2008/7/26 9:01
しあわせってなんだっけなんだっけ? 「たみおのしあわせ」 映画
2008年 スタイルジャム 岩松 了監督

昨今、日本映画で家族像を模索する作品が増えている。
「ぐるりのこと。」「歩いても歩いても」「ジャージの二人」「たみおのしあわせ」そして9月公開の「トウキョウソナタ」。「トウキョウソナタ」はこの前恵比寿ガーデンシネマで予告編を見て、ちょっと見たい心をそそられた。予告編をみず、チラシだけだったらそうはならなかったと思うのだけど、小泉今日子にちとアレルギーのあるワタシでもこの映画はチェック対象だわ、と感じた。
で、「たみおのしあわせ」。予告編を見た段階では微妙に感じたのだが、さて本編は?
〜以下、たたみます〜
冒頭から民雄(オダギリジョー)と父(原田芳雄)の会話がどことなくとげとげしく、格別な確執があるわけではないものの、父は保守的、息子は内向的で、母や嫁という潤滑油のない男所帯ではこういう具合にああいえばこういう、または会話が甚だしくかみ合わないという事態が起きるんだろうなぁと、和やかとは言えない父と子の会話を聴いていて思った。周囲ではおもむろに笑い声も起きていたが、ワタシはところどころ船を漕いでしまい…。オダジョーは内向的でややマザコン気味の青年民雄を演じて上手かったのだけど、この息子は父を拒否も否定もしていないのだが、常に父をうるさがっている。で、父の方はというと、「子離れができない父」を演じる原田芳雄は、60に近いであろう父の自然さを良く出していた。映画を観る限りでは、この父が子離れできないという印象はない。そんなにべたべたとまつわっているわけでもないし、適当に自分の楽しみもある。
父はけっこう生臭く女出入りもあれこれとあるのだが、最終的に再婚に至っていないのは、民雄がどの相手も好かなかったから、という事に尽きるわけで、その点やはり息子ファーストな父なのだ。父は自分の第二の人生を充実させるためにもオクテの民雄に早く嫁を貰いたい、そして巣立たせたいという気持ちもありやなしやに見えるのだが…。
芳雄
この父の目下のお相手は自社で販売員をしているおばちゃん宮地さん(大竹しのぶ)。おとっつぁんはもちろん、宮地さんの前にも手を出した相手がいる。その女に石田えり。愛煙家の女でまさにピッタリ。石田えりもいい具合におばちゃんになっている。原田芳雄は「歩いても歩いても」では白髪のヅラで老けづくリだったが、ここでは本来の姿で登場。しかし太った感は否めない。原田芳雄のタヌキ腹なんて10年前は想像できなかったかもしれない。プテプテしたガニマタ気味の歩き方が会社でみかける50代のオッサンそのもの。原田芳雄のオッサン化(またはオッサン演技)をまざまざと見た映画でもあった。それ以外にもその年代の人らしい感じを随所に醸しだしていて原田芳雄は個性派の筆頭で柄の役者だと思っていたのだけど、とても器用でさりげない、うまい俳優だったのだな、と再認識した。
また、この作品では長らくあまり変化なく来た人の衰え始めた姿をまとめて見たことで特筆すべき作品かもしれない。
筆頭は大竹しのぶ。役の性質もあったと思うがカードのCMで気取り倒した赤いハイヒールなど履いてこぎれいな人妻ぶりっこしているよりも、ヤクルトおばさん的な茶どころのお茶メーカーのセールスレディをヤサグレた顔つきでやっている方が数倍似あう。大竹しのぶもさすがに老けたなと妙に納得しながら見守った。どこから見ても立派なおばちゃんなのだけど、ラブライフだけは積極的なのが大竹しのぶらしい味。今回は中村メイコにとっても似て蝶だった。茶髪のアヒルみたい。
凄いおばちゃんっぷりだった さすがに上手い
そして、ワタシのひそかなお目当て薫サン(小林 薫)は、また彼らしさの程よく染み出した役どころ。変にいい人なんかやってなくて良かった。薫サンの役は原田芳雄の死んだ妻の兄(弟だったかしらん、忘れてしもうた)を演じている。渡米していたはずが尾羽打ちからして人知れず民雄親子の住む家の屋根裏に住み着いている。負け犬なのにどこやらふてぶてしく、土壇場で生活力がたくましい。そして民雄親子の住む家は亡き母の実家で、今現在の法律的な持ち主は、この面妖な叔父・透(薫サン)なのである。
これまで何年もずっと変わらずに来た薫サンだが、今回は何やら痩せて、頬がこけ、ちと衰えて見えた。さすがに薫サンも年かなぁと、ちょっとため息。暫く屋根裏に隠れ住んでいたという設定なので前半は非常にヨゴレた姿で登場する。それもまた良し。民雄たちが出かけた後の家で、ひょんな事から近隣の老人たちの老いらくの恋に場所を提供し、小銭を稼ぐようになる透。老人の恋愛がお盛んなのにも時代色が出ている。富士真奈美、暑苦しくて良かった。
当初は遠慮がちにしていた透だが、自分の物である家から民雄たちを叩き出そうと虎視眈々と時期を待っている。みみっちくて逞しい。薫サンならではの役である。
ふふふ、薫サン
この薫サン演じる透と、息子の縁談にかかりきりで自分との事に乗り気でなさそうな神崎(原田芳雄)に不信感を募らせていた宮地がくっついてしまう。「スパーク」して。この二人がニヤニヤしながらペッチョリとくっついている図は「薄汚れた二人」という感じ。それが狙いだろうので、バッチリと表現できている。二人揃って少し顔が衰え初めているので、なおさらに中古の家の壁のシミみたいなシケた男女のありようがかもし出されていた。
民雄の見合い相手で、ワケアリそうなしんねりした瞳に麻生久美子。「瞳」って、多分、黒木 瞳の「瞳」だな。そういうイメージを持って来たいという事のように感じた。麻生久美子は適役。上司と不倫騒ぎをやらかした過去があるらしい。いかにもそんな感じである。
だが、民雄は気に入り、彼女のOKを貰ってからは有頂天な日々を過ごすのだが、瞳の心を捉えたのは民雄ではなかったのだった…。というわけで、実の父と生き別れか死に別れで、それが原因でか年上の男にしか魅力を感じないワケあり女と、幼い頃に死んだ母のイメージを常に追い求めているマザコンの民雄は、果たして無事にゴールインできるのか???
ご興味ある方は映画館でどうぞ。
それにしてもクライマックスには意表をつかれた。あの映画のヒネったパロディか。原田芳雄のタメがいい。その力演に思わず笑った。
ラストはちょこっとフィールド・オブ・ドリームスが入ってきたりして、あららら、その草むらの向こうは一体何かや?
そして、そんなところでやっぱりエンドなのねん。…う〜〜〜〜ん、どうなんでしょ、この映画。やはり微妙か。「そして、夏が来た」と言われても…。
好きな人は好きなのかもしれないが、ワタシ的には微妙って感じである。
いや〜、これじゃ永遠に巣立てぬわな。
ワタシは父と子の、大半は苛立ってかみ合わない会話に神経がザラザラした。
原田芳雄もオダジョーも上手いから余計に観ていてザラザラし、そしてうっすらと不快さも感じた。
これは多分に、先に「ジャージの二人」を見てしまったからなのだと思う。
この2本を見るなら、「たみお〜」を先に見るべきだった。ワタシだけかもしれないが、「ジャージ〜」を見てから「たみお〜」を観ると、なんだか親子の会話に苛立ちを感じてしまうのだ。普通に和やかに会話できぬの?という気分になってしまうのである。
ワタシは「たみおのしあわせ」を観ながら、終始涼しい風が吹き、親子が不思議な間合いでほわほわと会話を交わし、言葉で言い切らない部分もほわほわと理解する、あの心地よい距離感が懐かしくてたまらなくなっていた。あぁ高原の風。
ただ単に好みの問題として、ワタシは民雄親子よりも、「ジャージ」の親子の方が好きなのだと思う。「ジャージ〜」の世界観の方が好ましかった。
ただ、どちらの映画にも共通するのが、一億総携帯依存症のいまを引いて眺めている視線だろうか。映画は時代を映すのである。
モワリと消化不良感の残るラストを観ながら、近日中に、また「ジャージの二人」を観に行こう、
あの心地よい世界に再び浸りに行こう、と思ったワタシであった。
昨今、日本映画で家族像を模索する作品が増えている。
「ぐるりのこと。」「歩いても歩いても」「ジャージの二人」「たみおのしあわせ」そして9月公開の「トウキョウソナタ」。「トウキョウソナタ」はこの前恵比寿ガーデンシネマで予告編を見て、ちょっと見たい心をそそられた。予告編をみず、チラシだけだったらそうはならなかったと思うのだけど、小泉今日子にちとアレルギーのあるワタシでもこの映画はチェック対象だわ、と感じた。
で、「たみおのしあわせ」。予告編を見た段階では微妙に感じたのだが、さて本編は?
〜以下、たたみます〜
冒頭から民雄(オダギリジョー)と父(原田芳雄)の会話がどことなくとげとげしく、格別な確執があるわけではないものの、父は保守的、息子は内向的で、母や嫁という潤滑油のない男所帯ではこういう具合にああいえばこういう、または会話が甚だしくかみ合わないという事態が起きるんだろうなぁと、和やかとは言えない父と子の会話を聴いていて思った。周囲ではおもむろに笑い声も起きていたが、ワタシはところどころ船を漕いでしまい…。オダジョーは内向的でややマザコン気味の青年民雄を演じて上手かったのだけど、この息子は父を拒否も否定もしていないのだが、常に父をうるさがっている。で、父の方はというと、「子離れができない父」を演じる原田芳雄は、60に近いであろう父の自然さを良く出していた。映画を観る限りでは、この父が子離れできないという印象はない。そんなにべたべたとまつわっているわけでもないし、適当に自分の楽しみもある。
父はけっこう生臭く女出入りもあれこれとあるのだが、最終的に再婚に至っていないのは、民雄がどの相手も好かなかったから、という事に尽きるわけで、その点やはり息子ファーストな父なのだ。父は自分の第二の人生を充実させるためにもオクテの民雄に早く嫁を貰いたい、そして巣立たせたいという気持ちもありやなしやに見えるのだが…。
この父の目下のお相手は自社で販売員をしているおばちゃん宮地さん(大竹しのぶ)。おとっつぁんはもちろん、宮地さんの前にも手を出した相手がいる。その女に石田えり。愛煙家の女でまさにピッタリ。石田えりもいい具合におばちゃんになっている。原田芳雄は「歩いても歩いても」では白髪のヅラで老けづくリだったが、ここでは本来の姿で登場。しかし太った感は否めない。原田芳雄のタヌキ腹なんて10年前は想像できなかったかもしれない。プテプテしたガニマタ気味の歩き方が会社でみかける50代のオッサンそのもの。原田芳雄のオッサン化(またはオッサン演技)をまざまざと見た映画でもあった。それ以外にもその年代の人らしい感じを随所に醸しだしていて原田芳雄は個性派の筆頭で柄の役者だと思っていたのだけど、とても器用でさりげない、うまい俳優だったのだな、と再認識した。
また、この作品では長らくあまり変化なく来た人の衰え始めた姿をまとめて見たことで特筆すべき作品かもしれない。
筆頭は大竹しのぶ。役の性質もあったと思うがカードのCMで気取り倒した赤いハイヒールなど履いてこぎれいな人妻ぶりっこしているよりも、ヤクルトおばさん的な茶どころのお茶メーカーのセールスレディをヤサグレた顔つきでやっている方が数倍似あう。大竹しのぶもさすがに老けたなと妙に納得しながら見守った。どこから見ても立派なおばちゃんなのだけど、ラブライフだけは積極的なのが大竹しのぶらしい味。今回は中村メイコにとっても似て蝶だった。茶髪のアヒルみたい。
そして、ワタシのひそかなお目当て薫サン(小林 薫)は、また彼らしさの程よく染み出した役どころ。変にいい人なんかやってなくて良かった。薫サンの役は原田芳雄の死んだ妻の兄(弟だったかしらん、忘れてしもうた)を演じている。渡米していたはずが尾羽打ちからして人知れず民雄親子の住む家の屋根裏に住み着いている。負け犬なのにどこやらふてぶてしく、土壇場で生活力がたくましい。そして民雄親子の住む家は亡き母の実家で、今現在の法律的な持ち主は、この面妖な叔父・透(薫サン)なのである。
これまで何年もずっと変わらずに来た薫サンだが、今回は何やら痩せて、頬がこけ、ちと衰えて見えた。さすがに薫サンも年かなぁと、ちょっとため息。暫く屋根裏に隠れ住んでいたという設定なので前半は非常にヨゴレた姿で登場する。それもまた良し。民雄たちが出かけた後の家で、ひょんな事から近隣の老人たちの老いらくの恋に場所を提供し、小銭を稼ぐようになる透。老人の恋愛がお盛んなのにも時代色が出ている。富士真奈美、暑苦しくて良かった。
当初は遠慮がちにしていた透だが、自分の物である家から民雄たちを叩き出そうと虎視眈々と時期を待っている。みみっちくて逞しい。薫サンならではの役である。
この薫サン演じる透と、息子の縁談にかかりきりで自分との事に乗り気でなさそうな神崎(原田芳雄)に不信感を募らせていた宮地がくっついてしまう。「スパーク」して。この二人がニヤニヤしながらペッチョリとくっついている図は「薄汚れた二人」という感じ。それが狙いだろうので、バッチリと表現できている。二人揃って少し顔が衰え初めているので、なおさらに中古の家の壁のシミみたいなシケた男女のありようがかもし出されていた。
民雄の見合い相手で、ワケアリそうなしんねりした瞳に麻生久美子。「瞳」って、多分、黒木 瞳の「瞳」だな。そういうイメージを持って来たいという事のように感じた。麻生久美子は適役。上司と不倫騒ぎをやらかした過去があるらしい。いかにもそんな感じである。
だが、民雄は気に入り、彼女のOKを貰ってからは有頂天な日々を過ごすのだが、瞳の心を捉えたのは民雄ではなかったのだった…。というわけで、実の父と生き別れか死に別れで、それが原因でか年上の男にしか魅力を感じないワケあり女と、幼い頃に死んだ母のイメージを常に追い求めているマザコンの民雄は、果たして無事にゴールインできるのか???
ご興味ある方は映画館でどうぞ。
それにしてもクライマックスには意表をつかれた。あの映画のヒネったパロディか。原田芳雄のタメがいい。その力演に思わず笑った。
ラストはちょこっとフィールド・オブ・ドリームスが入ってきたりして、あららら、その草むらの向こうは一体何かや?
そして、そんなところでやっぱりエンドなのねん。…う〜〜〜〜ん、どうなんでしょ、この映画。やはり微妙か。「そして、夏が来た」と言われても…。
好きな人は好きなのかもしれないが、ワタシ的には微妙って感じである。
いや〜、これじゃ永遠に巣立てぬわな。
ワタシは父と子の、大半は苛立ってかみ合わない会話に神経がザラザラした。
原田芳雄もオダジョーも上手いから余計に観ていてザラザラし、そしてうっすらと不快さも感じた。
これは多分に、先に「ジャージの二人」を見てしまったからなのだと思う。
この2本を見るなら、「たみお〜」を先に見るべきだった。ワタシだけかもしれないが、「ジャージ〜」を見てから「たみお〜」を観ると、なんだか親子の会話に苛立ちを感じてしまうのだ。普通に和やかに会話できぬの?という気分になってしまうのである。
ワタシは「たみおのしあわせ」を観ながら、終始涼しい風が吹き、親子が不思議な間合いでほわほわと会話を交わし、言葉で言い切らない部分もほわほわと理解する、あの心地よい距離感が懐かしくてたまらなくなっていた。あぁ高原の風。
ただ単に好みの問題として、ワタシは民雄親子よりも、「ジャージ」の親子の方が好きなのだと思う。「ジャージ〜」の世界観の方が好ましかった。
ただ、どちらの映画にも共通するのが、一億総携帯依存症のいまを引いて眺めている視線だろうか。映画は時代を映すのである。
モワリと消化不良感の残るラストを観ながら、近日中に、また「ジャージの二人」を観に行こう、
あの心地よい世界に再び浸りに行こう、と思ったワタシであった。
2008/7/28 22:09
投稿者:kiki
2008/7/28 18:35
投稿者:Riko
私も小泉今日子にちょっとアレルギーあります。(だから亀ちゃんファンじゃないけど亀ちゃんのお相手が小泉今日子だったことに非常に怒りが!)ついでに大竹しのぶにもアレルギーあり。
原田芳雄さん、太っていたんですね。おっさんにもなっていたんだ!原田さんというと鈴木清順作品が思い浮かぶけど、そういえば「春の雪」にも出ていたなあ、と思ったら私の勘違いで原田さんじゃなく石橋蓮司さんだった。なぜかごっちゃになるんです。
「ジャージ」は心地よい世界観なのですね。鮎川さん、好きだから気になるわぁ・・・(高校生の頃好きでよくライブ見に行っていました)
原田芳雄さん、太っていたんですね。おっさんにもなっていたんだ!原田さんというと鈴木清順作品が思い浮かぶけど、そういえば「春の雪」にも出ていたなあ、と思ったら私の勘違いで原田さんじゃなく石橋蓮司さんだった。なぜかごっちゃになるんです。
「ジャージ」は心地よい世界観なのですね。鮎川さん、好きだから気になるわぁ・・・(高校生の頃好きでよくライブ見に行っていました)

原田芳雄は「浪人街」のあたりまで原田芳雄的ルックスで押し捲ってたけど、その後いい具合に年齢とともに役柄もルックスも変わってきましたね。やはり実力があるんだな、と。
鮎川さんお好きなら、ぜひ「ジャージ」を鑑賞なさって。きっと、もっと好きになりますわよ。