2008/4/28 16:55
小説「NAOTO」−6− 小説「NAOTO」−6−
小説「NAOTO」−5−よりの続き
大学の試験が終わって翌日、
コワイ顔つきでアルが寄ってきた。
「オマエ、リサのことどうするつもりだ?」
「わかっているよ」
「わかっていない!」
「そういうこと、アルに干渉されたくないっ!」
「そういうわけにいくか!」
「プレイボーイだけど、リサとは、ちゃんと付き合っていると
思っていたのに。」
「ちゃんと付き合っている」
「うそだっ!!
オマエ、リサが今どこにいるか知っているか?」
「・・・・」
「フランスの病院だ」
「えっ?」
「フランスのママの墓に行って、
そして自殺未遂をした」
「まさか・・・・」
「そんなことも知らなかったのか?」
「最近、忙しくて」
「このやろ〜!!!」
アルは、ボクの胸ぐらをつかみ、
ボクを思いっきり突き飛ばした。
後にも先にも、アルがこんな乱暴なことをしたのは
初めてだ。
本気で怒っていた。
いつもクールだったじゃない。
ボクが他の女の子とデートしていても
ヤキモチなんて妬いたことないのに。
お互いに「特別な存在」だって、
わかっていたつもりだったのに。
どうして、ノゾミとのことを確かめないで
フランスへ行ったんだ?
ボクは、ショックだった。
後悔ばかりがボクの中で溢れている。
どうして、すぐにリサに会って、
誤解を解かなかったのだろう?
リサなら分かってくれていると信じていたのに。
毎日会わなくても、
お互いに分かり合えると思っていた。
リサの心を繋ぎとめておける自信を失った。
自分がひどく無能に思えた。
今、この現実から逃避したくなった。
パワーダウンだ。
女の子ひとりの心すら、
繋ぎ止めておけないなんて・・・
なんて情けないヤツ!
フランスに追いかけていって、誤解を解いて、
もう一度リサの心を取り戻して、
そして、リサと一緒に愛をかさねてゆく・・・
そんな原動力は、ボクには、もうない。
キモチがおもいっきり沈んだ。
ボクはダメな男だ。
いつもの孤独な、心の中が不安で溢れそうな
弱い、弱いボクがいた。
ボクは、一人、ポルシェに乗って、
ロサンゼルスの高速道路を疾走した。
運よく交通違反で逮捕されなかったし、
事故も起こさなかった。
車の中で、大好きなロック音楽をかけて、
夕暮れの高速道路を泣きながら
いつまでもいつまでも、走り続けた。
エイトビートのポップなサウンドが
余計にボクを悲しくさせた。
こんなときには、どんなサウンドでもダメだ。
急にヒロの胸に飛び込みたくなった。
乱暴にガレージにポルシェを入れると、
ボクは、服も着替えずにそのまま
ヒロが寝ている傍らに潜り込んだ。
すやすや眠っているヒロの胸の音を確認もせずに、
いきなりヒロの腕の中に飛び込んだ。
その夜は、ノゾミは来ていなかった。
よかった。
いつもの指定席はフリーだ。
この荒っぽい侵入者のせいで、ヒロは目を覚ました。
「ナオ?」
「どうしたの? どこか具合悪い?」
いつものやさしいヒロの問いかけだ。
そして、ボクのオデコに手を当てるんだ。
だって、ヒロは医学部の学生だからね。
「熱はないみたいだね」
次に脈に触れる。
「少し早いけれど大丈夫」
ボクの状態を確認できると、
そっと抱きしめてくれる。 いつものように。
何があったの?とか、そんなことはきかない。
ヒロは、ボクにとって、本当にママだ。
ママ以上かもしれない。
ママ・・・・ママ・・・・
こんな時に甘えが出るなんて。
弱い自分がほとほとイヤになる。
暫く、とろけるようなやわらかい雰囲気の中に
居心地よくまどろんでいた。
ゼェゼェ・・・・ゼェゼェ。
ヒロの呼吸が変だ。
いけないっ!!ボクの服のせいかもしれない。
外のダストをヒロのベッドに
持ち込んでしまった。
「ヒロっ!!」
ボクは、我に返って、飛び起きた。
ヒロは、眠っている。
でも、少し苦しそうだ。 息遣いが荒い。
呼吸が乱れている。
ボクは、慌てて2階へ駆け上がり、
ノックもせずにノゾミの部屋に入った。
ノゾミは、すやすや眠っていた。
最近は、熟睡できるようになったらしい。
とにかく、ノゾミを揺すって起こした。
「ノゾミ、ノゾミ、起きて!! ヒロが大変だ」
ヒロが・・・・という部分で、
ノゾミは、パッと目を開けて起き上がった。
そのまま何も言わずに、ボクを押しのけて
風のようにヒロの部屋へと駆けた。
あとは、いつもの通りだ。
冷静沈着なDr.ノゾミが現れて、
テキパキと処置をする。
「大丈夫、そんなにひどくないから」
ボクをチラッと見て、そうつぶやきながら、
ヒロを斜めに抱いて背中を規則的にさすった。
間もなく、ヒロの呼吸が落ち着いた。
ヒロは、そっと目を開けて
「ありがとう」と、言った。
脈拍など、必要事項をカルテに記入し終えると、
ヒロの胸の音をもう一度確かめて、
ノゾミはボクの方を向き、
「そのよごれた服を着替えてきて」と、
ボクをちょっと睨んだ。
「はい」 素直に返事する。
自分の部屋に戻って、シャワーも浴びて、
新しいパジャマに着替えた。
何もかもきれいにして、
そして、ヒロのところへ戻った。
ノゾミが、ベッドの傍らに座って、
横向きに寝かせたヒロのことを見守っていた。
ヒロのベッドには、新しいシーツが敷かれていた。
ヒロは、目を閉じていた。 もう眠ってしまったのか?
ノゾミは、ボクを一瞥すると、
「ここにいるなら、髪の毛をちゃんと乾かしてきて」
と、たしなめた。
「はい」 さっきから、これしか言えないボク。
完全に落ち込んでいる。
ちょっと泣きそうなかんじで、ボクはドライヤーを使う。
ママに叱られた
いたずらっ子の心境って、こんな感じだろうか?
今日はなんて日なんだ。 最悪だ。
卒論は、いい出来栄えだったのに。
トボトボと、懲りずにヒロの部屋へ戻る。
ヒロは、眠っていなかった。
こっちを向いて、まるで、
ボクが来るのを待っていたかのようだった。
「おいで」と、ボクに向かって、手をこまねいた。
でも、隣にはノゾミが寝ている。
ボクは、ちょっと躊躇した。
「いいの?」 それでも、聞いてみる。
「もちろん。 早くおいで」 と、ヒロ。
ちらりと、ノゾミを見ながら、
今夜はノゾミとは、反対側に潜り込む。
ヒロは、ボクの方に向いて、
ボクの髪の毛をそっとなでた。
「今夜は、一緒に寝てくれる?」
「でも、ヒロ、体の具合が・・・・それに、
ゾミが見ていてくれるなら、ボクは・・・・」
「ノゾミは、ナオのことは了解済みさ。
ボクが、また苦しくなると困るから今夜は
ノゾミも一緒にいてくれるって。
いつものように3人で寝ようよ。」
「いいでしょ?」
とっくに、ボクの気持ちを分かっている。
いいでしょ?って、
頼んでいたのは、ボクの方なのに。
「ごめんなさい。 ボクが服を着替えずに
ベッドに入ったから。」
「気にしないでいいよ、そんな時もあるさ。」
あぁ、ヒロ・・・・
ボクは、急に泣き出しそうになってしまった。
ヒロの優しさが心にジワッと沁みてきて、
さっきのリサとのことを思い出して、
そして、弱い自分を情けなく思って。
切なさも、くやしさも、
何もかも分け合いながら夜を越えて、
ずっと3人で一緒に生きていこう。
幸せになれるように。
ボクは、はっきりわかった。
ヒロがいないと、ダメだ。
ボクにはヒロが必要なんだ。
ボクが弱い限り、甘えがなくならない限り、
ボクには、ヒロが必要。
そのためなら、リサとは、さよならしてもいい。
リサを追って、フランスなんて行かない。
ここ、ロサンゼルスにいる。 ヒロといる。
心が病気なのは、ノゾミだけでなく、
ボクもなんだ。
ノゾミと同じように心に暗闇を抱えながら
孤独と戦って生きている。
ヒロの腕の中で赤ちゃんのように
心地よくまどろむことが好き。
ヒロの寝息を聞きながら、
眠りにつくことが好き。
ヒロのぬくもりが、
寂しさで凍りついたボクの心を暖める。
ヒロに、優しく声をかけてもらって、
甘えることが好き。
ヒロが好き。 やっぱりヒロが好き。
いつも、いつも、側にいたい。
ここに、心だけが
大人に成長しきれていない弱いボクがいた。
いくつもの悲しみや寂しさを抱えて、
暗闇を駆け抜けている。
そんなボクとノゾミにいつもいっぱいの愛を
ふりそそいでくれるのは、ヒロ。
ノゾミがいて、ちょっと恥ずかしかったけれど、
ヒロの脇に顔を埋めてボクはすすり泣いた。
声を出さずに、小さく体を震わせて泣いた。
ママが死んだときの夜のように。
ヒロは、何も言わず、ボクをそっと抱きしめた。
あの時と、同じ。
そのまま、愛に包まれて、ボクは眠った。
小説「NAOTO」−7−jへ続く
<これは、100%フィクションです>
大学の試験が終わって翌日、
コワイ顔つきでアルが寄ってきた。
「オマエ、リサのことどうするつもりだ?」
「わかっているよ」
「わかっていない!」
「そういうこと、アルに干渉されたくないっ!」
「そういうわけにいくか!」
「プレイボーイだけど、リサとは、ちゃんと付き合っていると
思っていたのに。」
「ちゃんと付き合っている」
「うそだっ!!
オマエ、リサが今どこにいるか知っているか?」
「・・・・」
「フランスの病院だ」
「えっ?」
「フランスのママの墓に行って、
そして自殺未遂をした」
「まさか・・・・」
「そんなことも知らなかったのか?」
「最近、忙しくて」
「このやろ〜!!!」
アルは、ボクの胸ぐらをつかみ、
ボクを思いっきり突き飛ばした。
後にも先にも、アルがこんな乱暴なことをしたのは
初めてだ。
本気で怒っていた。
いつもクールだったじゃない。
ボクが他の女の子とデートしていても
ヤキモチなんて妬いたことないのに。
お互いに「特別な存在」だって、
わかっていたつもりだったのに。
どうして、ノゾミとのことを確かめないで
フランスへ行ったんだ?
ボクは、ショックだった。
後悔ばかりがボクの中で溢れている。
どうして、すぐにリサに会って、
誤解を解かなかったのだろう?
リサなら分かってくれていると信じていたのに。
毎日会わなくても、
お互いに分かり合えると思っていた。
リサの心を繋ぎとめておける自信を失った。
自分がひどく無能に思えた。
今、この現実から逃避したくなった。
パワーダウンだ。
女の子ひとりの心すら、
繋ぎ止めておけないなんて・・・
なんて情けないヤツ!
フランスに追いかけていって、誤解を解いて、
もう一度リサの心を取り戻して、
そして、リサと一緒に愛をかさねてゆく・・・
そんな原動力は、ボクには、もうない。
キモチがおもいっきり沈んだ。
ボクはダメな男だ。
いつもの孤独な、心の中が不安で溢れそうな
弱い、弱いボクがいた。
ボクは、一人、ポルシェに乗って、
ロサンゼルスの高速道路を疾走した。
運よく交通違反で逮捕されなかったし、
事故も起こさなかった。
車の中で、大好きなロック音楽をかけて、
夕暮れの高速道路を泣きながら
いつまでもいつまでも、走り続けた。
エイトビートのポップなサウンドが
余計にボクを悲しくさせた。
こんなときには、どんなサウンドでもダメだ。
急にヒロの胸に飛び込みたくなった。
乱暴にガレージにポルシェを入れると、
ボクは、服も着替えずにそのまま
ヒロが寝ている傍らに潜り込んだ。
すやすや眠っているヒロの胸の音を確認もせずに、
いきなりヒロの腕の中に飛び込んだ。
その夜は、ノゾミは来ていなかった。
よかった。
いつもの指定席はフリーだ。
この荒っぽい侵入者のせいで、ヒロは目を覚ました。
「ナオ?」
「どうしたの? どこか具合悪い?」
いつものやさしいヒロの問いかけだ。
そして、ボクのオデコに手を当てるんだ。
だって、ヒロは医学部の学生だからね。
「熱はないみたいだね」
次に脈に触れる。
「少し早いけれど大丈夫」
ボクの状態を確認できると、
そっと抱きしめてくれる。 いつものように。
何があったの?とか、そんなことはきかない。
ヒロは、ボクにとって、本当にママだ。
ママ以上かもしれない。
ママ・・・・ママ・・・・
こんな時に甘えが出るなんて。
弱い自分がほとほとイヤになる。
暫く、とろけるようなやわらかい雰囲気の中に
居心地よくまどろんでいた。
ゼェゼェ・・・・ゼェゼェ。
ヒロの呼吸が変だ。
いけないっ!!ボクの服のせいかもしれない。
外のダストをヒロのベッドに
持ち込んでしまった。
「ヒロっ!!」
ボクは、我に返って、飛び起きた。
ヒロは、眠っている。
でも、少し苦しそうだ。 息遣いが荒い。
呼吸が乱れている。
ボクは、慌てて2階へ駆け上がり、
ノックもせずにノゾミの部屋に入った。
ノゾミは、すやすや眠っていた。
最近は、熟睡できるようになったらしい。
とにかく、ノゾミを揺すって起こした。
「ノゾミ、ノゾミ、起きて!! ヒロが大変だ」
ヒロが・・・・という部分で、
ノゾミは、パッと目を開けて起き上がった。
そのまま何も言わずに、ボクを押しのけて
風のようにヒロの部屋へと駆けた。
あとは、いつもの通りだ。
冷静沈着なDr.ノゾミが現れて、
テキパキと処置をする。
「大丈夫、そんなにひどくないから」
ボクをチラッと見て、そうつぶやきながら、
ヒロを斜めに抱いて背中を規則的にさすった。
間もなく、ヒロの呼吸が落ち着いた。
ヒロは、そっと目を開けて
「ありがとう」と、言った。
脈拍など、必要事項をカルテに記入し終えると、
ヒロの胸の音をもう一度確かめて、
ノゾミはボクの方を向き、
「そのよごれた服を着替えてきて」と、
ボクをちょっと睨んだ。
「はい」 素直に返事する。
自分の部屋に戻って、シャワーも浴びて、
新しいパジャマに着替えた。
何もかもきれいにして、
そして、ヒロのところへ戻った。
ノゾミが、ベッドの傍らに座って、
横向きに寝かせたヒロのことを見守っていた。
ヒロのベッドには、新しいシーツが敷かれていた。
ヒロは、目を閉じていた。 もう眠ってしまったのか?
ノゾミは、ボクを一瞥すると、
「ここにいるなら、髪の毛をちゃんと乾かしてきて」
と、たしなめた。
「はい」 さっきから、これしか言えないボク。
完全に落ち込んでいる。
ちょっと泣きそうなかんじで、ボクはドライヤーを使う。
ママに叱られた
いたずらっ子の心境って、こんな感じだろうか?
今日はなんて日なんだ。 最悪だ。
卒論は、いい出来栄えだったのに。
トボトボと、懲りずにヒロの部屋へ戻る。
ヒロは、眠っていなかった。
こっちを向いて、まるで、
ボクが来るのを待っていたかのようだった。
「おいで」と、ボクに向かって、手をこまねいた。
でも、隣にはノゾミが寝ている。
ボクは、ちょっと躊躇した。
「いいの?」 それでも、聞いてみる。
「もちろん。 早くおいで」 と、ヒロ。
ちらりと、ノゾミを見ながら、
今夜はノゾミとは、反対側に潜り込む。
ヒロは、ボクの方に向いて、
ボクの髪の毛をそっとなでた。
「今夜は、一緒に寝てくれる?」
「でも、ヒロ、体の具合が・・・・それに、
ゾミが見ていてくれるなら、ボクは・・・・」
「ノゾミは、ナオのことは了解済みさ。
ボクが、また苦しくなると困るから今夜は
ノゾミも一緒にいてくれるって。
いつものように3人で寝ようよ。」
「いいでしょ?」
とっくに、ボクの気持ちを分かっている。
いいでしょ?って、
頼んでいたのは、ボクの方なのに。
「ごめんなさい。 ボクが服を着替えずに
ベッドに入ったから。」
「気にしないでいいよ、そんな時もあるさ。」
あぁ、ヒロ・・・・
ボクは、急に泣き出しそうになってしまった。
ヒロの優しさが心にジワッと沁みてきて、
さっきのリサとのことを思い出して、
そして、弱い自分を情けなく思って。
切なさも、くやしさも、
何もかも分け合いながら夜を越えて、
ずっと3人で一緒に生きていこう。
幸せになれるように。
ボクは、はっきりわかった。
ヒロがいないと、ダメだ。
ボクにはヒロが必要なんだ。
ボクが弱い限り、甘えがなくならない限り、
ボクには、ヒロが必要。
そのためなら、リサとは、さよならしてもいい。
リサを追って、フランスなんて行かない。
ここ、ロサンゼルスにいる。 ヒロといる。
心が病気なのは、ノゾミだけでなく、
ボクもなんだ。
ノゾミと同じように心に暗闇を抱えながら
孤独と戦って生きている。
ヒロの腕の中で赤ちゃんのように
心地よくまどろむことが好き。
ヒロの寝息を聞きながら、
眠りにつくことが好き。
ヒロのぬくもりが、
寂しさで凍りついたボクの心を暖める。
ヒロに、優しく声をかけてもらって、
甘えることが好き。
ヒロが好き。 やっぱりヒロが好き。
いつも、いつも、側にいたい。
ここに、心だけが
大人に成長しきれていない弱いボクがいた。
いくつもの悲しみや寂しさを抱えて、
暗闇を駆け抜けている。
そんなボクとノゾミにいつもいっぱいの愛を
ふりそそいでくれるのは、ヒロ。
ノゾミがいて、ちょっと恥ずかしかったけれど、
ヒロの脇に顔を埋めてボクはすすり泣いた。
声を出さずに、小さく体を震わせて泣いた。
ママが死んだときの夜のように。
ヒロは、何も言わず、ボクをそっと抱きしめた。
あの時と、同じ。
そのまま、愛に包まれて、ボクは眠った。
小説「NAOTO」−7−jへ続く
<これは、100%フィクションです>
