2008/6/5 23:37
海老は怖いぞ グルメ・クッキング
カトマンズからバンコクへのタイ航空の機内で、出稼ぎに行くネパール人の若者が隣に三人座っていた。
英語を話す一人と、私は色々なことを話していた。カトマンズからマレーシアの木工所へ三年間働きに行くとのことだった。
三人は飛行機に乗るのが初めてで、見るもの、触るものがすべて珍しかったようだ。シートベルトの締め方が分からない。座席のテーブルの出し方が分からない。飛ぶときの緊張感のある顔を見て、私も初めて飛行機に乗った時はあんな顔をしていたのだろうなあと思った。じっと耐えている。怖いのだろう。
離陸後、シートベルトサインが消える前に、トイレに立って、スチュワーデスに注意されたり、座席を急に後ろに倒すなど、見ていて退屈しなかった。
飲み物が出た後、機内食が配られた。
「チキンかシーフード、どちらにしますか」とスチュワーデスが尋ねる。
私はシーフードを頼んだ。彼らは全員がチキンを選んだ。大部分のネパール人は海を見たことがなく、シーフードを食べたことがない。今日のシーフードは海老。彼らは鶏肉の甘煮だった。
ふと気がつくと、三人が、私の前の海老のチリソースを珍しそうに見ている。
「それは何ですか」と、私に尋ねた。
「これはジンゲマチャ(海老)だよ」
「ああ、それがジンゲマチャなんだ。聞いたことがある。初めて見た」
「僕は、本で見たぞ。すごい」
一人は、頷くだけだった。
「一つ、食べて見るかい」と、直径四aほどの白い美しい身が、チリソースでピンク色になっている海老さんをフォークで刺して、隣の若者に手を向けた。
「要らない、要らない」と、シートベルトをしたままで、飛び上がるほど驚いて、顔には恐怖の表情が出ている。手を大きく振って、一つ隣の友人に体を傾けたために、隣の友人の鶏肉の一つが落ちた。
虫の幼虫とでも思ったのか。
彼の一つ隣の友人は、それほど驚かなかった。ニコニコ笑っている。私も、自分の口に運べば良いようなものだが、こんな美味しいものを、拒否するとは何ということだ。食べたことがないのは、非常に残念と、もう少しプッシュすることにした。「とっても美味しいよ」。
私の皿には四尾のジンゲマチャがあった。「ほら」と、一人置いて隣の若者の鶏肉の上に、ジンゲマチャの丸まった身を置いた。
彼は恐る恐る、フォークでジンゲマチャを突き刺し、端っこを五_ほどかじった。後の二人は、真剣な目で見ている。
「ミトチャ(美味しい)、デヘレイ・ミトチャ(大変美味しい)」と言いながら、大きく笑った。そして残りはパクッと食べてしまった。
「マレーシアには、このジンゲマチャがたくさんあるのですか」
「あるある、とても美味しい」
「そうですか。それは素晴らしいなあ」
「もっと大きいのがあるぞ」
「どのくらいの大きさですか」
私が両腕を広げたら仰天している。
「うそ、うそだよ。このくらい」と一〇aほどを示した。
「マレーシアには、シーフードが一杯あるのですか」
「あるぞ。こんなのも」と、両手をチョキにして、「蟹さん、蟹さん」
「ああ、知っている。美味しいのですか」
「無茶苦茶美味しい」
「楽しみだなあ」とうれしさが顔に溢れた。さっきまでの緊張感が消えた。
残りのジンゲマチャを、一尾ずつ二人に渡して、最後の一尾を私が食べた。


