2008/5/12 22:50
萩往還250キロ完踏記10−「最後」の11キロ マラニック
仙崎から先は、とよとよさんにもなごやんにも辛い道となった。
さきほど大日比峠で、動けなくなったランナーがケータイでタクシーを呼んでいた。「宗頭文化センターまで」と言っている。我々がそのそばを通過したとき、丁度タクシーがきて、ランナーはやっとこさっとこタクシーに乗り込んでいった。とよとよさんが冗談ぽく、「僕らもタクシーに乗りたいな〜」と言ったので、なごやんは言下に「だめ!」と言った。「その場でリタイアになりますよ」「わかってるって」ととよとよさんは言ったが、あれは弱音を決してはかない彼の本音だったかもしれない、と今では思う。なぜあの時「タクシーを呼びますか?」といえなかったのだろう?もしあの場でタクシーを呼んでいれば、彼はあの後あれほど苦しむことはなかったはずだ。ボルタレンはもう全く効かなくなっていたようだが、足腰が痛くなったことのないなごやんには、いたむ足を引きずって走る、という辛さが全くわかっていなかった。
仙崎についたのは11時過ぎていた。思ったより遅くなっている。間違いなく我々が最後だったろう、エイドの撤収が始まっていて、ひとりバスを待つリタイアしたランナーがいたが、寒いのでバスの中で待ってますわ、と係の人に言って、収容車に乗り込んだ。テントも撤収されるからそろそろ我々も出ようか。あと、4キロ!となごやんが張り切ると、「いやいや、宗頭までは11キロあるよ」と係の人に教えられた。その言葉は、既に痛みにたえかねていたとよとよさんには地獄のように響いたに違いない。なごやんは実は、昨年仙崎から宗頭を通過して瑠璃光寺まで夜間走をしているので勝手がわかっている。しかしとよとよさんは初めての道のようであるので、それだけでも心理的に負担だろう。
既に40時間ほど一睡もせずに走っていると、道を知っているはずのなごやんも意識朦朧となり、地図が読めず、バイパスに迷い込みそうになった。そのために、とよとよさんにはつらいつらい目にあわせたことを反省している。この道でいいのだ、となごやんが気がついたとき、かすかだが、1キロほど先をゆく光を認めた。時々、その光が大きくなる。後ろを振り返ってなごやんたちを確認したらしい。なごやんは手にした懐中電灯を大きく振り回して合図した。「誰かいる?」ととよとよさんが聞く。「前方にランナー発見。まだ走っている人がいますよ!」と励ますが、とよとよさんは精魂尽き果てた様子で歩いたり走ったりを繰り返す。次第にライトが近くなってきた。みると、西本でであった、杖を手にしていたむ左足をテーピングしていた女性ランナーだった。支えるように一緒に走ってきている男性ランナーにも見覚えがある。
我々が追いつくと、「宗頭はこの先ですよね」と男性ランナーが聞いた。「はい、あと4キロくらいかと思いますけど」宗頭はずいぶん山の中に入っていたようなイメージがある。まだバイパスが並行して走っていたから先かもしれない。女性ランナーは辛抱づよく一歩一歩を踏みしめながら進んでいる。決して歩みを止めない。これぞウルトラランナーの強さだ。静かな感動を覚えた。彼らはまた我々をゆっくりと離して先に進んで行った。
とよとよさんは、このころには既に痛みが限界に達していたらしく、ゆっくりと歩き始めた。なごやんはふらふらの彼の足元を懐中電灯で照らしながら自分もゆっくり歩く。もう1時は過ぎただろう。宗頭につく時間を気にした彼が「先に行っていいよ」と言うが、何も答えないで一緒に歩き続けた。こんなところで仲間を置いていけるものか。ゆうべはなごやんが助けられたのだ、無事に宗頭に送り届けるまでは自分が面倒を見る、仲間だもの。
ウルトラのベテラン、ゆきひろとうさんの言葉を思い出さないわけではなかった−これは競争ですからね、ウルトラって言うのは走れなくなった人に付き合っていたら自分がつぶされるんですよ−確かにそうだろう。しかしそれは、ゆきひろとうさんのように超がつくエリートウルトラランナーの話だろうから。なごやんのように最初に250キロの完踏に挑戦する者のレベルではない。それに、なごやんにはひそかに自信があったのである。仮にとよとよさんが宗頭でリタイアするとしても、自分はそうはしない、最後まで走りきるだろう、という自信が。今ゆっくり歩いて脚を休めておくことは、明日の昼、萩往還道に入ったときにとても役立つはずだ。
バイパスを通る車の音が遠くなり、三隅川の音も背後に消えた後に、前方にひときわ明るいライトが見えた。赤い走行ランプをちかちかさせながら大勢の人が出たり入ったりしているのも見える。なごやんは大きく懐中電灯を振って合図をする。向こうからも合図が帰ってくる。「宗頭ですよ。見えましたよ!」
午前2時10分。宗頭到着。ここでとよとよさんはリタイアを宣言した。
さきほど大日比峠で、動けなくなったランナーがケータイでタクシーを呼んでいた。「宗頭文化センターまで」と言っている。我々がそのそばを通過したとき、丁度タクシーがきて、ランナーはやっとこさっとこタクシーに乗り込んでいった。とよとよさんが冗談ぽく、「僕らもタクシーに乗りたいな〜」と言ったので、なごやんは言下に「だめ!」と言った。「その場でリタイアになりますよ」「わかってるって」ととよとよさんは言ったが、あれは弱音を決してはかない彼の本音だったかもしれない、と今では思う。なぜあの時「タクシーを呼びますか?」といえなかったのだろう?もしあの場でタクシーを呼んでいれば、彼はあの後あれほど苦しむことはなかったはずだ。ボルタレンはもう全く効かなくなっていたようだが、足腰が痛くなったことのないなごやんには、いたむ足を引きずって走る、という辛さが全くわかっていなかった。
仙崎についたのは11時過ぎていた。思ったより遅くなっている。間違いなく我々が最後だったろう、エイドの撤収が始まっていて、ひとりバスを待つリタイアしたランナーがいたが、寒いのでバスの中で待ってますわ、と係の人に言って、収容車に乗り込んだ。テントも撤収されるからそろそろ我々も出ようか。あと、4キロ!となごやんが張り切ると、「いやいや、宗頭までは11キロあるよ」と係の人に教えられた。その言葉は、既に痛みにたえかねていたとよとよさんには地獄のように響いたに違いない。なごやんは実は、昨年仙崎から宗頭を通過して瑠璃光寺まで夜間走をしているので勝手がわかっている。しかしとよとよさんは初めての道のようであるので、それだけでも心理的に負担だろう。
既に40時間ほど一睡もせずに走っていると、道を知っているはずのなごやんも意識朦朧となり、地図が読めず、バイパスに迷い込みそうになった。そのために、とよとよさんにはつらいつらい目にあわせたことを反省している。この道でいいのだ、となごやんが気がついたとき、かすかだが、1キロほど先をゆく光を認めた。時々、その光が大きくなる。後ろを振り返ってなごやんたちを確認したらしい。なごやんは手にした懐中電灯を大きく振り回して合図した。「誰かいる?」ととよとよさんが聞く。「前方にランナー発見。まだ走っている人がいますよ!」と励ますが、とよとよさんは精魂尽き果てた様子で歩いたり走ったりを繰り返す。次第にライトが近くなってきた。みると、西本でであった、杖を手にしていたむ左足をテーピングしていた女性ランナーだった。支えるように一緒に走ってきている男性ランナーにも見覚えがある。
我々が追いつくと、「宗頭はこの先ですよね」と男性ランナーが聞いた。「はい、あと4キロくらいかと思いますけど」宗頭はずいぶん山の中に入っていたようなイメージがある。まだバイパスが並行して走っていたから先かもしれない。女性ランナーは辛抱づよく一歩一歩を踏みしめながら進んでいる。決して歩みを止めない。これぞウルトラランナーの強さだ。静かな感動を覚えた。彼らはまた我々をゆっくりと離して先に進んで行った。
とよとよさんは、このころには既に痛みが限界に達していたらしく、ゆっくりと歩き始めた。なごやんはふらふらの彼の足元を懐中電灯で照らしながら自分もゆっくり歩く。もう1時は過ぎただろう。宗頭につく時間を気にした彼が「先に行っていいよ」と言うが、何も答えないで一緒に歩き続けた。こんなところで仲間を置いていけるものか。ゆうべはなごやんが助けられたのだ、無事に宗頭に送り届けるまでは自分が面倒を見る、仲間だもの。
ウルトラのベテラン、ゆきひろとうさんの言葉を思い出さないわけではなかった−これは競争ですからね、ウルトラって言うのは走れなくなった人に付き合っていたら自分がつぶされるんですよ−確かにそうだろう。しかしそれは、ゆきひろとうさんのように超がつくエリートウルトラランナーの話だろうから。なごやんのように最初に250キロの完踏に挑戦する者のレベルではない。それに、なごやんにはひそかに自信があったのである。仮にとよとよさんが宗頭でリタイアするとしても、自分はそうはしない、最後まで走りきるだろう、という自信が。今ゆっくり歩いて脚を休めておくことは、明日の昼、萩往還道に入ったときにとても役立つはずだ。
バイパスを通る車の音が遠くなり、三隅川の音も背後に消えた後に、前方にひときわ明るいライトが見えた。赤い走行ランプをちかちかさせながら大勢の人が出たり入ったりしているのも見える。なごやんは大きく懐中電灯を振って合図をする。向こうからも合図が帰ってくる。「宗頭ですよ。見えましたよ!」
午前2時10分。宗頭到着。ここでとよとよさんはリタイアを宣言した。
2008/5/17 20:02
投稿者:まるちゃん

ゆきひろとうさんの言葉を思い出したにも関わらず。
でも、走りきるという自信は流石です。
そう言えば以前、エレママに言われた事があります。
不安を抱けば、出来るものも失敗すると。。。