2008/6/19 0:57
ネパールのホテルの和食 グルメ・クッキング
レストラン長、女性の給仕長、ボーイたちが、じっと私を見ている。私はおもむろに部屋から持ってきた鞄を開けて、その中から、デジカメを取り出した。そして、全員注視の中で、テーブルの上の和風朝食を撮影した。
終わって、私は手をあげた。給仕長がはじかれたように飛んできた。
「何でしょうか」
「お箸を探してくれ。それから、シェフを呼んで来てくれないか」
「分かりました」。走って、連絡をしに行った。
中華のお箸と、シェフが二人届けられた。
「さあ、やるか」
商社の駐在員だと言っても、サウジアラビアの料理を、NHKのテレビ番組「男の料理」で独演で披露した実績がある。私はEホテルの自称和風朝食セットを改善提案するために、腕組みをしながら立ち上がった。
まず隣の席の、パン皿を二枚取り、それに玉子巻きを二個、斜め並行に置き、バラのトマトとキャベツを端に添えた。もう一枚の皿に、ロールシャッハの鮭を半分にして置いた。
「小さめのスープ皿と配膳用のお盆はある? それからマッシュルーム一個を洗って、スライスしてきてくれ」
「はい、ちょっと待ってください」
小ぶりのスープ皿に雑炊を移した。雑炊には全く味がないので、テーブルの塩の容器を振ったが、湿気って塩が出ない。容器を開け、塩を出して雑炊に入れ、それに刻みねぎを落とした。味噌汁を並べ、日本茶とともに、和食セットのお盆を作った。
「こんな大きなティーポットなら、日本茶のティーバッグはたくさん必要。鮭は半身。玉子も二個焼いたなら、二人に出せる」
「はい」。マッシュルーム帽子のシェフがうなずいた。それを見て、
「味噌汁には、このように、マッシュルームの薄切りを数個落とせばよいのだ」
薄切りのマッシュルームを、数枚落としたら、見事に、当然ながら、味噌汁にフワーと浮いた。
「さて、あなた」と、女性の給仕長に、「この大きなティーポットの日本茶を、ほれ、あそこの日本人の夫婦に持っていってみたら」と、手渡した。
「はい」と、給仕長は、両手でその五人分のお茶のポットを、明らかにトレッキングに行く姿の中年女性のところに持っていった。
「ジャパニーズ・ティー。マダム」というのが聞こえた。
その時の、中年女性の反応は、すばやかった。「わあ、日本茶、いただきます」。
硬めのクロワッサンを食べようとするご主人に、「日本茶だって、ほら、あなたもどう」と、叫んでいる。お茶を注ぎつつ、給仕長は笑顔である。
こうして、私の特別和風朝食セミナーの第一回は終わった。
このEホテルの営業課長の素晴らしさは、その次の日に私に電話をしてきたことだ。
「ミスター樋口、昨日はどうもありがとうございました。私は昨日の朝は、参加できなかったのですが、シェフから聞きました。私も参加しますから、もう一度、日本の朝食を試みたいと思っていますが…」
「いいよ」
「じゃ、来週のどこかで」
「君も熱心だ。ようし、今度は、私の秘蔵のお茶漬けの素を持って行き、小型の炊飯器で日本のご飯を炊くからね。日本の朝食をお見せしましょう」


