2008/4/8  19:46

NAOTO-2-(1)  小説「NAOTO」−2−

NAOTO−2−(1)

あの夜から、すすり泣きが聞こえると、
ヒロが廊下へ迎えに行ってノゾミを連れてくる。
そして、ノゾミ、ボクとヒロの3人で並んで眠る。
ボクは、もうドキドキしなくなっていた。
それどころか、いよいよノゾミが本当に妹のように
思えてきてしまった。

ノゾミは、両親を亡くした事故の記憶に苦しめられ、
眠っている間に何度も悪夢にうなされて、
突然泣き出したり、叫んだりした。

自分でもわけがわからなくて、
コントロール不能になるらしく、
そんなときには、いつも、ヒロがノゾミを抱きしめて、
優しく声をかけた。

「ノゾミ、大丈夫だよ。 心配しないで。」
ヒロの腕の中で、しばらくもがいて、泣き続けるノゾミも、
次第に、ヒロの優しさが心に届いて、
ヒロのぬくもりに温められて、
ヒロの胸に顔をうずめて、泣きつかれて眠った。
 
ボクのように。


何も語らないノゾミ。 
相変わらず幽霊のようにふらふら生きている。
 
それでも、ずいぶん健康を取り戻し、
ヒロと大学へ通えるようになった。
 
ヒロが言うには、
ずっとヒロのそばを離れず、
友達が声をかけても答えず、無表情。
孤独の世界に浸っているみたい。 
ひたすら講義に集中して、
学科も実技もその実力は群を抜く。

そういえば、ノゾミのお父さんも医者だった。 
ヒロが時々、お世話になっていたんだ。
日本からボクのパパと同じように研修目的で留学していた
喘息の専門医だった。 
とても有名で腕のいい医者だったというウワサを
何回も聞いたことがあった。 
ノゾミは、完全にそのお父さんのDNAを引き継いでいるんだ。
一人娘がいたなんて、聞いたことがなかった。
 
この優秀な一人娘は、講義を休みがちなヒロに、
家庭教師以上の働きをしてくれていた。 
欠席した講義のノートは、
ヒロにとって教科書以上だったし、
キャンパスライフも、一緒にいることで、
お互いに助け合っているようだった。

周囲の人はきっと2人を恋人同士、あるいは、
とても仲良しの兄妹と思っただろう。
ふたりが愛し合うのは、もう、時間の問題だった。
ボクの入り込む余地はない。

ボクはなぜか、そのことを淋しいと思わなかった。
仲間はずれにされたなんていう気持ちには、全くならず、
むしろ、歓迎していた。 

その頃には、ボクには、ボクの交友関係が
出来上がっていたし、違うキャンパスで、
違う青春を謳歌していたから。
高校卒業した夏休みにやったバイトが、
なぜか大成功で、ボクは、モデルの仕事を副業にしていた。 
昼間は大学生、放課後と週末は、
モデルの仕事とデートの約束でいっぱい。 
そんな生活を送っていた。

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高校から一緒だった親友の一人に、
アルというイギリス系の奴がいて、
モデルの仕事は彼に紹介してもらった。 
彼も売れっ子のモデルだった。

アルには、たくさんのガールフレンドたちも
紹介してもらった。 
ダブルデートも、しょっちゅうしていた。
アルは、イケメンでかっこよく、どこでも、
モテモテだった。
ボクも、モデルとして大成功するくらいだから、
相当ハンサムだったけれど、
総合点では、アルには到底かなわなかった。

家柄もよく、金持ちの家で愛情一杯に育ったアルには、
淋しさとか悲しさの欠片も見当たらない。 
底抜けに明るい。
しかも、育ちのよさが上手に加味されて、
スマートでクールな奴だったのだ。

ボクは彼から、いろいろなことを吸収した。 
学んだ。 真似した。
ボクとアルは、生まれる前から一緒だったかのように、
気が合った。
ボクらは、みんなが羨ましがるほど、仲良しだった。 
信頼しあっていた。

モデルの仕事では、ボクとアルが組んだら
向うところ敵なし状態だった。
勉強も一生懸命する奴だった。 
ボクも負けずについていった。
本当に切磋琢磨できて、素晴らしい友達に巡り合えたと、
今でも思う。

アルは、ボクの一番の親友だ。
 
本当の親友をつくるのに、国籍や、言葉は関係ない。 
大切なのは、心の同期。 
ボクとアルの魂は、完全にフィットしていた。
ソウル・メイトと呼べるのかもしれない。

ボクは、いつでも思う。 
大勢の友達よりも、
たった一人でいいから、心から
信頼しあえる親友に巡り会えたなら、
自分の人生は素晴らしいものになれると。
アルは、そんな「親友」だった。 
その点で、ボクは、幸せだ。

楽しいキャンパスライフが送れるのも、
家には、ハンナさんがいてくれるし
ヒロには、ノゾミがいつも一緒にいてくれるから、
ボクは、心配することが少なくなった。 
心の中のさざ波も、だんだん無くなってきた気がした。

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そんなある夜、モデルの仕事も無く、
かといって、夜遊びもしないで、
早めに帰宅したボクは、ゆっくりお風呂に入って、
あとはゆっくり夜を過ごそうと、
鼻歌を歌いながらそれとなく寝室をのぞいた。

ノゾミは、自分の部屋で勉強かな? 
ヒロだけがベッドの中にいた。
枕に顔を埋めて小さく震えていた。

「ヒロ!!」

お風呂から出たばかりの暖かい肌の上を
何か冷たいものが、さっとなでていったような感覚があった。
ボクは、声が出なくて、それでも
足をからませながら、急いでヒロのところへ駆け寄った。

発作だった。

それも、かなり大きい発作。

ヒロの顔が真っ青になっていた。 
呼吸困難だ。 早く吸入器を。
ベッドサイドの引き出しをあけて、
いつもの吸入器を取り出す。
ヒロの口元にもっていきスイッチをいれた。
「シュー」っと、いきおいよく吸入器が動き出した。
でも、ヒロは、動かない。

「ヒロ〜っ!!!!!」、やっと声が出た。 
大きい声が出た。
「く、薬をのませなくちゃ」
次にやることをボクは、考え、いつもの薬を取り出した。
「ヒロ、薬だよ。 さあ飲んで」
口に運んだ。 僅かに唇があいたので、
すき間に薬を押し込んだ。
でも、もう飲み込めない。 
苦しくて、飲み込めないんだ。
急いでパパの携帯に連絡をいれた。
緊急の時のすぐに呼び出せる連絡方法を
僕らは決めていた。

「第一級の緊急事態だ」

「ヒロ、ヒロ、もう少しがんばって!
パパがすぐにくるから」
パパは、救急車を呼ぶよりも早い。
病院は近くにあったし、この緊急コールを、
パパは最優先扱いにしてくれるはずだ。
万が一、パパがすぐに来られなくても、
必ず他の誰かがすぐに
駆けつけてくれることになっていた。

だけど、今夜は、スーパーマンでも必要なくらい
緊急みたいだ。
もう、ヒロの様子が悪化していくのが、
ボクにもわかるくらいだから。
ボクは、オロオロして、その場に座り込んだ。

「誰かヒロを助けて!!!!」

「助けてぇ〜〜〜」

その時、ボクの前をさっと風が通り抜けた。 
ノゾミだった。 
音もなく風が抜けるように部屋に入ってきて、
ヒロに近づいた。

「彼のカルテはどこ?」「いつもの薬は?」
ノゾミが、しゃべった!初めてノゾミの話し声を聞いた。
「カルテはどこなの?」
ボクは、激しく肩を揺すられて、我に返った。

「引き出しの2段目」
「これね。」カルテにざっと目を通すと、
「えっと、あぁ、この薬だわ。」
ノゾミは、注射器のセットを出して、薬を入れ、
ヒロの腕をまくってゴムを腕に巻きつけた。
「ヒロ、注射するから、動かないで」

ボクは、びっくりして、
慌ててノゾミのところに行って、止めた。
「何するんだ!勝手なことしちゃだめだよ。」
「どいて、緊急事態よ。 間に合わないわ。」
ノゾミは、ボクを振り払い、ヒロの腕に消毒をした。
ヒロは、力なくうなずいた。
もうすぐ意識がなくなりそうだ。

ボクは、腰を抜かして、
本当にその場にへたりこんだ。 
立ち上がれない。 
ノゾミを止めないといけないのに・・・・

今までのノゾミとは全く違う人格の別のノゾミが
現れたみたいだった。
目つきも顔つきも全然違う。
話し声も、はっきりしていて落ち着いている。
なんか、ずっと大人っぽくて冷静で、
しっかりしていて、とても頼りになりそうな。
 
ほんの一瞬のできごとなのに、
ボクには、果てしなく長い時間が
流れているような気がした。

そんなボクのことなど、気にもせず、
慣れた手さばきで注射を終えたノゾミは、
ヒロの頭をぐいっと引いて、あごを上に向け、
頭を固定して気道を確保した。 
まるで、お医者さんだ。 
病院にいるみたいな気がしてきた。
ボクは、ブルブル震えながら、
その光景をただ見守っていた。

ノゾミは、どんどん処置を進めていった。 
まるでスーパーマンみたいだ。
気のせいか、ヒロの顔色が
もとに戻ってきたようだった。

パパが慌てて帰宅した時には、
全てが終わっていた。

ノゾミは、医師同士が説明するかのように、
的確に今までの処置をパパへ報告した。 
とても落ち着いていた。 別人のようだった。
「すごいな。 これ以上、今は処置することはない」 
パパは、驚いていた。
「すみません、医師の資格もないのに、勝手に処置をして」
「一体、どこでこれを? そうか、
お父様が、していらっしゃるのを見て・・・」
「いつも、父は近所の重症の喘息患者さんたちを
助けていたんです」
「私は助手をして、見よう見まねで。」
「ありがとう。 本当に助かったよ。 
ノゾミは、立派な医者になるね」

かすかに微笑んだノゾミは、その瞬間から、
またいつものノゾミに戻ったみたいで
力なくその場に倒れてしまった。 気を失っていた。

パパは、
「極限状態で、緊張が急にほどけたから、疲れたのだね」
そう優しく語りかけて、
ノゾミを抱えてノゾミの部屋まで運んだ。
ヒロは、すっかり落ち着いたらしく、もう、眠っていた。

パパは、「大丈夫だよ」と、言っていたけれど、
心配で、心配で、ボクは夜通しヒロの傍らについていた。 
そして、ウトウトしながら、
ついにまたいつものように隣に潜り込んで
一緒に眠ってしまった。

・・・to be continue



2008/4/8  23:51

投稿者:RIT

ナオト好きだよ。
ベースが、アニメだったんでしょ?
そっちも、見たかったナ。

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