2008/6/22  21:04

Uniformity 〜1つになることを目指して〜  趣味

(今日のブログは専門用語が出てくるので最後尾に注を付しています。適宜御覧下さい。)


目を覚ますと、昨日のサッカーのお蔭で筋肉痛が残っている。
時計の針に目をやると上下に真っ直ぐ伸びている。
バナナを一本口に放り込み、速やかに着替え、ペットボトルを片手に車に乗り込む。

行く先は、艇庫(注1)。
Capital Rowing Club(CRC)というクラブチームの練習に参加するためだ。
ワシントンの南東部という最も治安の悪い地区にあるが、最近建設されたワシントン・ナショナルズの球場近くということもあり、身に危険を感じるほどではない。


Anacostia Rowing Community Center(注2)という看板の先に艇庫を発見。
時刻は6時57分。
指定された時刻にぎりぎり間に合った。
オアーズマン(注3)の練習開始時刻としてはかなり遅い(注4)が、週末だからこんなものか。
しかし、まだ誰も来ていないようだ。
多少物騒な感じがする。


クリックすると元のサイズで表示します
(入り口)


数分待っていると続々とメンバーが集まってくる。
ただし誰と漕ぐのかよく分からない。
クルーキャプテンのジェームズが到着。
事前に彼から僕を含めた3人に向けてメールが出されていたので、てっきりフォア(注5)かクォドルプル(注6)で出艇するのだろうと思っていたが、今日はエイト(注7)を出すという。


クリックすると元のサイズで表示します
(艇庫の中。外にも多くの艇が保管されている。米国べスポリ社製の艇が殆ど。)


ワシントンに来てから1年経つがボートを漕ぐのは初めてだ。
固めた水を押して、艇を走らせるあの感覚。
艇が水面を滑り、爽やかに風を切るあの感覚。
久しく遠ざかっていたので、非常にわくわくする。


Eargometer(注8)で軽くアップして、コーチの下に集合。
コーチは僕より少し年上に見える女性。
エイトを使ってセブン出艇(注9)とのこと。


僕が今朝参加したのはSAW(注10)という週末のプログラム。
今日のクルー編成は、コーチ及びコックス(注11)を除くと、

男性4名、女性3名
over 50 4名(長老は60代半ばくらい)、around 30 3名
白人4名、黒人2名、アジア人1名
文字通り、老若男女。
加えて多人種。

うち二人は元外交官(国務省勤務)とのことで、外から来た僕に対してものすごくオープンだ(他の人達もそうだけれど)。

自己紹介を簡単に済ませた後、6番のポジション(注12)を割り振られ、艇を担ぎ、水に浮かべ、オールをセットし、艇を船台から蹴り出す。


コックスの指示に従い、ウォーミング・アップが始まる。
コックスから発せられる専門用語が多少異なるものの、練習内容は日本でやっていた時とほぼ同じなので全く問題はない。
Arm only、+ body, + quarter slide, + half slide, + full slideと進んでいく。
アップが終わると、低レート(注13)で強度のパドル(注14)。
強いオールを引く人間はブレード(注15)の前面の水が盛り上がり、必然大きな泡を作る。
僕の後ろに座ったのは長老の元外交官だが、その外見からは想像できないほどの大きな泡を作り出している。
クルー全員が全力。
真剣そのもの。


大学時代ボートしか漕いでいなかった僕に一日の長があるように思えたが、こちらの人は高校や大学の授業でボートを漕ぐ機会が結構あるらしく、かなり本格的だ。
暫く漕いでいると、コーチがモータボートを一人で運転しながら艇に追いつき、横にピタリとつく。
「○番、もう少しエントリー(注16)を低く狙え」とか「○番、フィニッシュ(注17)高く引き切れ」とか
10年前に聞いた懐かしい言葉が聞こえてくる。
コックスの口からも、「ギャザー(注18)集中5本行こう。さあ行こう。」といった、oarsman用語が次々と飛び出してくる。


練習の合間のレスト(休憩)では、「長老」が親切にも、コースの説明や両岸の施設の説明をしてくれる。
ふと手を見ると、肉刺(マメ)が8つくらいできていて、既に1つ潰れている。
久々に流れ出る手汁(注19)を見た。
破れて千切れた皮が船底に落ちているのが見える。


レスト後は、引き続きパドル(強く漕ぐこと)。
次第に激痛が走り出す。
更に肉刺が何個か潰れたようだ。
この感覚も久々。
久しく漕いでなかったから手の皮がナイーブになっている。
練習後半は、心肺機能や足の筋肉も多少疲れてくるが、とにかく一本一本漕ぐたびに2つの掌から悶えるような激痛が襲ってくる。
そうはいっても、予想外に「マジな」練習で皆気合が入っているので、オールを引く手足を弱めるわけにはいかない。
手を守ることは当然のことながら諦める。

一方で、久々にボートを漕ぐ心地良さと嬉しさもあり、とにかく力一杯漕ぎ続ける。
テンションは高揚し、コックスから指示に自然と声が反応する。


艇のバランスが取れない時もあり必ずしも満足できるパフォーマンスとは言えなかったし、大学の体育会のようにストイックにはやっていないのだけれど、究極のユニフォーミティを求められる、このボートという競技を年も性別も人種も職業も異なる人々と真剣に漕ぐ機会を十二分に楽しむことができた。


2時間の練習後、正式にメンバーとして加入する旨伝えてその場を後にした。


これまでの自分の人格形成に影響を与えてきたこのスポーツを通じて、今後も色々と学ぶことがあるようにも思える。
今後、適宜、報告していきたい。


クリックすると元のサイズで表示します
(練習が終わった後は既に日が高く上っていた。)


(注1)ボートハウス
(注2)DC中心部は、Potomac川とAnacostia川に挟まれている。CRCはAnacostia川で練習するが、Potomac川との合流付近まで漕いでいく。
(注3)漕手(コックスも含む)。広義ではボートに携わる人
(注4)早朝5〜6時が普通。CRC のCompetitive Programは5時20分開始。
(注5)4人乗り
(注6)4人乗りだが、1人が2つのオールを持って漕ぐので合計8本
(注7)8人乗り
(注8)陸上で漕力を測定するカタツムリのような機械。Oarsmanに悶絶を与えてくれる。
(注9)一人足りないため漕手7人で練習することがある。その場合、片方のサイドには3本しかオールがないことになる
(注10)Senior and Weekend Programの略
(注11)舵手
(注12)ポジションは進行方向から順にBow, 2番、・・・7番、Strokeと呼ばれる。
(注13)1分間に漕ぐ本数
(注14)漕ぐこと
(注15)オールの先端にある水を押す部分
(注16)ストローク(オールを引くこと)の出発点。ブレードを水に入れる瞬間
(注17)ストロークの終点。ブレードを水から抜く瞬間
(注18)オールが空中にある間、重心をストレッチャーという両足を固定する板にスムーズに移していくこと。Stay gatherと言っていた。
(注19)現役時代、肉刺が潰れた後に流れる液体のことをこう呼んでいた



2008/6/24  13:56

投稿者:Hawk

>うさぎさん
コメントありがとうございます。
「漕魂」
良い言葉をご存知ですね。
頑張ります!
Hawk

2008/6/23  13:01

投稿者:うさぎ

ボートを通じて、国籍や人種、性別を超えて一つになれるなんて素敵ですね。
Viva 漕魂!!!

コメントを書く


名前
メールアドレス
URL
コメント本文(1000文字まで)


RSS1.0