2008/6/27 21:18
揚げもの万歳 熱いカツの厚さ グルメ・クッキング
結婚する直前、最大の矛盾は、生活資金が乏しいのに、今より腹が減っていたことだ。公団の分譲に住み、自炊をして節約していたが、好物のトンカツは揚げたかった。肉屋で豚の切り身を買う時は、薄身になり、肉の面積を重視した。しゃぶしゃぶほど薄くはないが、小麦粉、卵、パン粉をつけても、「このへなへながトンカツか」と多少悲しくなった。
そこで奮発して、すでにパン粉までつけ、一応トンカツ仕様となっているものを、もう一度かき混ぜ卵に浸した。パン粉までが卵を含み、ドカンと重くなり、それにパン粉をつけたので、厚さは一挙に三倍になった。
「これを揚げて、トンカツソースを掛ければ、立派にどんぶり鉢三杯のご飯のおかずになる。しめしめ」と揚げたら、一部に技術的トラブルが発生して、衣にひび割れができ、油の中で、抜き身の小刀のように肉が抜けた。
自分の料理には鷹揚な私だから、パン粉中豚肉ハサミのようなトンカツも美味しかった。現在の厳しい料理師匠のヨメサンと結婚する前のことだ。もし、この料理をヨメサンに出していたら、婚約は解消となっただろう。
その後、トンカツ厚さこだわり症候群のまま、サウジアラビアに駐在すると、豚肉はおろか豚の革靴すらない。トンカツを食べる夢をみて、子豚に犬の着ぐるみを着せて、子犬だと持ち込もうかと思ったほどだが、トンカツで強制退去させられるのは、阿呆だから、実行しなかった。帰国後、ヨメサンにたびたびトンカツ料理をしてもらううちに、ベトナムへ赴任となった。
ベトナムでは、お手伝いさんを特別訓練して、「トンカツ食べたい」と言えば、夕食に出るようにした。ベトナムでは、普通の家で巨大な豚を土間に飼っていた。番トンである。豚肉は牛肉よりも高かった。
最後に赴任したネパールでは、白豚、黒豚では値段が違った。親しくなった日本風レストランで、トンカツを食べて、喜んでいた。激安だった。オーナーに、豚肉を見せてほしいと頼んだら、豚肉の大きな塊を見せてくれた。
「ようし、今日はダブルトンカツを頼む」
「ダブルトンカツって?」
「厚さを二倍にしてくれれば良い」
「了解しました」
こうして、出来上がったダブルトンカツは、値段も二倍だが、旨かった。
私の変質狂的注文は、トリプルトンカツまでいった。値段も三倍だ。しかし、トリプルトンカツでは、中心の肉の部分がまだ美しいピンクのままなので、これはやばいと思った。再度、料理させたら、フライパンの上で焼いて、パン粉がガチガチになっていた。もちろんソースを掛けたものを揚げるのは無理があった。
ヨメサンが私の了解を得ずに、日本に一時帰国してしまい、腹が立つので、分厚いトンカツをお手伝いさんに作ってもらおうと、三aトンカツに挑戦した。
事務所からの帰途に、三aの肉を一切れ買って、自宅に持ち込み、呆れるお手伝いさんに、「このまま小麦粉、卵、そしてパン粉」と指示して、揚げさせた。
巨大な超厚切りトンカツができた。ヨメサンがいたら、三枚におろされるところだ。これをこのまま食べるほど私はド素人ではない。中はかなり赤いまま。大皿に入れて電子レンジに掛けた。これで数分。発火寸前の強烈、ド迫力サンダルトンカツができた。
味は?
覚えていないが、食べきれなくて、愛犬リナに一部を譲った。


