処で或り、ヒロインが泣き乍ら「お願いもう止めて」と懇願し出す場面で或る。
其処で恰好の好い極め台詞でも云えれば好いのだろうが今の我輩に云えるのは
哀しい哉、ハヒー、々々、のみで或る。

其の内に余程疲れたので或ろう、液体の揺れがどんぶらこっこ々々と二段階に成って
腕に伝わる様に成る。
無念、最早此処迄と容器を卓上に立て、櫻の下にて我死なんと辞世の句を
認めようとして不図見ると、容器の中が黄色く聳え立つ塔と其れを取り囲む青白い
お濠に成って居るのに気付く。
無脂肪乳池に浮かぶバター城で或る。

コップに無脂肪乳を移し、ペットボトルを切り開いてバターを取り出す。
多少緩いので伸して水分を取り、完成で或る。
舐めて見た。美味い。美味いが然し。
我輩が素直に喜べないのは何故か。

折角作ったバターの使い道が無いからかも知れん。
作ったバターの材料費で何倍もの市販のバターが買えて居ったからと云うのも頷ける。
バターを取り出すのにペットボトルを切り開いた後に、途中で取り分けた材料の残りを
思い出し、其れ用にペットボトルを用意して又振り始めたが、取り分けた時点で
上澄みの部分だったらしく今度は幾ら振ろうが廻そうが一向に固まる気配も無く、
諦めて飲用にしようと口に入れた迄は好かったが塩を入れて居た事をすっかり失念し
其の味に驚いて盛大に吐き出したことも原因して居ると考えるべきで或る。

飛んだドタバター劇で或った。
の一文で終らせて好いものか如何か、二時間悩んだ。

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2008/5/13  18:15

角と尻尾両方静止させる  分類なし

本を買いに街へ出る。
一日何もすることが無い休みに成ったので、此れを機に遣らねば成らぬ事は
多々或れど、一番動きたく成る動機が本の仕入れで或ったので、重要度も緊急度も
低いにも関わらず此れを実行に移そうと思った訳で或る。
此れで「何かは」遣ったと云う云い訳に成ろうと云うもので或る。

インターネットで古本屋を探すと、高田馬場に面白そうな店が或ると云う。
確りと場所を確認し、万端抜かり無く高田馬場に向かうが、幾ら抜かりを無くしても
抜かって仕舞うのが我輩で或る。
第一に失念で或る。
高田馬場の半分は鳩で出来て居る。
BigBoxだとか手塚治虫だとか其んなものは我輩には如何でも好い。
死ねば鳥地獄を約束された我輩は昼に訪れては不可ない街で或る事を
綺麗に忘れて居った。
迂闊にも程が或る。

其れでも折角来たのだからと、ジグザグ歩行や急な立ち止まり、唐突なダッシュと
云った妖艶な動きで道行く人を驚かせ乍ら目的の古本屋へ辿り着く。
其処で第二の抜かり、店が無い。
如何見ても廃墟で或る。情報が古過ぎたらしい。
前後左右を鳩が飛び交う中、途方に暮れる。

然し休日が鳩に怯えて終わりましたでは情けない。
少し移動して何が何でも古本屋に行こうでは無いかと思ったのは上出来で或る。
古本屋と云えば神田、寿司喰いねえ、とガッツチョロ松も云う様に、神田に行けば
何とか成ると思い地下鉄に乗る。
降りた神田で又鳩に襲われるとは流石の我輩も思っては居らなかった。

暫く彷徨したが古本屋が見付からぬ。
困った時には人に訊く、此れが我輩のモットーで或る。
交番を見付け、先ずは挨拶をする。
好く舐められては不可ない等と云う人が居るが、物を訊ねる時は少し位舐められた
方が相手が親切にして呉れる場合も或る。
両手を前に揃えて今日はと声に出し、頭を下げる。
如何やら右も左も分からぬいたいけな田舎者と思わせることに成功した様だ。
思わせるも何も最初から土地勘の無い田舎者に変わりは無いのでは或るが。

一寸物をお訊ね致しやす、神田へ出ては見たんで御座んすが古本屋が或るのは
何処辺りで御座んしょうかと及び腰で問えば若い公僕、地図を指でなぞり乍ら
丁寧に教えて呉れる。
丁寧過ぎて言葉が全て平仮名に聞こえる。
余程可哀想な人だと思ったに違い無い。
有難う御座いましたと再び両手を前にして腰を折る。

てく々々歩いてもうそろ々々此の辺りだろうと見当を付けたが何故か運動用品店しか
見当たらぬ。
我輩の目的と此れ程対極的な店も或るまい。
普段喋り慣れぬから巡査様に正しく日本語を伝えられなかったので或ろうかと
些か心細く成って来た処でちらほらと、古本屋らしき店が見えて来た。
少なからず安心すると伴に、こんなに日本語に自信が無い侭ブログ等書いても
好いもので或ろうかと消沈する。

大きそうな店にふらりと這入り込むと堪らない。
素敵な本がそれはもう売る程沢山置いて或る、と古典的な冗談しか浮かばぬ位
我輩は浮かれる。
軽く足が痛く成る迄吟味に吟味を重ね、品今品未位には成ったかと云った処で
二冊購入、疲れ果て帰路に就く。

店を出た処で更に沢山の素敵な店や、古本屋の案内所迄或ることに気が付く。
然し疲労困憊して廻る事は叶わぬ。
何と無く祭の縁日の一等手前の焼き蕎麦屋で目一杯喰い過ぎて真っ直ぐ帰る
間抜けの様な心持ちがしないでも無い。

其れでも本を購入出来たので機嫌は好い。
今回は少し頑張って長く濃く分厚い本にして見た。
二冊或るから少なくとも二箇月は読む物に困ることは或るまい。
ホク々々した侭家に辿り着き、矯めつ眇めつ買って来た本を眺めて不図気付く。

大き過ぎて普段持ち歩く鞄に僅か這入り切らぬ様だ。
頭の中が三点リーダで一杯に成った。

2008/5/9  17:59

この子は将来立派な人物になるだろう  分類なし

黄金週間は暦通りと云われても、何処の暦か訊いて於かぬと豪いことに成る。
不自由を常と思えば不足無し。
無論我輩は当たり前の如くホンシャの暦で働いて居り、普通の平日勤務と
変わり無いと判っては居り乍ら、節電の為己の上丈灯した蛍光灯の元で仕事をする
手を不図休めて職場内を見渡せば、少々損をして居る様な気がせんでも無い。

然し乍ら土日は我輩も休みで或った。
其の一日を掃除洗濯買い物に費やし、残り一日を何時もの如く洒落たカフェテリヤの
オープンテラスでアールグレイ・チーをゆっくり啜りながらサリンジャーを読み、帰りに
ワインとチーズと紙袋から飛び出たフランスパンを買って居る様な人からは汚いものを
見る様な目で蔑まれようとも、断固テレビの前に根を生やす決意で居ったのだが
危ない処で用事が或ったのを思い出す。
伯父の徳さんの一周忌で或る。

今回は折角だから余り話をしたことの無い親戚の子供達と親睦を深めようと画策する
我輩で或ったが、子供達は小学五年生から大学四年生と云う青き春を謳歌する
若人許り、話題も合う筈が無い。
序でに云えば我輩は同年代の人間とも合わせる話題を持ち合わせぬ。
仕方が無いので取り敢えず手品のネタを仕込んで於く。

当日、集合場所で或る従兄の家に到着し、車を此処に停めろと云われて見れば
奥に一台既に停められた其の前の空間で或るが明らかに不十分で或る。
犬小屋から首を出す犬見た様に道路に鼻面を突き出して停めねば成らぬらしい。
其れでも責めて少しでも鼻先を引っ込める努力丈はしようとギリ々々迄車を
下げた処、どんと云う音がして後ろの車に当たる。
幸い双方の車は凹まなかったが我輩が大いに凹む。

移動して墓場で或る。
割と新しい墓場の様で、墓石も「○○家之墓」と云った習字の墨の親分見た様な
もの丈で無く、妙に安定感の好さそうな形状の表面に「旅路」だの「愛」だの
「まごころ」だのと旧弊な我輩には凡そ墓石とは思えぬ文句が掘られて居る。
「華」やら「思い出」やら掘られたのを見ると最早何でも好い様な気に成って来る。
我輩が掘って貰うなら「馬鹿の墓」が洒落て居て好かろうと思う。
或いは墓の字の右肩に点々を付けた方がシンプルかも知れぬ。

墓地の入り口に或る一寸した集会場と云った趣の建物で法要を行う。
御焼香の段に成ると坊さんはBGD(バック・グラウンド・読経)と化すのが一般だと
思って居ったが今回の坊さんはBGMたるべく本当に唄い出したから凄い。
経の抑揚とは明らかに違う、演歌とムード歌謡の混血とも云うべき艶やかな歌を
唄って居る。
若しかしたら本当に或る歌謡曲に仏法用語で替え歌を付けたのかも知れん。
其う云えば教会の賛美歌も大方其うで或ったから多分間違い無いだろう。
勝手に歌詞を変えて誰かみたいに怒られなければ好いが、と坊主のお袋の如く余計な
心配をして見る。

其れが終ると墓に行って納骨で或る。
唄う坊さんは其処で拝んで直帰の積もりらしく、肩に鞄を引っ提げて登場する。
鞄のポケットから携帯のストラップが揺れて居る。
随分とハイカラな坊さんだと思って目を凝らすと、其のストラップが鬼太郎だったので
危うく噴き出す処で或った。
げげげのげー。

此れで法要は恙無く終わりで或る。
後は場所を変えて皆で飯を喰うのだが、余りに恙無さ過ぎた所為で飯屋の準備が
間に合わず、時間を持て余す。恙無さ故に恙無く無く成って仕舞った。
其んな時こそ子供達と交流すれば好かったので或ろうが、子供達が寄って来ぬの
だから仕方が無い。
相当嫌われて居るらしい。

と思って居ったが、ぼち々々(墓場丈に)飯屋へ移動しようと云う時に子供の一人が
「とーますお兄さんの車に乗りたい」と云い出す。
何が嬉しいと云って、其れ程嫌われて居ったのでも無いらしいと云うこと拠りも
子供等に「とーますお兄さん」と呼ばせる親の躾の好さに感服した次第で或る。
お兄さんとしては満更でも無かったが、子供が飯屋への道を知らなかったので
とーますお兄さん号は従兄の奥様と御老人専用車として走り回った。

一度は回復の兆しを見せたお兄さん人気で或ったが、食事会の席では再び
世界恐慌並みの大暴落で或る。
只の一人として我輩の方に寄っても来ぬ。
余程我輩が恐いので或ろう。
仕様が無いので一番小さい子供を捕まえて、鞄に入れて居た漫画本をちらりと
見せると、おおすげー!と驚いて居った。

其れ丈で或る。
家に帰り例に拠って誰にも塩を振って貰わず玄関を潜り、喪服を脱いで横たわる。
子供には人気が或る方だと思って居ったが、或る程度大きく成ると駄目の様だ。
然し未だ乳幼児には人気が或る筈と、今丈は思って居たい気分で或った。
其して手品を遣らず仕舞いだったことに気付いたが、もう如何でも好かった。


取り留めも無いが兎に角長く成ったので投稿する。
取り敢えず、我輩は未だ生きて居る。

2008/4/23  18:12

たった三口手をつけた  分類なし

初めての店なので勝手が判らんのだが、卓に手品師が遣って来て一寸奇術を
仕りますと云うのは普通の事なので或ろうか。
ピンと来ぬ我輩に、○曜日は手品の日なのだ、と此の度の飲み会の幹事、と云うか
何時も会を纏めてくれる学生時代の友人H女史が説明する。

場所が小洒落たワインバー丈に、サービスも又小洒落たものだわいと感心して好いか
呆れて好いか判然とせぬ。
既に手品師は長短一対の紐を取り出してくね々々と捏ね繰り回して居る。
では折角だからお手並み拝見と、じつと視て居ると長短の紐が同じ長さに変わり、
一本に繋がり、結び目が解けて紐と輪っかに別れる。

飛んでも無い、此れは魔法使いの所業で或る。
上手い下手の騒ぎでは無い。魔法で或る。魔術で或る。天狗の仕業で或る。
幽霊か鳳凰でも見て居るかの如き完全成る無防備な姿勢と足りぬ子の馬鹿面で
うっとりと放心の侭術に魅入る。我輩に壷や絵画を売り付けるなら今で或る。

大層な事を云う積もりは無いが、我輩も少しは手品を嗜む。
まあ、素人成りに純真で純粋で純情な人々を吃驚させたりして居る。
外国に行った際は言葉が喋れぬ分何かと重宝したもので或る。

然し本物は決定的に、徹底的に違う。
あの技の前では我輩の手品等、力士が調子に乗ってリリースするレコードにも等しい。
判り辛いかも知れぬが素人が首を突っ込むなと云う喩えで或る。
正確で素早い手指の動き、相手の注意を或は逸らし或は惹き付ける巧みな話術、
人間様を騙して生計を立てて居るのに悪びれぬ図々しさ。

何故斯くも人間は騙されて驚いて不可解に頭を悩ます奇術を喜ぶのか、
理由は頓と判らぬが兎に角面白かった。
マジック、と云うと魔法も手品もどちらにも通じて都合が好い。
須らく人の心を爽やかに驚かすものは手品にしろ魔法にしろ素晴らしいもので或る。
予想だにせぬプレイで観客を感動させるスポーツも又マジックで或る。
上手い謎掛けも「ありがとう」の言葉も花を摘む子供達も皆マジックで或る。

似合わぬ事を書いて仕舞った。只、何か書きたかった丈なので此れ位で辞めて於く。

2008/4/21  18:36

馬に近いものの森  分類なし

歴代ライダーの中でもアマゾンは可也の出色で或ったと思う。
腰に布を巻き付けた丈の恰好で新宿や地下街を走り廻る男が主人公なのだから
侮れぬ。
改造人間にされた主人公は確かに不幸かも知れぬが、其れを演ずる役者も又
何の罰ゲームかと思ったに違い無い。
其れにアマゾンから来たが故にアマゾンとは、Gパンを穿いているからGパンと呼ばれる
のにも似た愚直さが安っぽい。
と、思ったが我輩も又学生時代コートを着て居るからコートと呼ばれて居ったのを
思い出す。我輩も安っぽい。

其れは兎も角、アマゾンで或る。
アマゾンで本を註文したので或る。
電車で読む本が無くなったので調達する必要に迫られ、偶には珍しい本でも物色
しようかなと、時々妙な気を起こす我輩の遣りそうな事の見本と云って好かろう。

先ず作家名で検索をする。
出るわ々々、此れでもか、未だ参ったと云わないかと許りに何処迄行っても次の頁、
次の頁と続く。
此んなにぽん々々書けるのなら作家にでも成れば好かろうと思ったが、残念なことには
其んな生意気な口が利ける程親しい先生では無い。
漸くお目当ての本を見付け、アマゾン拠り発送と云うことで確定する。

さて何が迂闊と云って、我輩が註文した本が実はと或る作品の続編で或ったことを
失念して居ったのは作家のファンと豪語して居った己が口を本返し縫いで以って
塞ぎたく成る陵辱で或る。
然し続編と思い出した丈でも偉かった。
我輩は褒めれば伸びる子で或る。

再びアマゾンを訪問し、前編を探す。
が、如何頑張ろうともアマゾンには置いて無いと云う。
金鎚を集めた水泳教室で行き成りバタフライを教えます見た様な不親切に
目も口も塞がらぬ思いで或る。

ムキに成って探して見れば、アマゾンで無い処で或ればお取り寄せ出来ますとの事。
早速お取り寄せ願った迄は好かったが、少々お時間が掛かりますと云う。
詰まり先には読めぬ後編が直ぐに来て、先に読みたい前編は待たねば成らぬと
云うことで或る。
読む本が無くて註文したのに読めぬ本と届かぬ本しか無いと云う何とも不思議な
事に相成った。

腕を組んで沈思黙考、ううむと一言呟く我輩が出した結論は追加註文で或る。
先に届くアマゾン発送に、軽い本を重ねれば好い。
軽い本とは何ぞや。
漫画で或る。
通勤の往復には不足かも知らぬが多少難し目の漫画でも買って於けば、何かの
足しには成るだろう、其う考えて一冊誂え、到着を待つ。

処が翌日、届く筈のアマゾンが届かぬ。
もう一日待たねば成らぬかと諦めの境地で居ったのだが、虫の報せか、不図アマゾンの
配達状況を見てみる気に成った。
曰く、続編の発売日は翌月で或るからして一緒に頼んだ漫画も釣られ待ち状態、と。
此れ程虫に感謝したことは無い。
放って於いたら何時迄も放って於かれる我輩で或る。
早目に気付いて好かった。

此れの対応は簡単で或る。
翌月発売の註文を取り消せば好い。
すると何が残るか。
画面を観れば漫画一冊と配送料と或る。
配送料?何処から沸いて出たのか。
又好く読んで見れば、一定額以上の註文で配送料無料と成ると書いて或る。
口惜しいのでもう一冊漫画を追加する。
すると配送料が只に成る。
様を見ろ。

翌土曜日。
漫画が二冊届いた。
一寸出だしを読んで見る。
面白い。
一時の繋ぎを選ぶにも我輩の目に狂いは無い。

そして土曜日の夕刻。
如何しよう、通勤で読む本が無くなった。
お取り寄せの前編は未だ届かぬ。
繋ぎが必要で或る。

此う云う訳で、最近我輩は漫画許り読んで居る。
漫画許り読んで馬鹿に成ったりしたらアマゾンの所為だと堂々と云って遣る積もりだが
馬鹿だから漫画許り読む羽目に成ったので或ろうと云われれば返す言葉も無い。

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