2008/5/13  23:43

おお、恋は創作の泉 「恋におちたシェイクスピア」  映画

1998年 米 ジョン・マッデン監督

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毎度こんな書き出しな感じではあるが、これもだいぶ前にサラっと一度観たきりでじっくりと観ていなかったので、久々にスタチャンで放映されたので鑑賞してみた。いやいやいや。随分いろんな人が出ていたのね。ベン・アフレックまで出ていたのだったっけ。ルパート・エヴェレットも友情出演みたいな形でライバル劇作家役で出ていたのね。草刈正雄に似てるなぁ。
そうそう、これではワタシのコリン(え?)は恋敵の役、というか敵役であったのだった。思い出した、思い出した。
これってもう10年も前の映画だったのだっけ。デンチさんがどこかでエリザベス女王をやっていたと思ったけど、これでだったのか。と、あれやこれやで、随分久々に観たもんですから、間抜けな感慨が多くて申し訳なし。さるにても旬の役者をいっぱい揃えるとそれだけで華やかで元気いっぱい、恋のオーラがビュービュー迸っているような映画になる。

前に見た印象ではグィネスが四角い顔に口ひげ(付け髭)をつけて男装しているのがプハハという感じだったのと、ジョセフ・ファインズがやたらに走り回っていたのだけを覚えていた。…まぁ、ほとんど何も観ていませんね。そのときはあまり関心がなかったのかもしれない。ちゃんとその気で見てみると、テンポが良くて面白い。あれこれ賞を取っているだけあって脚本も隙なく仕上がっている。何よりいい役者が沢山出ているので、それだけでも見ていて飽きない。ジェフリー・ラッシュ、気のいい芝居小屋主人の役。かわいいな。

タイトルロールを演じるジョセフ・ファインズは兄と比べると目が丸くて愛嬌のある顔をしている。最初に見たのはこれだったのか、「スターリングラード」だったのか記憶が定かじゃないけれど、どちらかだと思う。新作は「マンデラの名もなき看守」。またいかにもこの人の選びそうな役だなぁと予告編を見ていて思った。
ここではヤングで血気盛んなシェイクスピアを走り回って演じている。上体を反り返らせてガニマタで走る姿がとにかく印象に残ってしまって。見せ場はいっぱいあるのに、なんでそんなところだけなのかしらん、ワタシったら…。

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ほとんど破産状態の癖に名門の家柄だけを鼻にかける嫌味なウェセックス卿を演じるコリン・ファースはちょうちんブルマーというか、かぼちゃパンツからタイツの長い脚を出して、相変わらずスラリと姿が良い。が、口ひげを生やして憎らしげな様子はどことなく「カリオストロの城」のカリオストロ伯爵を思い出させる。

このウェセックス卿に富裕な商人レセップスが娘ヴァイオラ(グィネス・パルトロウ)を売り込むセリフのあけすけな事。
父は娘を貴族に持参金付で品物のように渡し、孫が貴族になる未来を買おうというのである。
「ロバのように従順です。お乗りになりたければ持参金をつけてお譲りします。気に入らなければ返品も可能です」
なんて父親に言われて嫁に行く娘も甚だ気の毒。この親父と来た日には…。

それにしてもクレジットに名前を出さずにカメオ出演したルパート・エヴェレット。本当にちらっとしか出ないが美味しい役。ロミオとジュリエットの骨子のヒントを酒場で軽〜くシェイクスピアに授けてくれる。マキューシオの名前まで?ははは。
このライバル作家マーローが長生きしちゃってたらシェイクスピアは埋もれっぱなしだったりして。ともあれルパート、なかなかカッコよく映ってて印象に残るなぁ。

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そういえばシェークスピアの時代は女が舞台に上がることはできなかったのだっけ。歌舞伎のごとく女形、というか変声期前の少年が若い女性を演じていた。なんだか色子宿みたいである。それはそれで、また色んなことがあったりしちゃいそうな…。
グィネスは役者になりたいお嬢様。両親の留守に家を抜け出してオーディションを受けに来る。女優は存在しないので、男装して。贅肉のない細長い体つきは男装がさまになる。グィネス、ちょっとクリスチナ女王のガルボ様を思い出す体付き。
そうだ、ワタシが何でなんとなくグィネスに好意的かというと、美貌度に差はあるが、グィネスは時折ふとガルボ様っぽい空気をかもし出すことがあるのだ。それが最高に噴出したのが「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」でのマーゴ役。あの無表情で少し憂鬱そうな顔つきや、無駄肉のない管のような体つきはガルボ様のカリカチュアのようだった。

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男装のヒロインという骨子、ヒロインのヴァイオラという名前は「十二夜」そのままじゃないの、と思っているとラストで楽屋落ちがある。幾重にも劇中劇が重なっているかのような面白い構成だ。恋を遠ざかって才能も枯渇しかけていた(若いのに!)シェイクスピアがヴァイオラと出会って恋に落ち、自分の現実の恋愛が盛り上がるにつれ、筆が冴え、自分の経験を戯曲の中に盛り込んでいくという趣向も、ヤング・シェイクスピアならでは。
グィネスとジョセフ・ファインズはけっこうスクリーンの相性が良いのだな。

メリーウェザーって感じの頭巾を被ったヴァイオラの乳母が、お嬢様の恋路を助けるため、あれやこれやとワンポイントで手助けするユーモラスな設定も楽しい。グィネスの男装に対し、ジョセフも付き添い女に化けて出てくるシーンがあるが、挨拶されて薄気味悪そうに後ずさりするコリンも可笑しい。

クリックすると元のサイズで表示します コリン 黒真珠の耳飾のオヤジ

デンチさんはこれまで見た中で一番小さく短いエリザベス一世だったが、もちろん貫禄は漬物石のごとく重々しく備わっていた。
喜劇には下品に大笑いをし、詩的な言葉が並びだすとあくびをする女王を威厳をこめてユーモラスに演じていた。
ウェセックス卿が婚約者を披露した席で、「あの娘はすでに他のものによって摘み取られておる」と言うくだりはさすが女王。慧眼でございまする。
それにしてもコリン、なんて間抜けな役なの。いつも二枚目ばかりやっているとこういう憎まれ役も楽しいのかもしれない。なんにせよ、とても上手かった。結構憎たらしく映ってたものね。

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しかし、いかに男装しようともグィネスの髭は珍妙だし、相手役のジュリエット役はゴッツくてどうにも女に見えぬじゃないの、などと思っていると本番ではアクシデントやハプニングの果てにヴァイオラ(グィネス)がジュリエットを演じることになり、戯作者シェイクスピア自らロミオを演じることになるのは言うまでもないお約束。はいはい、お手盛りだけどそうでなくちゃね。
ヒロインはウェディングドレスで結婚式場から逃げ出してくるものなのだ。それもお約束である。

主演の二人は盛りがついて、どこでも寸暇を惜しんではくっつき合ってマグネットのキス人形みたいにChu!Chu!とアツアツなのだが、ラストの本舞台では悲劇の恋人たちをきっちりと演じる。この舞台シーンもロミジュリ劇の人の印象に残る場面だけをサクサクっとうまく繋いでダラダラと見せないのが歯切れがいい。
しかし、さっきまでドモッてた仕立て屋の親父があんな満員の観客の前でいきなり朗々と口上は言えぬよ〜、と突っ込みを入れつつ、女性の身で舞台に上がったヴァイオラを救う大岡裁きで、またもデンチ女王の大貫禄。このエリザベス女王の行く手の水溜りに側近が競ってケープを脱いで投げ出したというのは、よほど有名な話なのだろう。何にでも出てくる。
デンチ女王はせっかちなので、様子見をして一瞬遅れた側近たちのケープを待たずにドシャドシャと水溜りに踏み込んでいく。
デンチの女王様はなんとなく「M」っぽいな。ひゃはは。

キス人形のようにくっついていた二人だが、芝居を成功させると既にウェセックス卿の妻になってしまったヴァイオラは、夫とともに新大陸に行くしかない。彼女との出会いと別れがシェイクスピアに「十二夜」を書かせることになる、というわけで駆け落ちして大団円というラストじゃないのも、シェイクスピアだけによきかな、である。



2008/5/15  1:06

投稿者:kiki

たむさん。
コリン、「イングリッシュ・ペイシェント」の時はびっくりする程太ってましたね。あんなに太ったコリンはあの時以外にお見かけしないような気がしますが…。このとき、顔はやや丸いけど、エリザベス調の衣装はスラリと着こなしていましたよ。背が高いので多少の肉は目立たないのかも。
付け髭グィネス=ゲーリー・オールドマンね。あははは。目元とかちょっと似てますかね。実際に「新作」として最初にあの芝居を見た観客はどんな反応だったんでしょうね。やはり一瞬の静寂ののちに涙したのかすぃらん。シェークスピアがエリザベス女王の時代の人だというのも、その治世のゴールデン・エイジ的パワーを感じますね。

2008/5/14  16:01

投稿者:たむ

これ、懐かしいですね。ストーリーも面白いけど、当時の風俗が忠実に(でしょうね)描かれていて興味深かったです。パフュームじゃないけど、さまざまな匂いが伝わってくるようで。コリン、その前に見た「イングリッシュペイシェント」でもかなり太っていて嫉妬深い夫を演じて、次がこれだったので、この路線で行くのかしら、と少し不安だったのですが、うまく軌道修正したので何よりでした。喜劇のセンスも十分ある、というのがわかりましたし。
グィネスの付け髭、どうしてもゲイリー・オールドマンを思い出してしまいました。似てないですか?
それにしても、「ロミオとジュリエット」を初めて見た人たちはどんなにわくわくしたことでしょう。観客がおおっと息を飲み、声にならない悲鳴をあげ、悲劇の恋人たちに涙するあたりがあの映画で一番好きなところです。

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