2008/7/14  1:10

その男前ぶりに酔いしれろ 「奴らを高く吊るせ」  映画

1968年 米 テッド・ポスト監督

クリックすると元のサイズで表示します

久々に見たいなぁと思っていたら、スタチャンが非常にタイムリーに放映してくれた。
たまにそういうこともある。
'68年だからクリント・イーストウッドも若くて男前の真っ盛り。
マカロニ・ウエスタンで帰り咲いた直後あたりの作品なので、体はほっそり、髪はたっぷり、の頃である。邦題も原題「HANG 'EM HIGH」をそのまま日本語にしているだけだが、それできっちりとサマになっている珍しい例でもある。

あらすじはこちら

  〜以下、たたみます〜



買った牛を連れて川を渡ったところでいきなり9人組の男たちに取り巻かれ、牛泥棒の濡れ衣を着せられて有無を言わさず木の下へ引っ立てられ、吊られてしまうジェド。
何がなんだか分からぬうちに投げ縄をかけられて引き摺られる。
オクラホマ。西部の開拓時代ゆえ、自分たちのことは自分たちで守る、牛泥棒を見つけたら、法の裁きに任せるよりもまずリンチだ!というのがいかにもアメリカだ。こういう発想がいまだに連綿と残っているから銃もなかなか規制することはできないわけである。とにかく、この作品では何度も瀕死の目にあうイーストウッドのジェドだが、毎回不死身のように助かるのはお約束とはいえ、丈夫な体をお持ちなのねぇとついつい感心してしまうわけである。

う〜ん、あんな風に吊るされちゃって命が助かるもんだかなぁ。吊るされてすぐに縄が切れればともかくも、かなりプランプランと吊るされちゃってるのにまだ息のあったイーストウッド扮するジェドは通りかかりの保安官に助けられて、ひょんな事からオクラホマの連邦保安官に任命される。
自分を吊った奴らに合法的に復讐するためには、判事の申し出を受けて保安官に戻るしかない。

で、登場するやいきなり首を吊られたりして、ヨレヨレだったイーストウッドは保安官として再生するのだが、この保安官になってからが非常にカッコイイのである。体も厚みがなく非常に細身の引き締まったシルエットで、埃まみれの黒シャツを着込み、腰に低めにガンベルトを締め、帽子を目深く斜めに被り、歩くとチャリン、チャリンと拍車が鳴るわけである。

クリックすると元のサイズで表示します 悠然と歩く

イーストウッドはアクション俳優で売り出したわりに、体の動きがのろく、走るのもドッタドッタと遅い。「ダーティ・ハリー」で犯人を追いかけたり、犯人に走らされたりするシーンで、あまりにドッスドッスと走るのが遅く、体の動きのキレが悪いのに驚いた覚えがある。
走ると大男ゆえの動きの鈍さ、みたいなものを時折感じるわけだが、歩く時にはその悠然とした動作が非常にキマっている。
首を少し斜めにして、前下がりに帽子を被り、ムッツリして、チャリン、チャリンと歩く。この歩く時に拍車がチャリンチャリンと鳴るのが粋なのである。
粋と言うと、吊られた首の傷を隠すために常に首に巻いている黒いスカーフも粋な感じがするし、なんといっても、マッチで靴の裏や、壁をシュ!と摺り、タバコに火をつける仕草が非常に粋なのである。おもむろに片足を膝から曲げて、身を斜めに捻ってその靴裏でシュ!っとマッチを摺る。
そうやって煙をフ〜と吹き出すと、お得意のしがらんだような、眩しいような目つきをしながら、悠然と歩いていくわけである。

クリックすると元のサイズで表示します 首の傷をスカーフで隠す

「復讐の鬼」と化しているので、この作品ではいつもに輪をかけて無表情でクールなイーストウッド。彼としては復讐を完遂するために保安官に戻ったのであって、正義を行うだの裁判にかけるだのは二の次なわけであるが、彼を任命した判事は9人を生け捕りにして、必ず裁判にかけろ、と厳命する。何人かとっ捕まえて、早く残りをとっ捕まえに行きたいのに、裁判で証言しろ、なんていわれて「やれやれ」とウンザリした表情をする。
この「やれやれ」もイーストウッドの十八番で、無表情のまま、いかにもウンザリした顔で大きく息を吸って眉を少し吊り上げる「やれやれ顔」をする。

禿げて爺さんになってからでも渋い味があり、大スターになってから監督としても成功して、いまや大貫禄の名伯楽だが、なんたってイーストウッドといえばこの頃の男前っぷりを忘れるわけにはいかない。眩しそうにたわめた目と、クールな無表情がトレードマークだが、帽子を取ると、ヤマアラシのように逆立った髪がわわわーっと現れ、それを無造作に掻きあげたりする仕草がまた、とてもいい感じだった。
そう、イーストウッドといえば、あの逆立った前髪である。ある時期からダチョウみたいな頭部になってきて、あの自慢の逆立った前髪は消滅してしまったが、それでも悪びれず、ダチョウ頭になったらなったで年輪を感じさせる味わいを出すんだから、向こうの男前は息が長い。

この復讐に燃える保安官の心を捉える女レイチェルにインガー・スティーブンス。捕まった犯罪者を全て面通しする許可を判事に貰っているレイチェルもまた過去の消えぬ傷を抱えて生きている女。 「亡霊は人それぞれでしょ?それぞれの方法で恨みを晴らしましょ」
演じるインガー・スティーブンスは北欧出身で60年代に人気のあった女優のようだ。
TVシリーズで有名になり、この作品に出た頃は登り調子だったが1970年に事故か自殺か分からない謎の死を遂げている。

クリックすると元のサイズで表示します

実生活での謎めいた死や幸薄い雰囲気が、この作品のレイチェルとなんとなくマッチしていて、ワタシはこの映画でしかインガー・スティーブンスを知らないが、なんだかこの役が一番この女優らしいのではないかと思ったりするわけである。
最初にこの作品を見たのはやはりTV放映で、フィルムもかなり使い古しの代物だったので、インガーの明るいブロンドは殆ど白に近く見えた。
プラチナ・ブロンドのイメージだったが、今回再見したら、プラチナまでいかない明るめのブロンドだった。しかし、量の多いブロンドの髪とマスカラとアイラインで黒いまぶたが際立った対比をなしていて、子供の頃に見た時も彼女のルックスは印象的だった。ほっそりした体と妙にボリュームのあるブロンドの髪が特徴的だった。
そして、お互い過去の傷を抱えた男と女が惹かれ合うさまなども、(ピクニックに行って雨に降られ、「山小屋の愛」みたいなシーンも入ってくる)淡々としてるが悪くない。イーストウッドとインガー・スティーブンスはスクリーン上の相性は悪くない感じがする。

クリックすると元のサイズで表示します

ジェドを吊った9人のうち殆どの男が中年以上の普通の市民で、しかも白髪の熟年のオヤジが多いのもなんだか印象に残る。鍛冶屋だったり牧場の経営者だったり、けして悪人とか強盗団とかいうわけではないのである。
これは自分や仲間の身や財産を守るためには暴力も敢えて辞さないという荒々しい自治の時代から、なんとか法に拠る「公正な」裁きへ移行させていこうとあがいているマルボロカントリーの脱野蛮の時代を描いた作品でもある。エド・べグリー演じる判事はその脱野蛮のあがきの象徴なのである。
誘われて牛泥棒に加担してしまった未成年の若者を主犯の殺人罪の男とひとしなみに死刑にしてしまう判事の荒っぽい判決にジェドは異を唱えるがはねつけられる。少年たちの吊るされる日にやりきれずに馴染みの娼婦を部屋に引っ張っていくジェド。ニヒルに見えるが正義感は人一倍持っているのだ。自分の復讐にばかりかまけているわけでもないわけである。そんなこんなで判事に対して反発を抱いていたジェドなれども、復讐が完遂するころには復讐の空しさに思いが至る。バッジを返して足を洗おうとするジェドに、アメとムチで引き続き仕事をさせる判事。
うふふ、判事の方が役者が一枚上なのだ。



2008/7/16  22:37

投稿者:kiki

ゲームウォッチマンさん、初めまして。ようこそ。
これ、なかなか面白いですよね。娯楽だけじゃなくてテーマ性も一応あるし。
ワタシ、「ダーティ・ハリー」はなんといっても1作目が一番好きなんですが、2っていうと
あの白バイ警官が過激な仕事人状態になるやつでしたっけ?
3だか4だかの婦人警官とコンビを組むやつも面白かったですが、
テッド・ポストじゃないですね。(笑)
「続猿の惑星」って立場が逆になるやつでしたっけ?
猿たちが過去に戻って文明の進んだ人間社会に混ざっちゃったから
さぁ大変、みたいなのありましたよね。
また、気が向いたら遊びに来てください。コメント歓迎です。

2008/7/16  3:50

投稿者:ゲームウォッチマン
http://diary.jp.aol.com/an6c2wgh4uty/

こんにちは。はじめまして。
僕は昔テレビで観ましたが、なかなかいい映画ですね。
それから、テッド・ポストの監督作品というと、なんと言っても、傑作「ダーティーハリー2」を思い出します。
そのほかには、(イーストウッドとは関係ないですが)「続猿の惑星」も、テッド・ポストの監督なんですよ。
「続猿の惑星」も、面白かったなあ。

2008/7/15  22:46

投稿者:kiki

ワタシもこれ、随分久々に見ましたんですわ。
なんとなくそういえばあんな映画もあったなぁ、なんてぼんやり思ってたら
あら、放映されるじゃないの、なんてね。で、あまりにも久々に見たので
書いてみたって感じです。インガー・スティーブンスは別段好みというのでも
ありませぬよん。ふほほ。ただただ、イーストウッドは男前です。ほんと、
この頃はカッコイイですわ。まぁ、爺さんになっても別な意味でいいですけどね。
村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」だったかで、ホテルで無為に過ごす主人公
が、TVでこの映画を観る場面があるんですね。「イーストウッドは相変わらずニコリとも
しなかった」なんちって。なんかそんな事も久々に思い出しましたわ。

2008/7/15  16:11

投稿者:ジョディ

kikiさん、やっぱり何といっても マッチでシュッ! ですよね〜♪
たしか前にもこの話で盛り上がったことありませんでしたっけ?
一度しか観てない(もちろんテレビ)のでストーリーは結構忘れてて・・kikiさん好みの美人がいましたね、そういえば。
そうそう、イーストウッドって眩しそうに目を細めるところとか「やれやれ」って表情がなんともね。
う〜ん好きだなぁ。
アクション、たしかに重いかな。殴りあうシーンものんびりしてスローモーションに見えたりして(笑)
「サンダーボルト」は未だに観てないんですよ。これジェフ・ブリッジスが儲け役で面白いみたいですね。今度こそ借りてみようリストにいつも入ってるのについ忘れちゃうんです。



コメントを書く


名前
メールアドレス
URL
コメント本文(1000文字まで)


RSS1.0