2008/5/15  0:29

萩往還250キロ完踏記11−K田ランニング塾  マラニック

宗頭文化センターの食堂は、それまで真っ暗な道を走り続けてきた身にはびっくりするくらい明るく、夜中の2時過ぎだというのに多くのランナーが-リタイアした人も、また諦めていない人も-集っていた。リタイアした人の中には、既にアルコールで真っ赤になっている人もいて、これからあと残りの70キロに挑戦するランナーにエールを送っていた。自分が故障なく走り続けることができる幸運を思う。大事な仲間は失ったけれども、まだなごやんの旅は終わったわけではない。少し休憩して、急いで出よう。これから三見まで、お化けのでるこわーい道である。だれか一緒に走ってはくれないだろうか。

おにぎりとお味噌汁の食事をぱくつこうとしたとき、緑のウエアをきた、おばちゃんランナーがなごやんの顔をみて手を振った。「リタイアしました。走れるところまで走ったから、もういいわ」とすがすがしそうに彼女は言った。「私はまだがんばります」となごやんは答えた。「でもここまで一緒に走っていた人がここでリタイアしてしまって…だれか別に一緒に走ってくれる人いないかしら」するとおばちゃんはバナナをおいしそうにぱくつきながら、「あの、名古屋のあの人がいいわ、なんていう人だったかしら」と言い出した。名古屋のランナーですって、私も名古屋なんですよ、地元が一緒なら話題が一緒だから走れるかも。「彼は今、萩往還20回を記念してビデオ撮影しながら走ってるから、被写体を必要としているはずよ」それがどういう意味かあまり関心を持たなかったなごやんは、その名古屋のランナーがどれくらいの走力であるかの方が重要だった。一緒に走って自分の方がへたばるなんてことないだろうか。「大丈夫よ、去年、私も彼について走ったもの。4時にここをでて、ちゃんと時間内完踏できたわよ」4時に宗頭を出て、時間内完踏とは!「彼はたたたた、と走って行っちゃう人で、こっちが小走りでついていかなくちゃいけないところもあるけど、親切な人だから。疲れたといえば、ちゃんと休みを取りながら行ってくれるから」とおばちゃんはしきりに勧める。「あ、K田さんね。彼についていけば時間内完踏はできる」とそばに居たリタイアランナーさんが相槌をうった。「そうそう、K田さん。彼と一緒に走れば、絶対に時間内完踏できるわよ」えっ、K田さんのこと!?なごやんの持つK田さんのイメージと言えば、雲の上の存在だった。北米大陸やらオーストラリア大陸やら、何ヶ月かけても走って横断してしまう、超有名人である。彼がまだ宗頭にいるの?「ええ、彼は早い人だから、9時くらいに宗頭に入って、6,7時間寝て、それから瑠璃光寺まで走るのよ」と別のおばちゃんが教えてくれる。
そういえば、鯨墓の復路を来たK田さんとすれ違ったおばちゃんランナーが、一緒に何か話していたなあ。知り合いだったのね。雲の上のような人であっても、一緒に走ってもらえるのなら光栄だ。「じゃあ一緒に行こうかな。K田さんはいつ出発されるのですか?」「4時かな」少しは休めるだろうか。そのとき、誰かが「K田さん、3時に出るって。さっき起きて顔を洗ってた」と教えてくれた。えっ、3時?あと20分くらいしかないじゃない。とても休めないよ。そのとき、K田さん本人が食堂に降りてきた。おばちゃんはK田さんに「彼女が一緒に走りたいって」と言ってくれた。なごやんも「お願いします」と言った。ひょろっとしたK田さんは、いいですよ、と言って、「あと20分だけど、ちょっとの間ビデオのバッテリーを入れますから。今日はまだひざの調子がよくないんで、4時の出発を少し早めます」といいながらあちこちせかせかと歩き回っている。「どこかでお会いしましたね」というので、「昨年の佐賀の酒蔵マラニックでご一緒しました。名古屋出身で今は福岡に住んでいるってお話したんですが・・・」というと、ああそうか、とK田さんはなごやんのことを思い出したらしい。雲上人に思い出していただけるとは光栄である。

急に20分後に出ることになったので、急いでおにぎりを食べ終えた。K田さんは早口で「刻一刻、関門は近づいてきますからねえ、3時ぴったりに出ますよ」というので、とても着替えている時間はないと踏み、ウエアはそのままで靴下だけを換えた。てきぱきしたK田さんは、時間とお金を大事にしそうな人で、名古屋人らしいといえば名古屋人らしいと思った。おっとりしたマイペースでここまで走ってきたなごやんが彼についていくためには相当てきぱきと走らなければならないだろう。ま、いいか。「K田さんに遅れないようにね、荷物はそのままでいいから。こっちで預かって山口まで送り返すから」とリタイアしたらしいおじさんランナーが片目をつぶって言った。うわあ、あわただしいことになったぞ。とよとよさんに一声かけて出かける予定だったが、それもかなわない。トイレに行く時間すらなかった。「はい、靴はいて準備してます。出発まであと3分!」とK田さんは言ってさっさと玄関に出て行った。急いで荷物を確認して、おばちゃんと周りにいたランナーに「行ってきます!」と挨拶をすると、「がんばって!」というエールが食堂のあちこちから返ってきた。

玄関で靴を履く。K田さんはビデオを回して、宗頭文化センターの玄関の様子を撮影している。「はい、それでは1分遅れで宗頭文化センターを出発!95番と303番、出ます!」とK田さんが高らかに宣言した。「いってらっしゃい!」といういくつもの声に送られて、3時1分過ぎに再び真っ暗な夜道を走り出した。



2008/5/17  23:57

投稿者:なごやん

まるちゃん、萩往還250キロは、やっぱり凄いランナーとであえる絶好のチャンスです。こういう人たちと出会えることを楽しみに、来年以降もまた出たいと思っています。

2008/5/17  20:14

投稿者:まるちゃん

神様はちゃんとなごやんさんを見守ってくれてますね。
仲間のリタイアで気落ちしそうなところ、超ビッグなパートナーを用意してくれるなんて!

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