2008/7/27  15:58

口語の時代はさむい  分類なし

ことばを縦横に駆使してこころを伝える荒川洋治の詩。口語の時代はさむい」のフレーズはその多彩な才能を世に知らしめた。難解ななかにも詩のゆらぎに引き寄せられる現代の代表的詩人。

「見附のみどりに」   荒川洋治 詩

まなざし青くひくく江戸は改代町への
みどりをすぎるはるの見附
個々のみどりよ朝だから
深くは追わぬ ただ 草は高くでゆれている
妹は濠ばたの きよらなしげみにはしりこみ
白いうちももをかくす葉さきのかぜのひとゆれがすむと
こらえていたちいさなしぶきの すっかりかわいさをました音が
さわぐ葉陰をしばし打つ かけもどってくるとわたしのすがたがみえないのだ
なぜかもう暗くなって濠の波よせもきえ
女に向う肌の押しが さやかに効いた草のみちだけは
うすくついている
夢をみればまた隠れあうこともできるが妹よ
江戸はさきごろおわったのだ
あれからのわたしは 遠くずいぶんと来た

いまわたしは、埼玉銀行新宿支店の白金のひかりをついてあるいている。ビルの破音。消えやすいその飛沫。口語の時代はさむい<。葉陰のあのぬくもりを尾けてひとたび、打ちいでてみようか見附に。


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